綿毛 昴 2008年6月号   渡辺 和尾・選

縦

肩痛い足が痛いと賑やかに  香田 裕子
風吹いて水面に鱗 大蛇現わる  尾崎志津子
カーテンを二枚縫ったら腰痛に  水野亜希子
鞄には年金証書と保険証  児玉 浪枝
雨上がる緑色した匂いさせ  春日井五月
沈思する菫の花の濃むらさき  堀  恭子
ひとつだに弾けぬ楽器を見て歩く  内田 順子
あちこちに毛が生えてきたお婆さん  東川 和子
路地を曲がる 春の花壇が目に入り  吉田三千子
この足がなんども庭へ行きたがる  川嶋 翡翠
新年度きょうから前期高齢者  園部志津代
交互に鳴いて食用蛙美声なり  後藤 峯子
初鰹火炙りにされ食卓に  柳田みずき
席一つ空いたらさっさと座る人  渡辺 妙子
新しい記憶一から積み上げる  上地 弘子
鯛一尾出刃包丁でやっつける  深谷  歩
買い控え静かになった冷蔵庫  奈尾はるか
会釈してくれたマスクは誰だろう  いまいまい
我が庭の一番良いとき客はなし  恒川和左子
近づけば藤の匂いに包まれる  木野すみゑ
心に棘残り花びら散っていく  西川ほしみ
  
麦踏みをした場所いまは牧草地  渡辺 和尾


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