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投句のページ 優秀作紹介

       

2006年9月の優秀作:渡辺和尾 選評

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【前書き】

秋になったり、夏になったりと、季節も定まってくれないようです。政治も、首相が代わり、良い変化があるものと思われていたのですが、なぜか沈滞ムードです。

少しは楽しみたいと財布を見直してみるのですが、中身は増えてはいません。財布を開けるたびに、迫られて払うものの多さに吃驚するくらいです。希望を未来を感じさせてくれるのが希薄になっていく無気力感が蔓延しています。

ぼくらは、もう長い年月、膨らまぬ財布を眺め続けています。値上げは目白押しの様相です。しかし、貧しいところでは、値上げなどしようものなら、即座にそっぽを向かれてしまいます。庶民には、もう絞っても汁など出ようもないのです。あしたが少しでも明るくなることを切望しています。

ぼくらは表現する手段を持っています。表現する場所があるのです。有効に利用してまいりましょう。

10月提出作品も、締切日を待たずにお寄せください。このコーナーの締切日と締切時間は厳守ですので、よろしくお願いいたします。

さあ、初秋の《ピッポ DE センリュウ》です。

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【入選】順序は不同です。
佳作 新年を迎えるころの大激震
寝そべったロボットからの癒し音
内田 順子
 【作者】 なぜか防災訓練は9月1日のようです。春夏秋冬やっておいたらよいと思うのですが。音楽聴きながら、梨や林檎を囓って、テレビで見ている防災訓練……では、ちょっと不安ですね。
 【選者】 《ピッポ DE センリュウ》の発信地では、いまのところ、幸いにも大きな地震は起きていませんが、予報ではいつ起きてもおかしくないとも言われています。せめて、心の準備はしておかなくてはね。
 
佳作 秋になっても悲しい事件続きます
いまもなおハンカチ王子応援し
ち び 丸
 【作者】 ことしの夏もいろんな事件や事故が沢山ありました。中でもプールの排水溝は、あんなに怖いものかと、テレビでの実験はぞっとしました。ハンカチで汗を拭くいままでにない仕種は印象的でした。
 【選者】 確かに、近ごろ目に余るほどの事件が続きます。先年から学校の門は閉ざされてしまいました。街中や駅や商店などでは監視カメラが作動しています。大きな流れの変化に気づかずにいると、微細な変化には当然気が回らなくなるのでしょうね。
 
佳作 二倍半に上がった介護保険料
市役所の百円バスが通過する
児玉 浪枝
 【作者】 自分も老いたとき介護保険のお世話になるやもしれぬと思えば、文句言うのもと思うのですが、介護保険料はどんと上がり、さっさと年金から引かれています。国保も上がりました。県民税も上がりました。これが税制改革なんだったんですね。嗚呼。
 【選者】 バスや電車などの地域交通機関は赤字とかで撤退していきます。計画と現実との格差が大きすぎたのでしょう。ぼくの町でもバスは町営循環バスに代わりましたが、いつ、どこを走っているのかは知りません。当然乗ったことはありません。それより、30分歩いて、最寄りのJRの駅まで出たほうが手っ取り早いのです。この先、老いが進んだときは、お先真っ暗ですね。
 
佳作 冷茶コップいくつか割れて9月なり
料理集引っ張り出してセプテンバー
園部志津代
 【作者】 手抜き料理ばかりの夏を反省しつつ秋を迎えます。
 【選者】 夏に手抜き料理をすると、ツケは秋から冬の体に出てくるから怖いですよ。せいぜい食欲の秋よろしく、お安いものでもたっぷりいただきましょうよ。
 
佳作 果物のようなにおいの汗をかく
立ち去らぬ夏に水をぶっ掛ける
ひもじくて心ひもじい句を作る
洋服に回復不能な穴ができ
ふゆのゆふ
 【作者】 人間の汗は人によって臭いが違いますね。私は糖尿のせいか、甘いにおいもします。汗がひどい体も、夏も、行水です。お腹すいたと、寝ていてもお腹が空いて起きることもあります。私はボクサーではないので、お腹がすいても闘志は沸きません。
 【選者】 やっと夏も去っていく気配、などと言っていると、ストンと秋になってしまうのでしょうね。ぼくらは、食べ物、たとえば野菜とか果物とか、身のまわりで栽培することに遠くなってしまいました。みんな買わなくてはならず、そのために時間を切り刻まなくてはいけなくなりました。まだプランターがあったっけ。
 
佳作 百足の子よ お前も親があるんだね
小さいが毒持っている百足の子よ
竹内すみこ
 【作者】 ことしは百足に会わなくて、ほっとしていたのに、小さいものに咬まれてしまいました。痛さが蚊や毛虫と全然違うので、これも恐いものでした。我が家は、百足の住民登録してあるようです。
 【選者】 にっくきは、ですね。10年以上も前になりますか、夜に近くを散歩していたら、10センチもあるかと思うような、それに出くわしました。さすがに気持ちの良いものではありませんでしたよ。
 
佳作 儚い夢より叶う夢好き
処方箋渡し窓辺で庭眺め
渡辺 鞠子
 【作者】 病院帰りに寄る薬局があります。小さな庭に、私の好きな花を咲かせていてくれています。
 【選者】 夢は叶わない場合が多いようです。夢が願いが叶ったときは、作品に書いてお祝いでもしましょうよ。病院通いも暮らしのうちと、作者は心強い笑顔を見せてくれます。薬局の窓辺から庭の花を見るひとときの作者の安寧を感じます。
 
佳作 すぐばれる嘘をつきます政治家は
法律は愛のカケラもありません
吉川美保子
 【作者】 法律でもすっきり解決できないことが多すぎます。結局は人間は、なにごとも自分の心に正直に生きるしかないのですね。
 【選者】 確かに不条理なことが多すぎますし、作者の心の痛みも解る気がします。政治家を選ぶのはぼくらの側、やはり他人任せから個人個人が自覚する位置から再出発することが大切なことかもしれませんね。
 
佳作 誤作動のどさくさに儲けた20億円
美しい老いなんてすっぽり忘れます
柳田みずき
 【作者】 みずほ証券の株のアレです。儲けたのは27歳の青年でしたが、この男性が勝ち組ならと表現していた司会者がいました。巷で流行った言葉としてですが、勝ち組とか負け組とか、嫌な言葉ですね。蟋蟀・鈴虫……、秋を奏でる虫の音はよいものですね。
 【選者】 20億円の事件も、もう古いお話のように霞んでいます。美しいとか、言葉の響きに酔うことなく、目の前をしっかり見ていたいですね。
 
佳作 団塊はいくつになっても問題児
譲り葉の精神忘れ国滅ぶ
ぽ ん た
 【作者】 らいねんから、団塊の世代の定年が始まります。若いころは、学生運動で盛り上がり、定年後は、きっとまた独特の存在感を示してくれるでしょう。でも団塊から少し遅れてきた世代としては、団塊の世代の去った後、まるでイナゴの大群が、後になにも残さなかったとかいうようにならないように願うだけです。姥捨て山とは言いませんが、なによりも次の世代を生かすように年を取らなければと自戒しています。
 【選者】 団塊の世代と言われます。問題点ばかりを強調するのではなく、可能性のような部分にも光を当てたらよいと思います。1940年生まれのぼくは、ほんとうにひもじい時代でした。イナゴになろうにも、飛ぶ力もなかったひ弱なヒナの時代がありました。
 
佳作 追い風も逆風もあり秋の空
焼肉の匂いが風に吹かれてた
香田 裕子
 【作者】 暑さからやっと解放されてホッとしたのも束の間、涼しさに冬を予感してしまいそうになりました。おうい、長袖やあい。きょねんは、どんな服着てたっけ。セーターはまだ暑いし、秋物を探さなくっては。
 【選者】 匂いは風によって運ばれます。焼き肉の匂いですって。そうだこんばん焼き肉しよう。
 
佳作 美しい国へと言われ同意する
銀杏と団栗どちらを拾おうか
春日井五月
 【作者】 これからの国の舵取りが決まりました。どんな美しい国になるのかと期待を持って見ていきましょう。人選は、仲良きことは美しきかなとか。秋はこれから美しくなるのですが。
 【選者】 この作者の美しい国とは、どんな、どこの国を指しているのでしょうか。簡単に言葉の上だけで同意をしてしまうと不安が。見えないものを見る心を養い続けていきましょうね。
 
佳作 秋はしり すでに秋刀魚に飽きてくる
トロ箱の秋刀魚 流水の中で叫び
恒川和左子
 【作者】 鮮度のよい新秋刀魚が店頭に並ぶ秋です。塩焼や刺身やイタリアン料理にしたりして、もういまでは食傷気味です。でも無視できない庶民の味方ではあります。
 【選者】 ことし売られている秋刀魚に美味しさが欠けているように、ぼくは思っています。舌の機能が退化したのかと思っています。ともあれ、いよいよ秋が深まってまいります。秋刀魚ばかりでなく、多彩な食材を適宜選んで楽しみましょうよ。
 
佳作 向日葵の朽ちゆくまでを立ち尽くす
生きるとか死ぬとかいちめん曼珠沙華
堀  恭子
 【作者】 日暮れの早くなる時期が、ちょっと切なくて好きです。ひやひやと吹く風が頬を撫でる初秋ですね。
 【選者】 切ないとか淡いとか、秋の夕暮れに思うのは、あらゆる事象が、この季節の現象に結びつくからかもしれません。ぼくは、秋は早寝の時期と割り切るようにして、この《ピッポ DE センリュウ9月稿》を仕上げたら眠ることにしますよ。
 
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□秋で賞 〔こんげつの粗賞〓和尾直筆カードつき〕

■処方箋渡し窓辺で庭眺め     渡辺 鞠子
□院外処方箋のことだろう。この薬局には、小庭にいつも花が絶えないという。お気に入りの薬局なのだろう。
――渡辺 和尾

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※来月も《ピッポ DE センリュウ》《ピッポ DE 50字》などへのご投稿をよろしくね。
………… 【渡辺 和尾】──2006-09-29 22-00



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