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投句のページ 優秀作紹介

       

2008年4月の優秀作:渡辺和尾 選評

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【前書き】

2008年4月1日です。エイプリルフールとか言われていますが、この《ピッポ DE センリュウ》は、まじめに新学期を始めます。そのためには、うちわの努力も少しはあります。
次月のための作品は、この発表と共に開始しています。ふるってどうぞ。

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沈む船まだ乗客は気づかない
宰相の目線俯き手暗がり
内田 順子
 【作者】 前を向いて、さあ、未来を築いていこうではありませんか。そんな檄を飛ばしたくなる行政・立法・司法のみなさんの不甲斐なさを思います。親方日の丸も、危ないぞアブナイぞ。
 【選者】 沈む船はわたしたちの乗っている船。それは、地域社会であり、それは、日本であり、それは、地球でもあります。危険を察知しても対策が後手後手に回っています。未来が心配ですね。某国の首長批判が噴出しています。某国はいまの難局をどう切り抜けていくのでしょうか。
 
ひりひりするものに椿の落花
孫のお喋り徹子を負かしそうだ
柳田みずき
 【作者】 マンションに移った孫は嬉しくて、お喋りは速くて延延と続きます。百人一首も40句は覚えたと言います。4年生になる孫に、もうついていけないと歎く春です。
 【選者】 椿の花が地に落ちる様子を、ひりひりとは、愉快な表現ですね。お孫さんの驚くような心身発達は目を見張るものがありますね。
 
最近は切羽詰まったことばかり
気付いてね神よ私を見捨てずに
吉川美保子
 【作者】 懸命に生きているはずなのに、いま一歩前進できません。焦ります。だって後期高齢者なんて、ますます気分が沈みますもの。やることは、たくさんあるんですが。
 【選者】 年齢は容赦なく押し寄せてきます。それを押し返すのは精神力ですよね。さあ、春の野に森に出て、新鮮な空気をいっぱい吸って鋭気を養いましょうね。
 
桜情報雪の情報交差する
たかが土筆されど土筆春の夢
水野亜希子
 【作者】 一気に春本番です。タンポポ・レンギョウ・ユキヤナギ、そしてサクラ。先日、珍しい土筆の砂糖漬けをいただきました。袴を取り、一本一本丁寧に仕上げた上品なお菓子でした。土手の土筆からでも、どんどん夢が広がるようです。細長い日本、しばらくは桜前線に注目です。
 【選者】 知多も3月末には桜満開に。列車に乗れば沿線も華やぎます。林にも一本の桜の木があるようで、ほんのりピンクの場所が見えます。土筆ほかの山菜類は春を味から伝えてくれますね。
 
疲れ果てて浮かび上がる南の島
曇天の中に逃げ込んでいく私
深谷  歩
 【作者】 毎年のことですが、仕事のピーク時で、疲れ果てております。こんなときに見る満開の桜の花は、また格別です。桜の終わるころ、仕事はやっと一段落することでしょう。信州へでも出かけて、遅いお花見でもいたしましょう。
 【選者】 南の島と言えば、テレビでもそれらしい番組を放映しています。海と島との美しさ、人魚はそこに棲息するのでしょうか。一仕事終えたら人魚になる作者なのでしょうか。
 
さくらさくら哀しいことも嬉しいことも
亡き人の家の古木のさくら花
堀  恭子
 【作者】 近辺の桜も、ことしは、もう満開に近いですね。徳川園の桜、法律学校の桜(ここは私が通った幼稚園の跡地でもあり、そのころから桜の木がたくさんあった)、中学校、小学校の桜、そして、亡くなられた俳人加藤かけいさんのお宅にも二本の桜の古木があります。隣のビルに枝を払われ、朽ちて落とした枝もあり、痛痛しい姿ですが、ことしも、しっかり花をつけています。
 【選者】 さくら咲くころには、いつもドラマが起きるようです。さあ、あすあたりは満開の桜をどこで見ることにしましょうか。
 
金・金・金 食費の額でけんかする
飲む打つ買うどれもしないがオタクである
ふゆのゆふ
 【作者】 夫婦の数だけ喧嘩のバラエティーが。
 【選者】 喧嘩は知的に、ね。
 
さくねんも同じ愚痴を零していた
花粉症その上日光過敏症
ふゆのゆふ
 【作者】 春は人を浮き浮きさせるはずですが、反面憂鬱です。
 【選者】 花粉症も間もなく終わることでしょう。
 
桜咲く空の一部になっている
春の講座の一番乗りは薄緑
吉田三千子
 【作者】 近所の小公園の桜が咲き、下草も芽吹いてきました。明るい陽射しに浮かれて外出すると意外にも肌寒く、花冷えという美しい日本語を思う一瞬に。
 【選者】 寒いので暖房を入れてコメントを書いています。桜は車中からですが堪能、ことしの春がどんどん過ぎていく感じですね。
 
カモメ舞う父と二人で春の海
ケータイで撮る父の背中とことしの桜
尾崎志津子
 【作者】 三宮からポートライナーに乗ると、カモメの舞う春の海が見えました。以前、小学生のころ、写生会でメリケン波止場で絵を描きました。カモメがたくさん舞っていたことを思い出しました。春めいて、桜も一気にほころんだようです。
 【選者】 カモメ舞うとは、懐かしいような情景ですね。きっと作者が幼年期に見た懐かしい風景との再会ですね。
 
鶯が我が物顔にホーホケキョ
飼い犬はまたかのような顔で聞く
竹内すみこ
 【作者】 裏の竹藪で鶯が良い声で鳴いています。正調です。第一声のとき、あまり身近に聞こえて、犬が驚いてワンワンと少し騒いでいました。このごろは、馴れて知らん顔しています。面白い対象です。毎日毎朝、発声練習みたい。それにしても美声ですよ。
 【選者】 知多の我が家の小庭でも鳴いていましたよ。そしてある日、プツリと鳴き声は途絶えました。
 
未亡人の寂しさ孫が紛らわし
お休みの合図か ものが二重に見え
恒川和左子
 【作者】 夫を亡くされて満三年経ち、孫の世話に明け暮れる昨今とか。お元気な声を聞き、ホッとしました。疲労は目からの私で、物が上下に二重に見えだしたら、休むことにしています。
 【選者】 人生はドラマそのものですね。三代元気はなにより、二重に見えるときは休むにしかず、とは賢明。目の悪い選者も他人ごとには思えませんよ。
 
酒店を飲み込むスーパーのチエーン店
桜咲く酒屋のシャッター下りたまま
渡辺 妙子
 【作者】 大きな桜の木のある酒屋が、閉店して3年目の春です。店主は、若いご夫婦。二人の小さな子どもさんがいましたが、転職は上手くいったのでしょうかしら。ことしも桜の花が咲きましたが。
 【選者】 お金回りがよろしくないようです。シャッターが下りているのは定休日なのか閉店したのか、よく判りません。定休日の札が一か月も掛かっているお店も。
 
君も待つ私も待って桜咲く
桜咲く動き始める人の波
香田 裕子
 【作者】 花の開花が目まぐるしい。人の動きも急に忙しくなったような気がいたします。
 【選者】 なんと言っても桜ばな。みんなが待っていた桜があちらこちらで夢を現実にしてしてくれています。ありがとう、桜ですね。
 
我が子見て自分の躾けやり直す
生き上手常に心に灯火が
ぽ ん た
 【作者】 東京は、春の嵐です。膨らみかけた桜の蕾も、そのまま小休止。梅も似たような花の色ですが、桜には独特の色気があり、それが妖艶さとか怖さとかに繋がるのかもしれません。桜には憧れながら梅の花も。
 【選者】 躾は初期にびしりと、という意見があります。桜も咲くまでの、咲き初めの美しさを心に染み込ませたいですね。
 
白百合は特価にされても白百合で
ルッコラと四つに組んで苦闘する
恒川和左子
 【作者】 特価で束ねて売られていた白百合は、貴賓を失わず凛としていて誘われました。いま、床の間で満開です。種用に残したルッコラが猛猛しく生長。一本を残し、二本抜きましたが、その根張りの凄さに四苦八苦。体力を試されました。
 【選者】 特価であろうと美しくさえあれば、ですよね。
 
歩いたら花の季節が体内に
博覧会後は花でも咲かせよう
春日井五月
 【作者】 小径も大通りも、花の季節になってきました。まして広い会場跡の再利用法は、ひとまず公園になり、花を愛でる人たちが訪れています。管理する人は、みな花好きの人たちでしょうか。
 【選者】 小庭に咲く名も知らぬような小花が素的なことがあります。自然に近い公園を求めています。体内の花の季節を感じるセンサーを喪いたくないですねえ。
 
積み上げた本の崩れる地の震え
旅立ちの行く手見守る母の顔
樋爪 良紀
 【作者】 地震が頻発しています。歩くと響く我が家では、他人ごととは思えません。TVのテロップのたびに緊張させられます。卒業の春、就職の春です。母は励ましの星でした。
 【選者】 突然の揺れをいつも不気味に思っています。震災のないことを願うのみです。
 
靴の紐弛んでいるよと亡母の声
賄いの食事ですがと菜の花ごはん
泉  繭子
 【作者】 母にとって、私はいつまでも子どもで、夢の中でも口煩いです。知り合いのシェフが、あり合わせの材料で、さっと作ってくれた春色ご飯は、優しく懐かしい味でした。
 【選者】 母は心の中にいつも生きているのですね。まかないのような食事が我が家でもできたら楽しいでしょうね。
 
影法師子どものままで育たない
公園に子どもが戻ってきた 春だ
ふゆのゆふ
 【作者】 影法師は、映る時間帯によると背が小さなままです。皺も染みもないし。
 【選者】 確かに影は不思議なもの。厚みもありませんね。
 
子どもよりも再教育は親のほう
恐れるな親より国の未来です
ぽ ん た
 【作者】 理不尽なことに対して毅然として反論できるのは、自分の信条に自信が持てるときでしょう。ただ、伝え方は難しいです。そこには、技術がいるのでしょう。揺れて揺れて、ただ感性だけは、イエスとノーを答えてくれます。
 【選者】 再教育の作品は、すべての人にも通じることでしょう。親もいま一度自分を見直したほうが良いのかもしれませんね。
 
シャッターは閉じられたまま春の街
エンデバー打ち上げられて春の夢
児玉 浪枝
 【作者】 春なのに、この周辺の商店街は、シャッターが閉じられたままの店が多くて侘しいです。アメリカでは、エンデバーが打ち上げられ、今回は日本開発の宇宙研究室を宇宙センターにドッギングさせる計画が成功に。現実の世と、夢に向かう世界の差。遠いいつか、宇宙には素晴らしい商店街でもできるのかしらね。
 【選者】 シャッターが店の景気を言うものとなり久しいですが、田舎町では、そのシャッターも錆びついていてみすぼらしいです。エンデバーは成功、日本にも宇宙基地が。
 
雨合羽下のズボンが湿っぽい
不意打ちの地震速報強かな
石川 順一
 【作者】 ネットサーフィンをやっていると、日向灘を震源地とする地震速報がパソコン画面の最上部に表示されました。
 【選者】 日常報告から少し踏み出すと、また新境地が見えますよ。
 
思うようにならない朝は深呼吸
すっきりと食器を洗い安堵する
乙黒 初音
 【作者】 寒さもあと一息ですね。
 【選者】 深呼吸したら、心は落ち着きましたか、春嵐も過ぎていくようですね。
 
第3の目で捕まえる春の色
アイマスク今夜はどこの舞踏会
園部志津代
 【作者】 明るい春の日差しに浮き浮きしています。
 【選者】 心機、また心眼一転ですね。活躍の季節ですね。
 
いまとなってまた蒸し返すロス疑惑
有名となったあたごと海上イージス艦
ち び 丸
 【作者】 いまは知らない人もいる事件、それもお国柄で、やはり仕方がないのかも。防衛省は大変なことをしてしまいました早く見つかるといいですね。
 【選者】 なんねん経っても疑惑が言われるロス疑惑。日本の司法制度が覆されようとしています。さあ、どう反論するニホン。
 
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□【春で賞】 〔粗賞と和尾直筆カードつき〕

■歩いたら花の季節が体内に     春日井五月

□ある朝、日の光が春を知らせてくれました。ある昼、桜の開花が伝えられました。ある晩、夜桜を見に行こうと思いました。 【渡辺和尾】

………… 【渡辺 和尾】──2008-04-01



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