pippo

投句のページ 優秀作紹介

       

2007年2月の優秀作:渡辺和尾 選評

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【前書き】

2007年2月募集分の作品の発表・《ピッポ DE センリュウ》をお届けいたします。
昨夜は、寒風が吹き荒れていました。辛うじて揺れたりはしませんでしたが、我がボロ家は風の音を聞くたびに震えています。石油ストーブは背中で燃えています。ヒーターも入れています。
先だっての上着を脱がせるような暖かさの日から一転、雪の便りもあるという、少し乱暴な言い方をすれば、夏冬共存のような、季節感のない奇妙な日が続きます。
2月25日、ふらり出かけた近くの佐布里池周辺の梅林も、すでに満開を過ぎ、散りかけていました。桜は見逃さないようにしないといけないと思っています。
先月にも書きましたが、作品中に、花など、あまりに季節に寄りかかる言葉を入れてしまうと、発表のころには散ってしまっているなんてことにもなりかねません。なるべく、作家の身辺事情から取材した内容を希望いたします。
それでは、入選作品の発表にまいりましょうね。

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【入選】順序は概ね先着順です。
新知事は茨の道を駆けていき
食品はどれもこれもが謎だらけ
ち び 丸
 【作者】 鳥インフルエンザから、まだまだいろいろあるのに大変ですね。テレビ番組の《たけし城》のようにはいきませんね。テレビで放映してることは信じられず、まだまだ出てくるのでは。
 【選者】 宮崎県知事選からの波及は、ニュースを見ているだけでも、なにかと大きかったようでした。続いて鳥インフルエンザの発生も。春になったら沈静化するのでしょうか。
 
闇が泣く 窓は音なく細雪
ナースステーションの明かり また覗く 
炊 飯 器
 【作者】 抗がん剤治療で闘病中の友は、夜が怖いと言います。眠られぬ深夜に、ふと覗く窓辺。闇も泣いているようとか。そんなとき、ナースステーションの明かりは温かいそうです。かける声すらなく、辛いですと。
 【選者】 闇も泣いている、とは辛いことですね。しかし、命あることは、それだけで素晴らしいことだと、僕は信じたいと思います。
 
卵だけは欠かさない我が家です
当たってほしい注射の上手い看護師に
乾燥機を残業させて雨の夜
双子にも聞き分けよい子むずがる子
ふゆのゆふ
 【作者】 夫が毎朝卵ご飯を食べますので卵を常備。私の血管は細いので、注射のとき大変な目に遭います。雨の日は乾燥機はフル稼働。週末だったりすると、一日動いています。上の階や下の階に気を使います。
 【選者】 血管が細い人はたくさんいます。僕も例外ではないのですが、原因は幼児期の栄養不足にあったようです。往時とは事情も違っていますが……。乾燥機は家にはなく、使ったこともありません。
 
一句だが落っこちていた台所
原色を忘れ 好みの色で生き
渡辺 鞠子
 【作者】 病院の待ち時間にはラジオで料理番組を聞きます。番組の終わるころ、〈聞き洩らした分をもう一度〉と、注文してまた聞きます。次の日、〈外出していたので、メモできなかったので、もう一度〉と。親切にまた教えてくれました。
 【選者】 一句は、ほんの些細なことから生まれます。したがって、台所などは素材の宝庫なのかもしれませんね。さあ、それでは台所から美味しい料理と作品を生み出してくださいね。
 
マイチョコは一番豪華なリボン付け
生きている限りマイチョコ買うつもり
春日井五月
 【作者】 売り場を行ったり来たりして、一番美味しそうなチョコは、やはり自分用に買ってしまいました。これって、自分へのご褒美とかいうチョコ屋の思う壺に填っただけのことですね。
 【選者】 チョコは自由に購入できますが、なるべくブラックのほうが良いかもしれませんね。マイチョコなどという騒動から遠いところで選びましょうね。
 
ビートルズがいつも流れて私のアイポッド
ビートルズ聴きながらまた大根買い 
泉  繭子
 【作者】 ビートルズやプレスリーやローリングストーンズを歌おうという会が6月に開かれます。ビートルズを選んだ私は、いまその独特なリズムを体に叩き込んでいる最中、寝ても覚めてもビートルズです。
 【選者】 ビートルズより、僕はiPodがほしなあ。プレスリーより、デジカメがほしいなあ。ローリングストーンズより、大根のおでん、美味いよ。
 
わたくしの気持ちに誰も関知せず
若いなりしても座席譲られる 
Y・G・美保
 【作者】 気持ちだけは若いので、遣る気はあるのですが、やはり外見には年齢は見えるもののようです。こんな気持ちは、その立場にならないと理解できないものでしょうね。自然体が一番いいのでしょうね。
 【選者】 譲られれば、お礼を言えば良いでしょう。ぼくは、席を譲れれたことは三度あります。たいていの人は、寝たふりをしています。
 
週明けのイチゴに託す春多忙
洗濯の途中で本を読んでいる 
内田 順子
 【作者】 あれこれと予定があって、やらねばならないことが溜まっています。春ももう間近というこの時期に、動きやすい体にしておかないと。まず気持ちから、というところです。
 【選者】 イチゴ農園も土日の賑わいから一息、農園整備に忙しいのでしょう。春は、いっせいに、やってくるので大変ですね。洗濯はむろん洗濯機で。その稼働時間が読書の時間だという作者です。
 
改装をしても売れない商店街
大橋をカーで渡ればただの橋 
竹内すみこ
 【作者】 宍道湖を跨ぐ大橋に続く商店街は、さっぱり売れなくて、シャッターを下ろしています。問題は、人の流れと駐車場問題です。湖を眺めながら歩いて渡る橋は格別なのにね。虹でも架かれば絶景ですが。
 【選者】 どこの町でも旧商店街は、再生が難しいようです。作者の町でも車の弊害が出ているようですね。情緒ある湖に架かる橋も、車で渡れば、味も素っ気もない単なる橋に。
 
玄関のチャイムの音は春の音
税金を払い終わって帰る道
児玉 浪枝
 【作者】 あそこに、ここに、玄関の周りに、と春の訪れを感じています。聴き慣れたチャイムの音さえ、軽やかに聞こえます。〈いよいよ春だなあ〉季節だけは確実に巡りきます。固定資産税や県民税などの税金も、春には押し寄せてきます。
 【選者】 春が軽やかというのは頭の中でのこと。といのは、まだ春は来ていないからです。この《ピッポ  DE  センリュウ》は月刊ですが、月刊誌ではなく、書き上げれば、翌日にも発表されるのですからね。税金類も高くなって、払うことのできる限界を越えようとしていますね。
 
落ちてくる春に掌広げよう
振り向けば冬の足跡なまなまし
香田 裕子
 【作者】 近所に梅がたくさん咲いています。花の咲いている中で、小鳥が遊んでいるではありませんか。鶯か目白でしょうか。雀でないことを祈って近づいていきますと、二羽飛んで逃げてしまいました。もう二羽残っているので、さらに近づいていくと、やっぱり目白でした。とっても幸せ気分でした。
 【選者】 ゆっくりと、あるいはひょっこりと、春はやってくるようです。小鳥たちは春を告げに来る使者なのでしょうか。
 
縁あって出会ったものは宝物
手のひらに残っ幸をそっと握り
ぽ ん た
 【作者】 『佐賀のがばいばあちゃん』という本を読みました。明治生まれで、6人の子どもを育て、商売をしていた祖母と重なる部分がありました。激動の時代を潜り抜け、私の知る祖母は、やっぱり、広島のがばいばあちゃん。豪傑の祖母も、最後はボケて本当に可愛いおばあちゃんになり亡くなりました。ボケさえも、祖母特有の智恵ではと思わせる見事な人でした。そんな祖母を思い出しての作品です。
 【選者】 作者の言葉がなかったら,作品の理解度は薄くなってしまうことでしょう。いま少し作品の距離を親切の側への距離へ近づけて置いたほうが、よいのではないでしょうか。
 
出身は赤ちゃんポスト哀しすぎ
晴天の狭間の雨の三回忌
恒川和左子
 【作者】 受け入れの病院は〈こうのとりのゆりかご〉と名称されるらしいのですが、悲哀感は否めませんね。好天の間で、選んだように雨の日の三回忌でした。
 【選者】 赤ちゃんポストとは、たしかに奇妙なものですね。どうしようもないポストの感すらあります。いえ、むしろネーミングの軽さが、世相を象徴しているようでもあります。
 
水仙の首傾けて思案して
凛と立つ水仙だってつらかろう
堀  恭子
 【作者】 半日影にある我が家の水仙は、まことに弱弱しく、いまにも折れそうになりながら、それでも花をつけています。越前水仙の野性味とはほど遠いのですが。
 【選者】 水仙を擬人化して描いています。首傾げている姿を思案すると言い、凛と立つ姿を辛かろう,と見る作者です、
 
三日月に早咲き桜 洒落た夜
マンサクのしばし豊かな野の小道
吉田三千子
 【作者】 喉が痛い、頭が痛い、目が痒いなど、最悪の二月になっています。少し豊かになろうと牛肉を買いました。牛肉の匂いって、良いものですね。白いご飯の上に乗せていただきました。風邪が治りますようにと祈って。
 【選者】 洒落た夜、と言ってしまったところが、洒落っ気を削いでしまったようです。野を行けば、野草が春を告げてくれることでしょう。
 
美しい夕焼け見るなら河原から
大根をまいにち食べて元気です
水野亜希子
 【作者】 平凡な日が過ぎていきます。物足りないようですが、それが平和で幸せというものでしょうか。
 【選者】 河原が暮らしの中にある作者。大根をふんだんに使える豊作。報道によると畑の隅に放置されている大根。ほしい人まで運ぶのすら、ままならぬ現実が報道されています。
 
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□閉まったDE賞 〔こんげつの粗賞〓和尾直筆カードつき〕

■改装をしても売れない商店街     竹内すみこ
□以前が銀座本町と言われたような旧商店街が壊滅状態に。あの町この町、日が暮れる、と斜陽の町があちこちに目立っています。淋しくもかなしいことですが、もう再生不能のようにも感じます。

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□今月の粗賞は、上の作品に決定しました。今後とも、たくさんの方のご参加をお待ちいたしております。締切まで待たずに、いますぐどうぞ。お誘い合ってのご参加を。〔和尾〕

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※来月も《ピッポ DE センリュウ》《ピッポ DE 50字》などへのご投稿をよろしくね。
………… 【渡辺 和尾】──2007-02-28 12-00



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