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投句のページ 優秀作紹介


       

2004年6月の優秀作:渡辺和尾 選評

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【はじめに】
 雨の月の片隅からの《ピッポ de センリュウ》です。この欄が生まれ、もうどれほどになるのでしょうか。ネット川柳の宿命は、これ自体では【座】ができにくいということでした。この穴を作者のお喋りをいただくことで進めてまいりました。
 この辺りで、この欄の読者にも作品参加者の側に回っていただいて、いっそう楽しいスペースを作っていきませんか。こえまでには、たくさんの秀句もありました。それらをもう一度楽しんでみることも意味があるかもしれませんね。

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《特選》 【呈・賞品とポストカード】
特選 自転車で君の町まで突っ走る
橋三つ越えれば雨の君の町
町からは湿った風だ トコロテン
ホームページからひょっこりと犬の顔
紫陽花の雨が心に降り続く
児玉 浪枝
  【作者】 このバス停から都心へ抜けるバスの回数は、春から頗る減ってしまった。運転できない私、自転車が頼り。橋を越える坂道が辛いよ。越えられないよ。下りて引くしかないか……。乾いた喉元をツルンと通るトコロテンは最高の美味。犬と紫陽花なんて、どう考えても結びつかないけれど、言えることは、とにかくどちらも大好き。シトシト雨にうんざりの気分。でも犬と紫陽花が、私の心の穴を埋めてくれれば寂しさはなし、怖いものなし。
  【選者】 なんども投稿、その熱意をいただいておきます。日常を軽く掴んで作品化しているのですが、たくさん書けば、当然佳品も生まれます。〈紫陽花の雨〉は、単なる描写から一歩踏み込んだところへ行ける迷路の入口なのでしょうね。
 
《佳作》 【ポストカード】
呈賞 左胸 元気印の名札付け
勘違い 男と女の薔薇の色
いとうていこ
  【作者】 雨は嫌いじゃない。けれど、楽しいことは考えにくい状況ですよね。こんなときは、お互いの肩にトントンって合図したりして、雨の話をたくさんしてあげましょう。
  【選者】 ぼくは雨の季節の誕生日です。でも雨は身体がイヤイヤと言います。勘違いなんて、人生そのもの。勘違いのままわかれゆく、って作品になりすぎますよね。
 
《入選》
入選 年寄りが集えば医者の品評会
爺婆は元気 医院の待合所
野沢  司
  【作者】 老人は金あり、時間あり、勢力〔精力?〕あり。元気なシーンによく出会います。〈若人よ! 負けるな〉と言いたいねえ。
  【選者】 僕もあなたも、老人で……という時代です。でも、元気よく、迷惑は減らしてまいりましょうぞ。
 
佳作 真夜中になにかないかという夫
底厚のプランターには苗五本
内田 順子
  【作者】 アレルギー予防の薬は眠気を誘うのでしょうか、梅雨の湿り気に萎えてしまうのでしょうか、反応が遅いなと自覚しています。定植を先延ばしするあいだに、ゴーヤーは、蔓を伸ばし始めました。
  【選者】 野菜や花は、プランターでは可哀想かもしれません。住宅事情はありますけれどね。人もまた、自然の中で手足を伸ばせば気持ちよいのでしょうね。
 
佳作 梅雨半ば 洗濯日和アウトドア
紫陽花が色褪せてゆき夕涼み
香田 裕子
  【作者】 夏の色が濃くなってきました。日没の時刻も遅く、体内時計も狂いそうですね。
  【選者】 朝の明るさで目覚め、夜の暗さに眠りにつく。文化はこんな動物的な単純な暮らしを変えてしまいました.身体も変化に順応させようと無理強いさせています。
 
佳作 お互いの立場知りつつ捨て台詞
激写にもドラマありますミスだらけ
ち び 丸
  【作者】 いろいろと立場があり、それでも言いたいことを言ってしまいます。複雑に、連続に、モデルさんを追うけれど、できてみると、切れた写真ばかりで残念でした。
  【選者】 意見の対立は困りますね。〈激写〉がなにを指しているのかがやや不鮮明で残念でしたね。
 
佳作 子は育ち妻と二人の潮干狩
雨の中 コンビニで買う黒ネクタイ
杉本 金男
  【作者】 入梅したというのに晴れの日が続きました。このところ公私共に穏やかで静かな毎日が続きます。職場の近くの公園に梔子の花が見事でした。花を見ながらの朝夕の通勤は楽しいです。
  【選者】 コンビニと黒ネクタイには、あまり必然性は感じられませんでした。〈雨の中〉と書いた効果はあったのかな。〈潮干狩〉の静かな時間が長く続きますように。
 
佳作 十月で国民年金納付終了
二〇〇四年 手術 誕生 わたし還暦
水野亜希子
  【作者】 平凡な一年なんてないけれど、きょねん・ことしと、いろいろなことが押し寄せてきます。きっと節目の年とでもいうのでしょう。一つずつ解決して……。できないことは、時間がなんとかしてくれることでしょう。
  【選者】 年金完納、問題は多い年金制度ですが、ほどほど健康であったことを慰めとしましょうね。六十年も生きてくると、順調なら孫らとも共存の年代です。それらできごとをすべて可として、これからも歩んでいきましょう。
 
佳作 性懲りもなく宝くじ少し買う
負け犬も必死で生きているのです
Y G 美保
  【作者】 決まったことはきちんとやらないと気が済まない性格でしたのに、最近は〈まあいいや〉なんて、疲れないようになりました。もう少し生きるためです。神さま、お許しくださいね。
  【選者】 負け犬なんて、自分で言うことはありません。あなたのように、みんな必死で生きているのですよ。宝くじが当たった話、聞きたいよね。
 
佳作 梅酒より簡単だから梅ジュース
花梨酒が半分残る冷蔵庫
春日井五月
  【作者】 冷蔵庫のカリン酒は長野へ行ったとき買ったもの。ことしは梅ジュースをつくって飲んでいる。アルコールに弱いからちょうど良い感じで。
  【選者】 梅酒・花梨酒が並ぶと、二句共が平凡に見えてくるのです。ということは、どういうことになるのかは、一度お考えになってみてくださいね。
 
佳作 ときめきの美白にならん 梅雨最中
電話鳴る 選挙ですか そうですか
柳田みずき
  【作者】 梅雨の最中に台風が。菊や観葉植物を入れるのに大童でした。一夜明け、緑地公園の木が倒れ、竹も倒れ、被害の出た地方もあったようです。ロケットの飛ぶ時代にも台風は避けることができないようです。選挙になると、見知らぬ人から〈お世話になります〉なんて……、こちらも〈はいわかりました〉なんてね。
  【選者】 選挙は騒ぎすぎだと思います。清き一票・あなたの意志があしたをつくる、なんてゴタクはもう聞き飽きたね。当選した人のこれからを監視することですよね。
 
佳作 パソコンは横文字音痴切り捨てる 忠 太 郎
  【作者】 パソコンで、年老いた自分が新しいことをしたい思うと、まず横文字の意味に躓き、『パソコン用語辞典』を開き、なかなか先へ進めなくて、そのうちに始めに覚えた用語を忘れる始末。
  【選者】 ぼくは『パソコン用語辞典』などを持っていません。用語も知りません。覚えるというより、慣れろ、と言い聞かせて、とにかく毀すくらいに無謀な操作をしています〈呵呵〉。
 
佳作 執拗な反乱に耐え歯科の椅子
口中に台風六号牙をむく
笹 さやか
  【作者】 梅雨時歯医者通い、そして台風と、憂さ続きです。梅雨が明けたら、こんどは暑さに悩まされますね。
  【選者】 口中の台風はいかがですか。身体はどこが悪くても不愉快ですよね。書き方としては絶妙です。
 
佳作 神さまもきっとオマケが好きなはず
スタンプのカード 溜まって塵になる
ほりべよしゆき
  【作者】 〈一日に二時間は勉強しよう〉と言われて、二時間でパッと止めるか、オマケに、もう十五分余分にやるかの違いは大きい。とは言え、サービス残業のように、オマケが大きすぎるのは、かえってマイナスだ。ところで、オマケと言えば、スタンプカードをくれるのは、ちっとも嬉しくない。店としては、なんかいも来てほしいのだろうが、そんなことをするくらいなら、その場で五円でも引いてくれたほうがマシである。
  【選者】 ぼくは、マケてもらわないと、基本的には買う気を起こしません。カードに会費とか言って徴収するところが増えました。その店には足が遠退き、次のカード期限切れと共にさよなら、となります。
 
佳作 七月の花火の空を待っている
海遙か多国籍軍なる旗が揺れ
吉田三千子
  【作者】 室内気温二十八度の朝。窓からひんやりとした風が入ってくるのが救いです。早い夜明けと遅い日没に、体内時計を合わせようとしています。昼寝の時間って、効果がありそうなこのごろですが、仕事場ではそうもいきません。外へ出る雑用を作って、気分を変えるのも一案です。
  【選者】 花火の作品は軽すぎます。思い出の人との出会いでもあれば面白いけれどね。多国籍軍は、ただいまのオサシミのような作品。その軍の中には、異色のメンバーがいるとか、いないとか、いないよなあ……。
 
佳作 雨だれのフォルテが続く六月よ
牡丹餅を二つ所望の愉快犯
園部志津代
  【作者】 台風が湿気を運んできたのでしょう、随分荒っぽい雨の音です。
  【選者】 雨だれは、奇麗ごとの感じ。牡丹餅は嘘っぽいお話。日常を非日常に見せるような作品があっても楽しんだけれど。
 
佳作 ひたすらに草を引き抜き村人に
草の中 土の下にも小宇宙
泉  繭子
  【作者】 毎月皆さまの作品を拝見し楽しんでいます。句作の勉強にもなります。虫が大嫌いで草取りなんてなんの興味もなかったのですが、最近は暇さえあれば庭に出ている私です。草を抜きながら、いろんなことを考えます。大嫌いなはずの虫も、だんだん愛しくなってきました。鳥の声が一日中聞こえます。
  【選者】 草の中・土の中にも小宇宙とは、愛しい発見でしょうね。森の中から顔を出してただきました。《ぼくらも森へ連れてって》……街と森と、海と空と……、これからは交流していきたいものですね。
 
佳作 行動も思惟も農耕民らしい
多神教なれば譲って話し合う
堀  恭子
  【作者】 キリスト教もイスラム教も、神は人の殺戮を否とは教えていないらしい。仏教も、よろずの神も、戦や穢れから決して無縁ではないのだろうけれど、人を赦し、人を救うことにかけては、優れた仏や神神だと思っている。
  【選者】 すごうく真面目な作品が、こんげつのトリです。日本人って、ぼくって……と、いろいろ思い巡らせます。宗教・信心もなく、農耕もしない先祖農耕民族系のグータラなぼくです。ぼつぼつ、こんな日本人も批判の眼に曝されることでしょうね。
 

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【終わりに】
 雨の我が生月から盛夏に入っていきます。
 前書きで少し触れましたが、この《ピッポ de センリュウ》にも、かなりの歴史が積まれました。振り返り、作品などを残しておくという作業も後日のために大切なことです。
 ぼくらは、これまで日常、毎月活動には心血を注いできましたが、系統的に残し、整理しておくということには、あまり関心を寄せませんでした。しかし、いまはデジタル時代です。それら【デジタル機器の洪水】の中で、可能性を探ってみましょうよ。なにが見えてくるのか、見えてこないのか、ヒントでも掴めるのか……と。
《やってみないとわからな〜い!》
 別ページの《お喋りコーナー》も、ぜひお立ち寄りいただいて、お喋り仲間になっていただきたいと思います。

 それでは、次月分〔七月末締め切り〕にもたくさんの作品をお待ちしています。

………… 【渡辺 和尾】──2004-06-30 08:00

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2004年5月の優秀作:渡辺和尾 選評

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【はじめに】
 雨の季節になりました。なんとも形容のし難い五月の末です。夢も希望も消え入りそうな蒸し暑い夜の中で作品と向き合っています。さてことしは、梅雨入り宣言をなにをしながら、どんな気持ちで聞くことになるのでしょう。あるいは、梅雨明け宣言を、なにを考えながら待つことになるのでしょうか。さらには、その先の夏をどう過ごすことになるのでしょうか。良くも悪くも、それら時間の経過と共に開かれるあなたの扉の向こうを作品にしてくださいね。
 気持ちだけでもシャンとして、さあ進めてまいりましょうね。

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《特選》 【呈賞】
特選 ワイシャツの背中の皺にご苦労さん
救急車近づいてきてふと止まり
色むまで緑に紛れ育つ柿
内田 順子
  【作者】 柿若葉は独特の黄緑色。葉とまったく同じ色で、柿の実は大きくなっていくので、夏過ぎるまで実に気づかないことがあります。子の成長も、折に触れてハッと気づくことばかりです。〈強制執行もあり得る〉国民年金のドミノ倒し遊びが、日本国を席巻しています。その間、世界に目を向けることを忘れてしまいそう。身近では結婚式あり、葬儀あり、はや六月になりました。
  【選者】 生活も自然も、緑の風景に溶け込んでいます。雨が止んで、ひととき森や林が鮮やかに目に映ります。救急車は、不意に近くで止まります。〈突然という人生を繰り返す・和尾〉の自作がが過ぎります。
 
特選 いまごろは稲の青さと水の嵩
春雨に曳かれ春日井建は逝く
吉田三千子
  【作者】 五月末の寒さは記憶の底にあります。最初の子を産んだとき、事情もあって山里にいました。近くのお茶畑に霜が降りて、新芽がやられてしまうということがありました。もう三十年余も前のことですが、六月を迎えて肌寒い季を思っています。身体を労り合いましょう。
  【選者】 雨と緑の六月は、生まれくるもの、生あるもの、去っていった人の思い出なども蘇る季節です。〈稲の青さと水の嵩〉が亡き人のイメージに重なり、いっそう色濃く〈思い出の中にも雨が降っている・和尾〉の心境にも。
 
《秀逸》 【ポストカード】
呈賞 ご機嫌は斜めのままの寝癖髪
化粧水さらさらさらと夏に入る
堀  恭子
  【作者】 鬱陶しい季節です。気鬱な季節です。いまごろ、花粉症だと訴えても、だれもほんとうにしてくれません。クシャミをしたり、眼を擦り擦りしながら暮らしています。
  【選者】 心がいつも潤っているとよいのでしょうが、現実はそうばかり言ってはおられないことが起こります。軽快なリズムで案外複雑なところを伝えようとしているようです。作者固有の句語を発見していくのも作品を書いていく愉快さですね。〈夏の風 古い建具を通り抜け・和尾〉
 
呈賞 リフォームの槌音 未来拓く音 笹山さやか
  【作者】 網戸から涼しい風が入ってきます。まだ五月というのに涼しいと思える感覚、やはり温暖化のせいでしょうか。リフォーム=再生=優しさ=温かさかしら。
  【選者】 槌音は、やや時代がかっていますが、雨の鬱陶しさを消してくれるような一枚の絵です。建築ラッシュの過去を知っている人が、過ぎゆく時間を思い、あしたに新しい活力を願っているのでしょう。〈複雑な話は梅雨が明けてから・和尾〉
 
《入選》
佳作 お隣はガーデニングの好きな人
ガーベラの赤は明るい未来です
児玉 浪枝
  【作者】 四季おりおり、お隣の庭には、いろんな花が咲き乱れて私を楽しませてくれています。ときどき、切り花をいただいたり、株を分けていただいたりして、もっぱら私は甘えの姿勢です。庭仕事に精がでない私は、〈膝が痛いのよう〉と、言い訳ばっかり。そんな私ですが、隣の犬はなついています。
  【選者】 日常を描くことは基本姿勢として大切だと思います。やがて、それだけでは物足りなくなってきて、ステップは次へと移るのです。どうして〈ガーデニング〉なの、どうして〈ガーベラ〉なのと、自問自答してみませんか。
 
佳作 役職は過去と葬れ元上司
OB会 会社の序列尾を引いて
野沢  司
  【作者】 現・元サラリーマンの世界は、意外に狭いものだと思います。またむかしの権勢(?〕を匂わす愚かな輩もいます。悲しくなります。
  【選者】 職場の序列や社会の序列がいつまでもつきまといます。学校の同窓会は、なぜか懐かしいようです。それらを否定も肯定もするものではありませんが、〈いま〉や〈これから〉を拓いていけるといいですね。
 
佳作 水面下 見えない腕に引っ張られ
花が咲くそのときだけは傍に寄り
香田 裕子
  【作者】 吟行会でお花畑を一回りしました。コーヒーを飲んで、もう一度巡ろうと思っていたのに、花よりコーヒーとなってしまいました。いまはまだ、できたての若い庭だけれど、だんだん、たくましい庭になっていくことでしょう。
  【選者】 海や山の精に引っ張られるとは、繊細な思いも感じられます。庭も人も、年数を経てできあがっていくのでしょう。〈折に触れ〉花にも人にも思いを寄せていましょうよ。
 
佳作 訪朝も選挙目当ての目くらまし
不払いの議員 どんどん不信増え
道家樹与士
  【作者】 強烈なスパイクに目が覚めた吾 透る傘 五月の雨の中にいる 〔樹与士〕。
  【選者】 政治には不信が募りますが、良くも悪くもそれに頼らざるをえませんね。付け焼き刃や弁解・釈明は、政治家の持ち物・特技なのでしょうか。
 
佳作 父さんが早く帰ると嫌われる
早く寝て夜中目が覚め朝眠い
ほりべよしゆき
  【作者】 二句とも、仕事を休むほどではありませんが、体調の悪かったときの句です。なんのために早く帰って、早く寝たのかわかりませんねえ。天候も不順です。みなさんもご自愛くださいね。
  【選者】 当たり前のことを当たり前に書くと、案外愉快に仕上がります。言外に〈知性〉が感じられてのことですが……。
 
佳作 青年になった桜の影がある
青葉から梅雨の前触れ落ちてくる
春日井五月
  【作者】 五月というのに、梅雨のようなお天気続きでした。桜の道にも、雨がよく降りました。
  【選者】 梅雨の前触れとは、ことしのような梅雨時季の前からの〈ぐずつき具合〉を言うのでしょうか。作品の内容が活発に動き始めると楽しいのですが。
 
佳作 友だちも物忘れして笑い合う
友だちと会えば半分老後の話
水野亜希子
  【作者】 ことし還暦で定年となる友も含めて、老後の話で盛り上がりました。笑っているうちに、現実はどんどん迫ってきます。笑いごとではないのです……。
  【選者】 物忘れしたら体が軽くなりませんか。老いることは美しくなることだと思いませんか。常識を打ち破っていきましょう、せめて言葉・思いの上では……。
 
佳作 お台場の自由の女神欠伸して
都庁のあたり 高層ビルに隙間風
柳田みずき
  【作者】 お台場にある自由の女神は不自然でした。日本の風景に似合いません。東京湾に浮かぶ、〈うみほたる〉も赤字とか。莫大な費用をかけても利用する人が少ないそう。都庁も立派、近辺の高層ビルは空室があるらしい。大きければとか、目立てばよいとか、変ですね。
  【選者】 〈わかっちゃいるけどやめられない〉と、随分前に反省を求めるような歌もありましたが、世論は笑い飛ばし、反省などしませんでした。巨大なプロジェクト・建造物もしかり。文化的な遺産を蓄積するようにしなければ……。
 
佳作 無愛想な家の子 他所でお世辞言う
薄着の娘 誰も注意をしないのね
Y・G・美保
  【作者】 私は、わたしだと思っても、時代のために知らず知らずのうちに、若者に迎合している自分に嫌悪感を感じることがあるのです。主張したいことは、はっきり言うべきだと思っていますけれど、難しいことですね。
  【選者】 若者に迎合することはないとは思います。でも間違いもなく、未来を築くのは彼らです。斬新で行動的・創造的な面などは評価していきたいものです。
 
佳作 憂鬱に色づけしていく順番に
心が壊れて戻っていく先は玩具箱
いとうていこ
  【作者】 ときどき、〈なにがどうなってるの?〉と、自分がどこに立っているのか分からないことがあります。メニエール病にでもかかっているみたいに。
  【選者】 現代社会を真剣に生きていこうとすればするほどに、作品やコメントにある思い強くなることでしょうね。そんなときこそ、パッと作品を書いて、《ピッポ de センリュウ》に応募しておいてくだいね。
 
佳作 常備薬作る いちにち明けておく
里芋が髭根を生やし主張する
恒川和左子
  【作者】 スーパーには、早や辣韮・青梅が並びます。きょねん作り損ねた梅肉エキスです。ことしは予定日を取ろうと思います。野菜籠では、里芋が白い髭で私に発破をかけています。
  【選者】 里芋の髭根とは見つけどころ。髭根を見た作者の思考はなにを見ているのでしょうか。
 
佳作 二十年 夫婦飽きずに冷奴
ふるさとの井戸水汲んで冷奴
杉本 金男
  【作者】 雨が多い毎日です。公園や街路樹の緑が爽やかです。毎日一句は作るよう心がけていますが、なかなか気持ちの籠もった句はできません。コツコツと続けていこうと思います。
  【選者】 冷奴が好物のようで、自然志向が窺われます。作品も冷奴のように素朴さを大事にするとよいかも知れませんね。
 
佳作 行く先を任されているきょうのドライブ
皿の上で乱れていく目玉焼き
今井 妙子
  【作者】 キーを打っていたら、このページが出てきたので挑戦しました。
  【選者】 今度は〈お気に入り〉に保存しておきましょうね。来月も訪問してくださいね。〈乱れていく目玉焼き〉は、佳いことがありそうな朝を予感させてくれます。
 
佳作 半分の半分だけの欲でいい
万が一のためにナイフを研いでおく
柴田 忠司
  【作者】 私のPCより、《ピッポ de センリュウ》ページがなぜか消えてしまい、ご無沙汰でした。最近ふとしたことで見つかりました。また出句します。〈半分の……〉は、なにかにつけて欲は果てしないですが、できる限り物欲は、いままでの半分の半分に抑えて生きていきたいです。
  【選者】 やはり〈お気に入り〉に保存しておきましょうね。そんな作業がパソコンに親しむきっかけにもなる場合が多いのですよ。作品は素直が一番。
 
佳作 花の名はショパン そしてビバルディ
母たちは五月の旅に 白い百合
園部志津代
  【作者】 名古屋市の花は百合です。そろそろ開花の季節です。
  【選者】 花に託して見る人・それを見ている人・さらに作者の思いを……と作句欲も養いましょうね。
 
佳作 おしゃべりも内容により複雑に
葉桜のストレス社会飛んでいけ
ち び 丸
  【作者】 軽く喋っていても、突然とんでもない方向へ行く場合は危険ですね。葉桜も、風になびく音は、われわれの社会そのものだと感じました。
  【選者】 書きたいことを絞ること・主語や述語を明確にすることなど気をつけると、飛躍的に視野が広がるっような気がします。
 
佳作 負けまいと端っこの苗揺れている 薫   子
  【作者】 新緑のシャワーを浴びています。身体中が美しくなってくる予感……。
  【選者】 みんなが一緒に揺れるから共鳴もするのでしょう。みんなと一緒だから、端っこの苗もすくすくと育っていくのでしょうね。がんばろうね。
 

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【終わりに】
 まず、お願い――。
 応募規定〈住所・本名・コメントなどの記載〉は、正確にお願いします。発表はお書きいただいた【雅号】でいたしますが、記録のためや、参加賞の送付のためなどに必要な事項ですので、よろしくお願いします。
 発表は、選者選考し、加筆・修正・削除する場合がありますのでご了承ください。
 出句は、日時に余裕を持ってお願いします。締切後に到着分した分は、次月扱いとなります。発表は月初頭に発表できるよう努力します。

 梅雨に入ったかどうか、報道は騒がしくなってきました。決定的な判断基準なんてないようなのですから、梅の木の果実と空模様から〈梅雨入りだなあ〉と思えばよいのかも知れませんね。さあ、息苦しい季節を快適に過ごすよう知恵を絞ってまいりましょうね。

 別項の《綿毛の会》の行事にもぜひご参加ください。不明の点は、お気軽に《綿毛の会:会長・堀 恭子》に声をかけてくださいね。
【お喋りコーナー】でも、愉快に語り合い、友情を深めましょうね。

………… 【渡辺 和尾】──2004-05-31 12:00

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2004年4月の優秀作:渡辺和尾 選評

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【はじめに】
 きょうは、みどりの日だと、新聞を見て気がつきました。ゴールデンウイークに突入と騒がしく報じられていたのに、です。つまり、タイム通りに一日を刻まない緊張の少ない暮らしになってからというもの、世事には、どこかで疎くなっていることに気づくのです。
 暑いくらいの四月二十九日です。日中から睡魔に襲われそうになるのを、作品を拝見することの緊張で過ごしております。黒い蝶が庭で遊んでいます。殺風景だった貧しい庭も緑で濃くなってきました。そうです、きょうは、みどりの日でした。いつからか祝日の名前が変わったような覚えですが、記憶が定かではありません。これをハルウララと言うのでしょう。
 五月発表の《ピッポ DE センリュウ》作品です。どうぞお楽しみください。

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《特選》 【呈賞】
特選 初サラリーで買った時計がまだ元気
わたくしは七十余歳元気減る
Y・G・美保
  【作者】 初サラリーを叩いて、当時流行の腕時計を求めました。以後半世紀が過ぎました。毎日巻いてあげると正確に動きます。私も負けてはいられない気持ちです。減ってきた肝っ玉を補填して、いま一度がんばります。
  【選者】 針が動く時計は、五個ほど駄目にしました。いまはもう腕時計は持っていません。時間はケータイで十分間に合います。ぼくの中ではデジタル革命が徐徐に進行中です。同様にカメラも持っていません。思い出も感慨深いですよね。いま七十余歳、上り坂ですよ!
 
《秀逸》 【ポストカード】
呈賞 手にひらり 桜ひとひらまた逢おう
哀しみも幾つかあって桜見る
道家樹与士
  【作者】 同窓の仲間との桜見物は静かでした。あのころと同じ桜か、思い出か……。
  【選者】 出会いと別れは人にも自然にも。四季があって年月があって巡回するのですが、人や川の流れは一方通行のようです。一期一会とかいう言葉も、いまにして深い意味があるように思うようになりました。出会いと友情を大切にしましょうね。
 
呈賞 夕暮れの砂場に落ちていた名札
急に泣きたくなった躑躅坂
吉田三千子
  【作者】 いっせいに押し寄せてくる緑の大群に囲まれていると、理由もなく涙が出そうになるときがあります。雑踏の中での孤独感は、なんともないのに、草木の群れに包囲されたりすると、ほんとうの孤独を見せつけられたような、感傷に陥るのです。
  【選者】 名札は遊び疲れた幼児が見えますが、ぼくには、なぜか人生の哀愁とも思えてきたのです。躑躅坂の鮮やかなイメージの反面、前句のような感じも受けました。動と静・賑やかさと寂しさ、です。
 
呈賞 禁煙席から煙草を吸いにくる
パズルの空白埋めるように ただ歩き
柳田みずき
  【作者】 喫煙席に煙草の煙を置いて禁煙車に戻っていく。これって違反じゃないですか。禁煙席は、すぐ満席に。トホホ、煙草の煙って嫌いですよ。
  【選者】 喫煙は、いかなる場所であろうと罰せられる、という時代が間もなく到来するでしょう。どこかの集会場で、喫煙場所を捜して、階を越えて彷徨う人らを見ていますが、もう喫煙は犯罪だというくらいの認識を社会全体が持つべきなんでしょうね。
 
《入選》
佳作 名前から人の心を探ってる ち び 丸
  【作者】 名前から、いろいろ考えるのも楽しく、また神秘的な感じもします。あまりにも便利すぎて、良いときもあるし、依存症になるのも心配ではありますが……。
  【選者】 名前といっても、本名もあるし、雅号もあるし……。そう言えば、ラジオネームなんて、お洒落な言い回しもあるみたいですね。
 
佳作 まみどりの森で見つけた安住地
ケータイで黄色い声が呼んでいる
児玉 浪枝
  【作者】 家の近くには小さな公園があります。もう少し歩けば、大きな森林公園があります。世の中は暗くても、自然の美しさだけはいま変わりません。若葉の緑に染まって歩きましょう。人間も犬も健康第一よ。
  【選者】 黄色い声は、緑の季節にはあまり似合わないようですね。色から広がるイメージを考えてみるのも愉しいかもしれませんね。
 
佳作 友の家には咲いているランの花
休日にメダカとってるオトナたち
内田 順子
  【作者】 庭がなければ花も育たん、とは思わないけれど、大地に育つ花は、ほんとうに逞しい。水を忘れたベランダの鉢に、その後からジャバジャバかけても、しおしおのままです。
  【選者】 自然は日ごとに消えていきます。人工の堤などは便利ですし、ほどほどの合理性もあります。災害からも守ってくれるようです。そうかと思えば、道路の舗装が進み雑草も生えなくなりました。どぶ川も消えて、家の近辺からは小さな生き物も消えていきました。どうも人間は他の生き物との共存は苦手なようです。ペットは大流行というのにねえ。
 
佳作 虫刺され私ばかりがターゲット
新緑の下で幽かな光浴び
香田 裕子
  【作者】 桜が散ると、地球が緑色に変色します。ほっとするやら、嫌いな虫の出現に首をすくめたくもなります。ことしの夏も虫と戦うことになるでしょう。
  【選者】 これはまた、小虫のいる環境もありました。ということは、あまり嫌わないで小虫を大事にしてあげると、そのうち、いいことあるかもね。新緑から零れくる光は春から初夏の宝のようなものかもしれません。
 
佳作 年かいな 春爛漫もときめかず
顔は皺 心の襞は伸びてきた
野沢  司
  【作者】 小生も初老の範疇に入りましたが、なんら生産的なこともせず、一人前にこのまま死を待つだけで良いのかと思うきょうこのごろなのです。
  【選者】 〈年かいな〉〈顔は皺〉などと愚痴ってはいけませんよ。誰でもが通る道です。たいせつに大切に生きている幸せを精一杯歌いましょうよ。
 
佳作 雑用を放置している 胃に悪い
全力で三月四月を駆け抜ける
ほりべよしゆき
  【作者】 年度末や年度始めは、目が回るような忙しさでした。いまもまだ忙しい中で、仕事をしているふりをして、メールを打っています。それにしても、人間の体は細胞でできているように人生は雑用を片付けることでできているんでしたっけ……。
  【選者】 目前の所用に忙殺されている様子が伝わります。ぼくからすれば、羨ましい多忙さです。若さは雑事も瞬時に片づけてしまう超能力があるのです。本当は、あっという間に人生は過ぎ去るのですが、振り返ると、いつも真摯な我が身が見えたほうが愉快ですよ。
 
佳作 深緑のトンネル抜けて蝶が飛ぶ
害虫と決めつけられて虫が這う
水野亜希子
  【作者】 深緑の美しい季節です。虫も花も一生懸命生きています。小さな庭で草を抜いていると無心になれます。幸せな貴重な時間です。
  【選者】 害虫は蝶の前身かもしれません。蛹からかえると蛾になる小虫かもしれません。葉からす、す、す、と、糸引き降りてきたのは、ぼくの生まれ変わりかもしれません。
 
佳作 自転車の少女駆けゆく夏の朝
桜散る砂場の女の子素足
杉本 金男
  【作者】 すっかり暖かくなってから強烈な風邪を引いてしまいました。病気で仕事を休むのは実に数年ぶり。我ながら体力の衰えを感じます。この〈胃腸風邪〉は相当流行っているようで、みなさまも気をつけてください。
  【選者】 少女が可愛く美しい春から初夏へ、そして夏へ。そんな素敵な季節に作者は風邪だとか。呼吸をするように、心呼吸もして、体調を整えましょうね。仕事も大切、レジャーも大切、爽やかな自然の中で泳ぎましょうね。
 
佳作 綻びたプーさんいまは昼寝中
〈ね、ね、ね、ね、ね〉また大事件 オオカミだ
堀  恭子
  【作者】 〈プーさん〉と言われていた息子も、いまでは子どもたちから〈トトロ〉と呼ばれているようです。〈ね、ね、ね、ね、ね〉が口癖の孫娘は、話を聞いてほしい年ごろなのでしょう。
  【選者】 大家族になる連休なんでしょうね。我が家は、年中老夫婦のみ。ぼくの相手をしてくれるのは、パソコンを打っているとき、バックに流れているラジオでしょうか。〈プーさんもいない我が家の春進む・和尾〉です。
 
佳作 社会の風を記憶するビルの壁
レクイエム 帰り着かない小鳩たち
いとうていこ
  【作者】 社会の風は厳しいけれど、へこたれない。そんな風の中を、一歩、また一歩と進むだけです。
  【選者】 数えてみるたびに鳩が減っているのでしょう。悪い友だちでもできたのでしょうか。車にでも轢かれたのでしょうか。作者は真剣に数えています。
 
佳作 つっかいをされて ことしも咲く桜
花びらの数を競って桜散る
春日井五月
  【作者】 まだ北国では桜の季節でしょうか。散りゆく潔さが尊ばれたり、古木として永遠の命を望まれたりで、桜も大変ですね。
  【選者】 ことしの桜の季節は終わりましが、美しく花を咲かせた樹も老いてきたようですね。労ってあげるから、らいねんもまた綺麗な花を見せてよね。
 

****** ****** ****** ******
【終わりに】
 春の嵐が数日吹き荒れて、ぼくなどはビル風に吹き飛ばされそうなときもありました。少し落ち着いたきょうは、報道によれば、日本全国お日さまマークでした。こんな日も珍しく、ひょっとしたらもう夏の前触れかもしれない暖かさになりました。
 連休で、みなさんも息つく間もないのかもしれませんね。忙しく、楽しく、有意義に過ごされて、それでもこの《ピッポ DE センリュウ》のページを見られたら、その序でに次月用の作品を出句しておいてくださいね。〈後で〉という思いが、作品参加を躊躇してしまうことになりかねません。
 毎月、あなたの作品で、このスペースを埋められるようにね。お仲間もあなたの作品を待っているはずですよ。

 別項の《綿毛の会》の行事にもご参加ください。お気軽に声をかけてくださいね。
【おしゃべりコーナー】でも愉快に語り合いましょうね。

………… 【渡辺 和尾】──2004-04-29 20:00

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2004年3月の優秀作:渡辺和尾 選評

♪   ♪   ♪   ♪

【はじめに】
〈励ます・希望を叶える・気分転換に誘う〉が春の憂鬱研究のヒントになるのだそうです。 桜はまだ咲かないのかなあ、とぼくはノーテンキに青空を見ていました。  きょうはJRで、大府から岡崎まで行きました。所用を済ませて、休憩のために岡崎駅前で珈琲屋を探しました。名古屋や大府では、簡単に目に入る喫茶店が少ないことに気がつきました。
 そういえば、以前、東京でも、探して探して、やっと見つけたことがありました。コーヒーやお茶は、他郷では家で飲むものなんでしょうか。……閑話休題。
 とにかく自然と親しむのには恰好の季節になりつつあるようです。青・緑・黄……、とりどりの色が溢れてきた季節です。クローバーの野原でごろ寝もいいですよね。
 それでは、春四月の風も爽やか〈ぴっぽの広場〉で語り合いましょうね。

*** *** ***

《特選》 【呈賞】
特選 光りだせ小川の水も指先も
この空のずっと向こうは戦闘地
児玉 浪枝
  【作者】 寒さが緩み、けさの空は限りなく静かで蒼いです。休日の朝は、布団を干して窓拭いて……と。手も足も、体中かるうくなる春です。イラクの空の青さが、ふと心をよぎります。
  【選者】 春は、川の水も指先も心も……輝きを増します。風景や心の明るさからは遠地でいがみ合っていることなど想像もできませんね。
 
《秀逸》 【ポストカード】
呈賞 父の歳こえて三年蜆汁 杉本 金男
  【作者】 暖かくなったり寒かったり〈三寒四温〉とはよく言ったものです。慌しい年度末ですが、もうすぐほんとうの春です。桜が咲くころには、もう少し落ち着いていると思うのですが。お互いに春風邪には気をつけましょうね。
  【選者】 蜆汁が、なぜか快い音感で伝わります。時間の経過と思い出の深さが感じられます。ほんのり温かく優しい作品です。
 
呈賞 人が来ぬ小さな桜見ています
いさぎよく散らぬ花びら それもいい
ほりべよしゆき
  【作者】 もう桜の季節ですね。私も花は嫌いではありませんが、人混みが苦手です。カラオケや焼き肉は別の所でやってほしいものです。ところで、イギリスの桜は、いさぎよく散らないのだそうです。桜も国民性を反映するのでしょうか。
  【選者】 人混みの好きな人・嫌いな人の花見は、当然場所もちがってくるのでしょうね。さあ、あなたはどこへ出かけますか。
 
呈賞 高級チョコ一つ食べたらお返しよ ち び 丸
  【作者】 こんげつは、ホワイトデーがやってきますが、二月に有名チョコを食べていたら、お返しも大変です。半端じゃないよね。
  【選者】 そうよね。でも、有名なチョコなんていう意識のないお鈍な男の子も多いことでしょうから困りものよね。
 
《入選》
佳作 ただ幸せな呼吸してますここは え る ん
  【作者】 風邪と花粉のダブル攻撃で、へろへろです。久びさに投稿してみたのに、へろへろです(^^;)
  【選者】 それはいけませんね。お呪いのように〈へろへろ〉と唱えて、早く治りますように、ぼくも願っていますよ。
 
佳作 さくら咲くころはどうして別れなの 内田 順子
  【作者】 別れがあれば、出会いがあり。でも、なかなか若い人たちと喋るチャンスはありません。
  【選者】 さあ、どうしてお別れなのでしょうね。むしろ、新しい出会いのころ、だと発想の転換をしましょうよ。
 
佳作 先に逝くな 掃除洗濯誰がする 野沢  司
  【作者】 最近〈死〉というものを考えるようになりました。あまりに暇なせいだとも思います。やがて来るXデイを茶化したくなってきます。これは異常かと自問しているんですが。
  【選者】 いえ、誰もが考えることでしょう。生あることを幸いと思い、精一杯〈いま〉を謳歌しましょうよ。さあ、まず花見に行きましょうね。
 
佳作 私の上を桜前線 通過中 水野亜希子
  【作者】 暖かくなり良いお天気の朝には、つい気分が浮き浮きとしてしまいます。庭仕事にも身が入ります。お花見はどこに行こうかしら……。
  【選者】 まず、我が家の庭を。地べたに白い花が、もちろん桜も開きました。団地の庭の緑も豊かになり、良い香りも漂ってきました。
 
佳作 屑籠の中で私が眠っている 香田 裕子
  【作者】 花が春の彩りをつけて心も頭も軽くなってきましたが、暖かさにつれ、体が重くなることもあります。気合を入れて桜にまみれたいです。
  【選者】 屑籠は日常の象徴でしょう。また〈眠っている〉は、自嘲なのか控え目な表現なのでしょうね。
 
佳作 気の抜けたコーラ飲むよう休刊日 柳田みずき
  【作者】 新聞の休刊日。なんだか手持ち無沙汰に。気の抜けた一日の始まりでもあります。新聞にしかないものがあるのです。さあ庭の花でも愛でましょうか。
  【選者】 事実をゆっくり確かめることができる新聞ですね。そう言えば、ちかごろ休刊日がとても増えましたね。かつては、正月二日くらいでしたのにねえ。
 
佳作 陽気です だけどときどき鬱になる Y・G・美保
  【作者】 日常茶飯事の句を書いているし、感性もないので、たくさんの人の共感を得る句ができないのを悩んでいるのですが、川柳は止められない私なのです。
  【選者】 日常茶飯事を書くことこそ基本だと思います。従って、川柳を止めることなどまったくありませんよ。ぼくは日常を書くことを誇りにしていますよ。
 
佳作 きのうよりきょうの含羞さくらの芽
翼持つ十二歳の卒業歌
笹 さやか
  【作者】 春は確かなる節目の季節。桜の下で大いにステップアップといきましょう。
  【選者】 〈翼持つ〉とは、爽やかな表現ですね。若者たちは、この情景のような環境で育まれ続けるとよいのですが。
 
佳作 五日後にまたいらっしゃいさくら道 園部志津代
  【作者】 ことしもうぐいすの初鳴きをきくことができました。さくらも咲き始めちょっと悲しいことがあったのですが、いまはもう前に進もうと思います。
  【選者】 楽しみにして、また行きましょうね。きっと見事に開いていることでしょう。
 
佳作 風邪薬もらって帰る さくら咲く 堀  恭子
  【作者】 風邪でぐずぐずしているうちに、桜が咲きはじめました。なんだか取り残されそうな気持ちを追いやって、さあ、春ですよ、春ですよと自分に呼びかけています。
  【選者】 春は案外風邪を引いている人が多いものです。体の調節が微妙なのかもしれませんね。自然はそんな人のことは知らぬげに見事に咲き誇るのですね。風邪薬と桜花の対比が妙。
 
佳作 少しだけ膨らみかけた桜かな 関本 満美
  【作者】 春!春!春!〈桜の季節になると、日本に生まれて良かったと思う〉なんて。どこかの局のアナウンサーが言っていました。同感です。嬉しい嬉しい春です。さあなにしようかしら。
  【選者】 膨らみかけた桜と、膨らんでくる春の思い。さあ、気軽に公園でも散策しませんか。
 
佳作 手助けがなくても春は花が咲く 春日井五月
  【作者】 丹精込められて咲く花、ひとりばえの野の花、春は不思議に花一杯の季節ですね。
  【選者】 芽吹き・花一杯……生命の営みの優しさを感じる春ですね。ぼくらも、自然に手足が動くようで、今朝も花便りを楽しんでいます。誘いの電話が間もなくはいることでしょう。
 
佳作 夢というものの生い立ち知りません いとうていこ
  【作者】 誰も胎内の居心地の良さを忘れたことでしょうね。けれど、なぜか母の懐は恋しいよね。ずっと錯覚していたのかもしれないね。
  【選者】 そうねえ、もうすっかり夢なんて卒業したと思っていましたが、いまの世の中の過ごしにくさは、夢を忘れたせいかもしれませんね、〈チャットという異空間で躍っている・ていこ〉は現代空間の妙を描きましたね。
 
佳作 さくら咲く またあの人に逢えるだろう 道家樹与士
  【作者】
  【選者】 〈あの人〉は、かつての恋人なのか、思い出の人なのかなあ。それはともかく、なぜか桜の花には蘇らせてくれるものがありますよね。
 
佳作 写メールで桜を撮ってゆっくりと 吉田三千子
  【作者】 一足跳びという言葉がぴったりの春の到来。人も鳥も、この世の春を満喫しています。中年のおじさんやおばさんだけでなく、若い人も、マスクしている人が多いですね。私もその一人です。鼻や口の周りの感覚がなくなるくらいにマスクとの長い関係を続けています。さあ、さあ、しみったれていてはいけませんねえ。
  【選者】 花粉症とかいう症状が蔓延する花の季節です。それより、ケータイでこの美しさを残しておいて、独りで、あるいはみんなで後で楽しみましょうね。
 

♪   ♪   ♪   ♪
【終わりに】
 まだ満開にはなっていない知多半島からの語らいでした。強風が吹き荒れている一日でした。
 風がおさまると遠景も朧になり、ピンクが随所に見られるようになるのでしょう。
 こんげつも軽い語らいで明けていきますね。他のコーナー《楽しくセンリュウ・ネットで語ろう》もご贔屓にね。

………… 【渡辺 和尾】──2004-03-31 23:00


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2004年2月の優秀作:渡辺和尾 選評

♪   ♪   ♪   ♪

【はじめに】
 二〇〇四年二月の声を聞きました。庭には小鳥が訪れるようになりました。固い蕾が膨らんできました。寒風に身体は縮こまっているのに、心は蕾のように膨らんでくる感じがします。ああ、春がもう近くに来ているんだなあ、と少しの安らぎを覚えます。
 さあ、大空に向かって声を発してみましょう。森に向かって歩いていきましょう。海からの風を頬に受け、あしたのことを語り合いましょう。
 《ピッポ de センリュウ》の広場にも、たくさんの方が集まり、心の声を掛け合って、春を楽しいものにしていきましょうね。

*** *** ***

《特選》 【呈賞】
特選 母と子に通い合う色 雛あられ 笹 さやか
  【作者】 〈お雛様は二月の風に当てなさい〉という母の言葉に出会いたくて、ことしもお雛様を飾りました。家じゅうが明るくなりました。
  【選者】 雛祭りです。やわらかい光が雛壇に降り注ぎ、母と父に挟まれた笑顔の子の姿が見えるようです。年齢を重ねても、そういう思い出の中で春が始まるのでしょう。
 
特選 如月の雪は誰かを連れて行く すおうみどり
  【作者】 二月に大雪が降った年には、身近な人が神さまのところへ旅立つことが多いので、毎年〈雪が降りませんように〉と祈ってしまいます。
  【選者】 雪の白さが、いっそう哀しい別れ強調しています。誰かと、あえて確定していないのも、この時節の厳しさを表わしています。
 
《秀逸》 【ポストカード】
呈賞  あんパンの芥子粒星になりたいよ 芙   蓉
  【作者】 一年前にホームセンターが家の近くにできました。でも、閉鎖されるそうです。そのすぐ近くに、大型書店が建設中。生きることの難しさを、柄にもなく考えています。
  【選者】 身近なこと・些細なことなど、川柳は躊躇なく作品化してしまいます。あんぱんの芥子粒も星になるという飛躍も許されるのですよ。
 
呈賞  タンポポに触れたてのひら暖かい あ ん み つ
  【作者】 寒いときにタンポポを見つけただけで、なんだか心が暖かくなりますよね。触ったら、てのひらも暖めてくれる気がします。
  【選者】 そうですね、見ているだけでもタンポポから暖気がふりまかれるようですね。タンポポがあなたの心と重なっているようにも思えてきます。
 
呈賞  グランマーも花を咲かせた過去がある Y・G・美保
  【作者】 黄昏に乾杯して燃えています。自分を、褒めて叱って、川柳に明け暮れています。
  【選者】 Y・G・美保さんのフル・パソコンネームは〈ヤング・グランマー美保〉。長すぎるので短縮にさせていただいています。過去なんかより、いまを咲かせてみましょうよ。
 
《入選》
佳作 宝石はビーズアートで満足し ち び 丸
  【作者】 高い宝石には手が出ませんが、ビーズだとすぐ買ってしまいます。
  【選者】 宝石は珍しいから価値があるのでしょうね。ぼくは、子どものころ、ビー玉でも同様のことを思いましたよ。
 
佳作 使用法ばかりたくさん貯めてある
お茶好きの人 コーヒーも入れてくれ
内田 順子
  【作者】 九州などで冬を越すナベヅルは、地球上全部の数を合わせても千羽そこそことか。百羽を切って、絶滅しそうな鳥さえも。人間が戦争好きなのは、増えすぎた人口を減らそうとするためだと言った人がいます。減らされる覚悟はできてないよ!
  【選者】 お茶も珈琲も紅茶も、話題があれば美味しくいただけます。お茶は友情の雰囲気醸し出してくれます。
 
佳作 いもうとの誕生日には花を買う
ああそんな思い出もある木の根っこ
児玉 浪枝
  【作者】 〈ねえちゃん、私の誕生日覚えてる?〉と、妹からの手紙。忘れたわけではないが、え〜っと……。三月十四日のところに赤丸印をつけた。春に生まれて、名は春子。言いたいこと言えて、姉妹っていいなあ。薄氷も溶けた今朝の庭は暖かいです。枯れ果てていた雑草の下からは、若い草の芽が出てきました。木蓮の木の根っこ辺りを、犬が掘ってお宝を探しています。
  【選者】 平穏ということを、大切にしましょう。ささやかでも花を買い、誕生日の人を訪ねましょう。きっと笑顔が待っていることでしょう。
 
佳作 快晴のもとでコートは脱ぎましょう 香田 裕子
  【作者】 暖かくなって嬉しいのですが、ことしは、いつもより浮き浮きしてこないのです。自衛隊のイラク派遣など、テレビで留守家族の方の顔まで見てしまうと、胸が痛くなります。それでも、わたしは春を待ち望んでいます。
  【選者】 お日さまと北風のお話を、ふっと思いました。日毎に陽射しは心地よくなっていき、風はゆるりと故郷のほうから吹いてきます。
 
佳作 菜の花を見てきたからとメールする 水野亜希子
  【作者】 暗いニュースが続くけれど、やっぱり春は待ち遠しくて嬉しいもの。食卓にも春を演出したりして……。
  【選者】 梅も桃も菜の花も、みんなみんな春の花。日を、週を重ねるごとに咲く花も変わっていき、庭も野も森も色を増してきます。やわらかい安らかな色です。
 
佳作 子の受験終えて一家で大朝寝 杉本 金男
  【作者】 娘の受験に振り回される日が続き、なんとも親バカの限りで恥ずかしいことです。いっそ代わりに受験したいと思ったりしております。終わったら、春休みには一家で温泉に行く予定を立てております。
  【選者】 ごくろうさまです。はるかむかしの自分の受験のころを思い出したりしています。お前なんか受かるものか、というような顔をしていた教師のことをいまでも記憶しています。満願成就するように。
 
佳作 白亜のマンションに布団がズラリと 柳田みずき
  【作者】 マンションの景観を損なうからと室内に布団干し場を設けても、悲しいかな日本人は、外に干さないと干した気がしない。そこで暖かい日には満艦飾になる次第。
  【選者】 マンションにはマンションの住み方が。布団はデモンストレーション・飾りだと思えばよいのでは。
 
佳作 空の青さと雪の白さと哀しみと 松田 悦子
  【作者】 やっと送れました。どうぞよろしくお願いします。
  【選者】 空と雪とがいっそうの哀しみを増すのでしょうか。思い出に繋がるものが見えたのでしょうね。それはなにか、とは時間のみが知るのでしょうか。
 
佳作 ユーモアで鬱な心に点滴を ほりべよしゆき
  【作者】 友人が鬱病になり、休職している。人ごととは思えない。私は〈神経が太くて羨ましい〉と、よくほめられるのですが、それは誤解です。体の健康も大切ですが、心の健康にも気をつけていきたいものです。
  【選者】 ユーモアが解ることが、どれほどの安らぎになることでしょうか。そして、そういう人が、残念なことに、なんと少ないことでしょうか。
 
佳作 文机 母もこうしてこのように 堀  恭子
  【作者】 文机の上に電話機を置いている。母の、古い古い大正時代の文机はもうないけれど、母の仕草まで思い起こされるのです。
  【選者】 物思いの仕草か、作業の様子なのでしょうか。ふっと気づくと、母上と同じような動作をしているのではありませんか。
 
佳作 鳥たちよ変な風邪など引かないで 春日井五月
  【作者】 インフルエンザで数え切れない鶏が処分されています。予防手段もなく、纏めて処分された鶏たちに同情します。
  【選者】 二月末になっても騒ぎは治りません。三月もなお混乱は治まらないことでしょう。愛知県にも飛び火してきました。
 
佳作 早春の日差しの中に土の雛 園部志津代
  【作者】 いくつになっても少し日脚が延びるとお雛さまに会いたくなって、面倒面倒と言いながらも、飾っています。
  【選者】 大切なものを期間を限って飾るのことは、いくつになっても爽やかなものです。雛さま、しかりですね。
 
佳作 まだ眠い 薄い瞼に春の風 尾崎支朱子
  【作者】 暖かくなったり寒くなったり、ゆっくり春は進行中。
  【選者】 眠いのは薫風のせいですか。春の向こうにはなにがあるのでしょうか。
 
佳作 月詣でジッチャバッチャの列の先 いとうていこ
  【作者】 もうソロソロこの列の尻尾にでも捉って手を合わせようかななんて。
  【選者】 お寺参りは心安らかになるのでしょう。そう言えば、若い人の月詣でをほとんど見かけません。老いとともに信心は深まるものなんでしょうか。
 
佳作 少しだけ春を待つ日に雪が降る 関本 満美
  【作者】 雪が降りました。春を体感した後の寒さは応えましたが、季節は着実に春に向かっていますよね。
  【選者】 一進一退とか三寒四温とか、浅き春は揺れながら花満開の季節に突入していくのですね。この春は、どこへ出かけますか。
 
佳作 おおあわて 春の始めへ一筆箋 吉田三千子
  【作者】  
  【選者】 春は物忘れの季節、いや失礼、用が多くて身体がついていかないのでしょう。心の整理整頓をしながら、ゆったりとする時間を増やしたいものですね。
 
佳作 春嵐 付き添ってゆく岩田帯 恒川和左子
  【作者】 娘が幼いころから親しんだ近くの六所社へと、安産祈願に同伴しました。縁日の屋台で、お臍の型をした捩り飴を買い、むかしを懐かしみました。
  【選者】 曰くがある飴なんですね。新興地のぼくの団地などは殺風景な風景があるばかりです。懐かしむむかしもないのですよ。健康な次代のいのちを!
 

♪   ♪   ♪   ♪
【終わりに】
 一気にここまで来たのですが、二月末の底冷えのようなものを感じます。この季は、ここで息をついていてはいけないのです。二週間を待たずにイベントを開かないといけません。
 第13回朝日中部川柳大会を、三月十三日〔土〕お昼ころから、名古屋市中区の朝日ホール〔朝日新聞社・社屋の十五階〕で開きます。朝日新聞社・朝日カルチャーセンター・川柳みどり会の共催です。詳しいことは別項に詳報してあります。ご覧の上、ぜひご参加ください。作品の提出は大歓迎ですが、これから川柳を始めようとされる方のご出席を願っています。これから川柳を親しもうという方にも解りやすいようなトークも、スライドによる入選作品のご紹介もいたします。盛り沢山の内容です。午後のひとときを楽しくお過ごしください。
 他のページで、新しい川柳などを中心に話し合うコーナーの新設が計画されています。開設されましたら、この《ピッポ de センリュウ》の姉妹・兄弟ページとして、親しくドアを叩いてくださいね。この欄でも紹介されることと思います。  では、朝日大会席上でお会いしましょう。ご都合のつかない方は、二月の募集案内により、作品やコメントをお寄せくださいね。
 あなたの春の計画は……。

………… 【渡辺 和尾】──2004-02-28 22:00


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2004年1月の優秀作:渡辺和尾 選評

♪   ♪   ♪   ♪

【はじめに】
 ヒーターの部屋でこの〈はじめに〉を書き始めました。始めの一歩も凍えそうな部屋で始まります。一月も終わりのただいまです。
 たくさんのご参加の方の思いがこめられた作品に埋もれて、やがて心も体も温まってまいります。それに伴って、きょうのぼくの〈ヤル気〉も高まってまいります。月末の朝は《ピッポ DE センリュウ》の作品に向き合うことから始まります。どうぞ、あなたもご参加ください。そして、お友だちにもご参加をお誘いください。川柳でコミュニケーションの輪を広げてまいりましょうね。場所は、居間から書斎から……。時間は、お好きなときに……、話題は、あなたの近辺のことから社会のことまで……。普段の言葉でけっこうなのです。5/7/5、十七音を基本にして、初めてのあなたも書いてみてください。楽しみにお待ちしています。中堅の方やベテランの方も、手を取り合って話題を広げていきましょうね。

*** *** ***

《特選》 【呈賞】
呈賞  五年前パリの一部はきみだった 甘 ヒロヨ
  【作者】 お正月に世界の名画を紹介する番組を見ていて「あー、私もあそこにいたんだなあ」と思いました。
  【選者】 うん、若いということは、羨ましいね。パリなんて、六十三歳のおっちゃんに似合うやろかなあ。
 
《秀逸》 【ポストカード】
呈賞  お神籤の神さま 風邪を召している 香田 裕子
  【作者】 雪景色に驚いて、雪の降る日に町に出かけました。着膨れして、いつものようには動きがとれず閉口しました。家でじっとしているよりも、胸がドキドキしたのは、雪の白さのせいでしょうか。
  【選者】 お神籤・宝籤の類は、まったく信じません。年賀はがきの末等ですら、確率よりいつも、うんと低いぼくです。だれか、三億円あたったら卒倒する、なんていていましたが、そんな冗談溝に捨ててしまいましたよ。
 
呈賞  キューピットが飛び交っている喫茶店 いとうていこ
  【作者】 ことしは楽しいこと、嬉しいことを優先にしようと思います。誰もが幸せ願ってるよ、ネ。
  【選者】 ああ若さは未来だね。とすると、ぼくには未来はないのかなあなんて、しみったれたこと考えるのが老化の証拠。ああ!
 
《入選》
佳作 なにげない減らず口すら母譲り すおうみどり
  【作者】 この句の母は自分です。顔がそっくりだと、必ず言われる息子ですが、最近は減らず口まで似てしまったようです。困ったことだと思いながら笑い転げる毎日です。
  【選者】 親から子へと〈減らず口〉さえ遺伝するんですね。またそれを反省している素振りも感じられる……けれど、ま、いいか!
 
佳作 伝統を言い続ける小言か ち び 丸
  【作者】 むかしから、口で言い伝えることは愚痴が多いいようですね。
  【選者】 さようですね。とくに年配〔親〕から若輩〔子〕へは、そうかもね。
 
佳作 犬と夫婦ふたありだけの台所 児玉 浪枝
  【作者】 前日の雨で洗われた元旦は穏やかで清清しく、帰省した息子は元旦の日の出を見に出かけていったまま。お雑煮食べて数の子食べてとにかく静かに二〇〇四年は幕を開けました。
  【選者】 爽やかな新年で、よかった、よかった。ぼくは例年通り、ぐっすりたっぷり新年も眠り初めでしたよ。
 
佳作 発熱は抵抗している私かも 内田 順子
  【作者】 鳥のインフルエンザでニワトリは生きたまま殺される。人の風邪で私は治療を受けることができる。もっと早く来なさいと、お医者さんに叱られてばかりいますが。
  【選者】 糞真面目は作品を弱くします。ここにユーモアの煮汁をぶっかけて《○○丼》のできあがりい!
 
佳作 水道を捻って寒の水を取る 恒川和左子
  【作者】 いつの間にか、お正月も過ぎ、我に返ると妙にカレーライスが食べたくなります。友だちも昨夜はカレーだったとか。毎年、小寒にに寒の水を一升瓶に取り、翌年の寒の入り前日に、それを鬼門から家の周囲に撒く。姑から受け継ぎ、捨て難く続けている風習です。
  【選者】 水が出れば幸い。凍ってしまって水も出ない、なんて、それはぼくの心みたいに……。
 
佳作 我が息子 抱きしめたけど嫌われた ほりべよしゆき
  【作者】 合理性を追求する現代建築の流れの中で、床の間や廊下は、無駄な空間とみなされた時期があったそうです。しかし、これからは、お正月に限らず、〈無駄〉なことを大切にして生活したいと思っています。
  【選者】 そりゃあ、嫌われますよ。髭くらい剃ってからにしてよね。ぼくの本業は住宅の設計です。奇を衒う間取りや空間は、設計士のエゴかも知れません。伝統的な間取りや材料をもっと見直してもよいのでしょうね。
 
佳作 燃える夢あるから目指すマイロード Y・G 美保
  【作者】 阪神の震災から、もう九年も経ちました。あと十年は、がんばりたいと思う私です。
  【選者】 ぼくの夢はきょうの、あしたの健やかな暮らしです。夢を燃すにもエネルギーが必要です。阪神の震災の年に、ぼくは病に臥した思い出があります。
 
佳作 後ろから強く押すのは魔女ですか 芙 蓉
  【作者】 二十階のホテルの窓から鳶の背中〔鳥も背中というのかしら〕の模様が奇麗に見えました。浜名湖のホテルで朝食前の露天風呂からは、まるで鳥が出勤するかのように群れをつくって飛んでいきました。
  【選者】 なにものかに後ろを押されるような気がしながら、毎日を生きていますよね。あすあたりから、春の便りが聞かれるようになるのでしょうか。
 
佳作 マニュアル通りに忠実な犬はどこ 柳田みずき
  【作者】 クリスマスに、突然子犬がやってきた。やんちゃで甘えん坊の子犬に振り回されています。老いた飼い主の甘さのせいなのでしょう。責任を持たなくては、と気合を入れています。
  【選者】 それはロボット犬でしょうね。やってきたいまは可愛い子犬が、やがて扱いに困ることがないようにね。飼い主に似るとは、よく言われています。飼う人の態度で犬も変わるのかもね。
 
佳作 医者曰く心配めさるな歳だから 野沢  司
  【作者】 牛・鶏と、世間はそうぞうしいが、日頃肉類をあまり食べず、心配していない。また検診結果も、歳だから仕方ないよとの医者の言葉に安心半ば、心配半ば。医者も説明するのが面倒くさいのかも知れない。
  【選者】 この会話が一句になってしまう川柳の親しさ。〈おはよう〉〈はい、早くからどちらへ〉……の会話のすぐ先に作品がぶら下がっています。
 
佳作 女子十二楽坊だったのねシクラメン 春日井五月
  【作者】 一月も終わりになると、さすがにシクラメンの花の色が冴えません。お正月ごろはあの女子十二楽坊を思わせていたのに。そう言えば、彼女たちもあまり見なくなりました。
  【選者】 一茶などの俳句の境地に似たようなところが感じられます。〈やがて哀しき〉ですね。シクラメンが社会での浮沈を見せてくれているようです。
 
佳作 コンビニで待ち合わせする寒い午後 水野亜希子
  【作者】 寒い寒いと思っているうちに、陽差しが少しずつ伸びているのが感じられます。近くの自衛隊基地からは、イラクへ飛行機が飛び立ったというニュース……。どんな春になるのでしょう。
  【選者】 コンビニが構図にマッチするような親しさが湧きます。もう日常にはなくてはならないコンビニの存在になりました。〈ちょっとご無沙汰ポストで解消!〉こんな標語、コンビニ協会で買ってくれないかなあ。
 
佳作 寒空へイラク支援機飛び立ちぬ 笹山喜代惠
  【作者】 寒さもいまがピークでしょうか。悪い風邪には注意しましょう。そして良い一年になりますように。
  【選者】 季節が支援の厳しさを象徴しているようです。世界に平和あれ。強いと思って戦争仕掛けたら、泥沼に填ってしまった例だってあるのにねえ。
 
佳作 同じ話に相槌を打つて親孝行 渡辺 妙子
  【作者】 ことし米寿の義母は、最近同じ話をすることが多くなりました。私はなんどでも初めて聞いたように相槌を打つことにしています。
  【選者】 納得していない話だけれど、ま、いいか、なんて中途半端な親孝行。実は、親のほうが一枚も二枚も上手かも知れないよ。勝手○○なんて言葉もありますしね。
 
佳作 寒風に晒して仰ぐ 愚かなり 尾崎志津子
  【作者】 もうすぐ2月、暖かい日差しに心も安らごう。
  【選者】 愚かなり、と自分で言ってしまうのは、主演者が幕引きをしているようで、感心はしません。余韻も消えてしまいます。たった五音ですが、大切に大切に書いてあげてくださいね。句が喜びますよ。
 
佳作 椋鳥の立ち入り禁止を告示する 堀  恭子
  【作者】 鶏インフルエンザの猛威を聞かされると、椋鳥のことが気になってきます。空き家の戸袋に侵入されないようしなくては……。
  【選者】 告示する、と惚けた味を出しています。椋鳥の繁殖期には毎年悩まされているのですね。見方を変えれば過ごしやすいのかもしれませんね。
 
佳作 早春賦 本を形見に貰うなり 吉田三千子
  【作者】 一月下旬の中央線沿線は多治見辺りから雪が残っていました。雪景色を堪能しながら進みます。雑木林の樹氷を見ながら、やまなみの雪を眺めながら、短い旅をしていきます。一月の旅は、人との別れから始まりました。
  【選者】 早春賦は、内容には軽すぎます。形見ですから、亡くなられた人の大切にされていた品でしょうね。さあ、その辺りの読者のもやもやをもすっきりさせなければね。
 
佳作 親として挫折を知らぬ弱さかな ぽ ん た
  【作者】 子どもたちがダブル受験。玉砕覚悟のチャレンジに、親として肝が座りません。弱い自分ですが、強くなりたいものです。
  【選者】 親は、多分、多くがそうなんじゃないですかねえ。個人と社会との関係・親と子・時代の変遷……、そんな中で、親子関係も成長していくのでしょうか……。
 
佳作 張り替えた障子越しには白い光 関本 満美
  【作者】 障子貼りも糊でなくアイロンで。便利な時代になりました。和紙に拘らなければ、見た目もなんの違いもありません。陽に当たり、なにか変化があるのかしら。
  【選者】 障子越しに春が見えましたか。小綺麗にして春を迎えた気分はいかがですか。
 
佳作 野球部員が駆けて行く冬の朝 杉本 金男
  【作者】 長い正月休が終ったと思ったら、もうすぐ2月。恐ろしい勢いで時が過ぎていきます。先日、親しい友人五人が東山荘に集まり、現代風〈連句〉の会を催しました。いちおう、最低限のルールを作ってやってみましたが、たいへん楽しいものでした。三十六句終わったときには三時間半が経過していましたが、あっという間に思えました。機会があれば、またやってみたいと思います。
  【選者】 平凡な学校近辺の朝の風景。爽やかな掛け声が一番よね。
 
佳作 一滴の水で始まる交響詩 園部志津代
  【作者】 寒い毎日でも、川は流れ、海への旅は粛粛と続いているのでしょう。
  【選者】 大きなうたですが、小さなことをボソボソ書くのも、また愉しいことですよ。
 

♪   ♪   ♪   ♪
《おわりに》
 こんげつも一気にここまで書いてまいりました。
 作品が締め切られ、ぼくのもとに数時間後には送られてまいります。それをほぼ一日で書き上げなければ、このネット川柳の即時性の妙味は薄らいでしまうだろうと思っています。ぼくらは、これからもこのインターネットを、うまく活用してまいりたいものです。
 さて、恒例の《第十三回朝日中部川柳大会》の【事前投句】の締め切りが二月十六日〔月曜日消印:メールの場合は二月十八日中に必着のこと〕に迫りました。別掲の参加要項によりふるってご応募ください。入賞の優秀作品や作家には、素敵な賞品も用意いたしております。

 《ピッポ DE センリュウ》へのご応募には、おところ・お名前などのほか、コメント〔附言〕は、ぜひお書き添えくださいね。とくに制限はありませんが、なるべく簡潔にお書き添えください。すべてを拝見して今後に生かすように努力いたします。
 次月分〔二月二十七日必着で〕も、よろしくお願いいたします。ちかぢか年間参加の多い方には、入賞とは別個にプレゼントするよう考慮もしております。お楽しみに。
 寒さもまだ厳しいですが、あくる朝には花芽が膨らみ、開き、風が心地よくなることでしょう。風邪など引かれないように。 〈は〜るよ こい!〉……。

………… 【渡辺 和尾】 2004-01-31 11:15



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