pippo

投句のページ 優秀作紹介

       

2008年5月の優秀作:渡辺和尾 選評

** ** ** ** ** ** ** **

【前書き】

2008年5月1日〔木〕です。
舗道や畦の雑草も、木立も、森も、眩しく光るような緑の季節になりました。早朝に窓を開けると、いっとき高原にいるような錯覚にもなる爽やかな一瞬です。
みなさんは、どう連休をお過ごしでしょうか。どうか、あしたの力を養っていただきたいと願っています。連休中から値上げが押し寄せることでしょう。原油値上げが物価値上げに即繋がって、暮らしを直撃してきそうです。困ったことに、暮らしを守ってくれる政策などまったく見えてきませんね。

さて、次月のための作品は、この発表と共に開始しています。ふるってどうぞ。

【渡辺 和尾】2008/5/1――

** ** ** ** ** ** ** **
ピッポ de センリュウ 2008年4月募集分
↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
ピッポ DE センリュウ 4月分(5月発表分)
↑   ↑   ↑   ↑   ↑


本日は奮って進めと運勢欄
塩も醤油も切れそうなのに気がつかぬ
水野亜希子
 【作者】 運勢欄は、たまに見る程度です。私のことをなにも知らないのに、いろいろアドバイスをくれます。適当に解釈をしてみると、結構自分に当て嵌まるもので、面白いですね。でもきょうは、〈奮って進む〉気分ではありません。そんな日だからこそ、〈進め〉と言われてるのかななんて、深読みしてしまいます。
 【選者】 運勢はお遊び、むしろ、遊び相手がいるトランプ占いなどのほうが、心理を読む勉強になるかもしれませんよ。不足品を書き出したメモやチェックリストはいつも用意しているのも一法でしょうか。
 
目に青葉 おつな干物よ金目鯛
晴雨兼用 じっと我慢の鯉幟
吉田三千子
 【作者】 4月26日の土曜日から大型連休が。中部空港から外国へ出発する家族の笑顔や若者たちをテレビが流していました。5月6日までの長い休暇が取れる人も多いのでしょう。山積みの宿題を抱えたまま、私はじっと暦を睨んでいます。
 【選者】 連休というものに縁ない暮らしが続いる僕ですから、土日祭日が踊っているようなカレンダーも不要です。家でゆっくりと寛いでいるにしかず、です。金目鯛は、美味しいですか、一度試食してみることにしましょう。
 
誰ですか後期と決めた陰の人
信じない長生きしてねのお世辞など
吉川美保子
 【作者】 後期高齢者と勝手に決められて、かえって反発して、長生きしてやろうじゃないかと思うのです。でも、気力はあっても、体力が追いつきません。階段の上り下りが大変になりました。杖が欲しいくらいです。残念無念です。
 【選者】 後期高齢者と言われても、怒らないこと。政治や行政などは、そんなものですよ。作者も選者も、仲良く後期高齢者です。胸張って作品書いていきましょうよ。
 
ベートーヴェン聞きつつ納豆掻き混ぜる
私を焚きつけるようにアカメガシ
恒川和左子
 【作者】 飛び石連休のある一日、お客さんは外出に。遅い昼食のひとときをFM放送でホッと一息。若葉の爽快な季節に、アカメガシの鮮紅色からストレートに気を受けているひとときです。
 【選者】 お客さまのある連休、お疲れさまと言うべきなのでしょうか。FM放送でベートーヴェンですか。寸時優雅なひとときですね。アカメガシの鮮やかさに心洗われるようですね。
 
伸びすぎたスミレ刈り込み花束に
夕日落ちゆくおっと言いああと言う
堀  恭子
 【作者】 プランター一杯に花を咲かせた紫のスミレが伸びすぎてきたので、刈り取りましたら、片手に持ちきれないほどの花束になりました。玄関やお部屋やトイレに挿して、家中紫一色を楽しんでいます。きのうも、感嘆と溜め息との交差するような夕日でした。
 【選者】 五月のころは、紫系の花が多いですね。我が家の牡丹も紫かかったピンクに。夕日の美しさを表現するのには言葉以外のものが必要かもしれませんねえ。
 
Tシャツの背中を抜ける風みどり
さっぱりと生き 山菜の在処など
泉  繭子
 【作者】 ことしの冬は雪がよく降りましたが、ようやく春です。家の少し下のほうは、いま桜が満開。庭の桜の蕾は、まだまだ固いです。庭全体がうっすらと緑っぽくなり、春の鳥もやって来るようになりました。さあ、庭仕事の開始です。
 【選者】 Tシャツの背中を抜ける、とは言い得て妙ですね。いかにも爽やかな風だと読者にも伝わります。山菜あったら嬉しいのですが、東浦では、すでにむかし語りに。
 
春雷を眠ったままで聞いている
セーターを仕舞って春の重ね着に
香田 裕子
 【作者】 ガソリンがいっときでも安くなったのは嬉しかったです。でも改めての値上がは憎い。国民の不信感だけが募ります。
 【選者】 ガソリンはこの発表と時を同じくして値上げになるのでしょう。声を出して政治不信をぶつけなければ政治は独走することでしょう。庶民の声の代弁なのか雷鳴が頻繁に鳴り響いています。
 
自転車で行く 雨と風の真下まで
そうなんじゃ なんじゃもんじゃも濡れている
尾崎志津子
 【作者】 街路樹の、まだ小さいなんじゃもんじゃが白い花を咲かせていました。木は雨が降ろうと風が吹こうと、黙って花を咲かせていました。木には勝てないなあと思って、自転車を走らせました。
 【選者】 自転車で雨と風の下まで走るんですか。さあ、そこにはなにがあるのでしょうか。そうですか、 なんじゃもんじゃの花のころなんですね。
 
まあまあの暮らし筍茹でている
竹割ったような気性の父でした
児玉 浪枝
 【作者】 風爽やかな初夏に。ご近所から掘りたての筍を頂きました。この辺りには、大きな屋敷が多く、敷地内に竹藪があります。青竹は、哀しいほどに真っ直ぐ真っ直ぐ伸びて、初夏の空を仰いでいます。
 【選者】 竹藪屋敷ですか、都会にはない佇まいでしょうね。ああ、筍食べたいよう。
 
わたくしを幸せにする五百円
二親が肌は若若しいと言う
ふゆのゆふ
 【作者】 実家へ帰ると、私の顔を見てまじまじと、若いなあ、と言います。自分たちと比べているのでなく、二児の母である妹と比べているのです。
 【選者】 親が子を見て、若いなあ、とは率直なお言葉、謹んでありがたく、頂戴しておきましょうね。
 
ちびた下駄雨降り専用に変える
ふゆのゆふ
 【作者】 このごろよく雨が降りますね、降った後は、必ず温かくなりますね。春から初夏へと移っていますね。
 【選者】 下駄を履いて遊んだ子ども時代の記憶があります。鼻緒がよく切れて、そのたびに修理したり、歯にゴムや金物を打ったりもしましたね。もちろん歯の部分がなくなりそうになるまで履いていました。
 
水槽に住んで波風ない暮らし
水槽の金魚も私も不眠症
渡辺 妙子
 【作者】 縁日の出店で、遊びに来る孫のために買ってきた金魚。なぜかジジが気に入って、大きな水槽を買ってきました。海藻などの作り物などもいろいろ入れて眺めています。金魚は、喜んでいるのか、邪魔くさいと思っているのか分かりません。
 【選者】 金魚と私が一体となって金魚鉢で遊び不眠症になったり。縁日も金魚も懐かしい日日に追いやられていきますね。
 
牡丹園 人の途切れることはなし
十センチ背が高ければなに見える
春日井五月
 【作者】 背の高い人の間を右往左往して覗いている私は151センチ。でも、このくらいが、むかしは標準だったよ、と自己弁解。乳製品をあまり摂らなかったからかもね。それより骨粗鬆症になる恐れをしなければ、ね。
 【選者】 背が高くなれば、相応の位置が見えます。高いだけがすべてではないと想います。むしろ、二階から地上を見下ろすときの怖さも思うのです。
 
絶望も要素に還元されて消え
注文をつけると母は上へ行き
石川 順一
 【作者】 やはり、テレビの番組選択権は、人の心を刺激する要素をふんだんに持っていると思いました。
 【選者】 テレビは睡眠導入剤です。真夜中にテレビだけ起きています。生きているためには絶望など感じないことでしょう。母はいつまでも口うるさく、そして優しい存在ですね。
 
体にはよいと言われて数万円
保証付き保険もやがて朽ちていく
内田 順子
 【作者】 年金から天引きする医療費改革は、2年も前に決められたのに、そのときマスコミや国民はあまり騒がずに、実施のいまになってと、国は責任転嫁の気配です。読めないほど小さい字の、小さい保険証を捨てたという後期高齢者も多いと聞きます。上意下達ばかりの政治が続きます。
 【選者】 数万円って、なにを買わされたのでしょうか。身体によい効果があるとか、この投資は儲かりますよという、勧誘の電話が毎日ありますが、世の中にそんな儲け話が転がっていたら、誰も働こうなど思わないですよ。
 
制服のリボン立て結びで揺れて
本人であることを証明できない
柳田みずき
 【作者】 引き落としに必要な保検証。保険証に書かれた住所が正しいか、公共の知らせの郵便物を持参させ住所を合わせる。ややこしい。キヤッシュカードを持っていれば、割りに簡単。以前、郵便局でも、あなたは本当に女性ですか、法が変わった後のことでした。ああ、もうややこしいこと。
 【選者】 結び方など、そのうち覚えるので心配無用。本人証明を本人ができない不自然な日本。性別証明はまったくの行き過ぎだから、猛然と大声で怒ればよかったのに。
 
酸欠の金魚にも似た心の臓
降り立った駅に線路は見当たらず
樋爪 良紀
 【作者】 暑いかと思うとそうでもないという、ややこしい天候が反復しています。そのせいか、いや肥満のせいでしょうか、近ごろ、ちょっとしたことで心臓の鼓動が激しくなります。私の人生は、その意味でも先行き不明の心境です。
 【選者】 身体の心配をしながら暮らすのも大変ですね。その不安を笑い飛ばそうとするのもエネルギーですよ。線路が見当たらぬ、という心境も一句目からの延長なのでしょうか。がんばろうね。
 
風情なし春の嵐も大雑把
子も育ち隙間風吹くママ仲間
ぽ ん た
 【作者】 春に台風のような強風が吹き荒れ、名残の桜を見事に一掃しました。繊細な日本の季節感にはそぐわない激しさ。人同士も辛辣で騒騒しい限りです。宮城道雄のエッセイに、音にならない音が聞こえる、とありましたが、静かな中に微かに聞こえる音に耳を澄ましてみたいものです。
 【選者】 春嵐が大雑把とは、異常気象のことしを言い得ています。子どもが成長したら、自分の成長のことも考えてもよいのでしょうね。そうして、みんなが大きくなりたいものですね。
 
満開の桜の下の孔雀の羽根
北の地にも春の訪れ ステンドグラス
園部志津代
 【作者】 名古屋の街の四月は花に包まれました。最近、目の手術を受けたので、いろいろ綺麗に見えて楽しい春です。
 【選者】 町の小さな公園にも孔雀が いることがります。緑葉や満開の花に包まれるようにして餌を食べ、昼寝をしています。そして羽根を拡げた姿は、観客にどよめきを与えています。
 
枇杷の木を伐ってしまって駐車場
道路下関連事業蠢いて
内田 順子
 【作者】 邪魔にならないのに、木の一本までも切り尽くし、更地にして売られた土地。こんなことならあの桜、残せたのかもと思っても、後の祭りです。そんなところが、あちこちに。道行く人の気持ちなど、たちまち冷えて排気ガスの中に。
 【選者】 近くに〈健康の森〉という造成地があります。かつては自然の森だったところを切り開いて運動広場のようにしたものです。真夏になると人影もなく、なんとも寂しい広場になってしまいます。
 
ゴジラにも可愛いお嫁さん来た
値上がりは生活の敵 節約に
ち び 丸
 【作者】 やっと松井が結婚とか。いまだに姿を見せない彼女。とにかくおめでとう。値上がりばかりで、生活はさらにきつくなり、給料は下がるばかり。いったいどうなるのでしょうか、日本は。
 【選者】 値上がりに対抗する知恵は節約しかないのでしょうか。悲しい日本の初夏ですね。
 
■□■□■■□■□■  ■□■□■■□■□■

【匂う DE 賞】和尾直筆カードと粗賞

■ベートーヴェン聞きつつ納豆掻き混ぜる     恒川和左子
□リズム無視のような長い作品。決して推奨しないリズムだが、ベートーヴェンと納豆の取り合わせの妙を取り上げてみた 【渡辺和尾】。

………… 【渡辺 和尾】──2008/05/01



この頁の先頭へ