「ベートーヴェンとの対話〜ピアノ三重奏曲」

A Dialoge with BEETHOVEN 〜 Kono Fumiaki Trio

《河野文昭トリオ》

河野トリオ

河野美砂子(Piano)/河野文昭(Cello)/四方恭子(Violin)
ルンデの会2005年例会 9月23日(金・祝)15時
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン:
ピアノ三重奏曲 第10番 変ホ長調 「創作主題による14の変奏曲」 Op.44
ピアノ三重奏曲 第11番 ト長調 「カカドゥ変奏曲」 Op.121a
ピアノ三重奏曲 第7番 変ロ長調 「大公」 Op.97
【会場】スタジオ・ルンデ(名古屋市中区丸の内 2-16-7) TEL:052−203−4188
【参加会費:各一日】一般 5,000、ペア 9,000、学生 2,500
 ※一部座席予約可(160席中約50席、学生除く)
【予約、お問合わせ】スタジオ・ルンデ TEL:(052)203−4188
コンサートに寄せて   河野美砂子

今、なぜベートーヴェンのピアノトリオ全曲を演奏するのか
――200年前のメッセージをひもとく

 「クラシック音楽」の良さ、とは何でしょうか。
 それに一言で答えるのはなかなか難しいことですが、「くりかえし聴き、弾くことによって、その良さが徐々にわかってくる。噛めば噛むほど味わい深くなる」ということが一つ挙げられると思います。これはポピュラーミュージックとの大きな違いです。その中で、「室内楽」というジャンルは、「噛めば噛むほど味わい深くなる」という点においては、まさにクラシック音楽の真髄、と呼べるでしょう。
 ベートーヴェンは、ベートーヴェンの生きていた時代(18世紀末から19世紀初頭)の革新者、現代作曲家でした。彼は、一つのソナタを作曲するたびに、必ず「ソナタ」の形式に新しい試みを加え、揺るぎない形式であるはずの「ソナタ」に揺さぶりをかけ、変形し、ついには「ソナタ」を極限まで追いこんでゆきました。その実験曲である一曲一曲を、実際の心として鳴らしていく作業は、暗号を読み解くようなスリルがあります。
 ある一つのベートーヴェンのソナタを弾く時、私は「ベートーヴェンはこのソナタで何を試そうとしているのだろう?」と考えながら練習します。すると、彼のさまざまなメッセージが具体的に楽譜のなかに散らばっているのに気づくのです。時には「そうか、こういうことだったのか……!」と、思わず膝を打つようなこともあります。約200年前に生きていたボン生まれの一人の作曲家が楽譜のなかに残したメッセージを、21世紀の極東に生きている私が読み解くことで、時空を越えて二人が会話しているような気持ちになることはとても面白いことです。
 今回、私たち演奏者の密かな期待は、最後に演奏する「大公」(すごい曲です。村上春樹の「海辺のカフカ」にも登場しました)に行き着くまでの、ベートーヴェンの実験を検証することです。あの名曲は、或る日突然完成されたのではなく、それまでのさまざまな試行錯誤があの曲に結晶していったのではないか。河野文昭のお話も交えて、それを聴衆の皆さんと具体的に体験できることをたいへん楽しみにしています。
出演者プロフィール

四方恭子(しかた・きょうこ)

 神戸生まれ。東京藝術大学在学中に、第47回日本音楽コンクール(毎日新聞社・NHK共催)入選。第1回霧島国際音楽祭に東京ブラームスクヮルテットとして参加し、霧島国際音楽賞を受賞する。第15回民音室内楽コンクール第2位及び斎藤秀推賞受賞。ドイツ国立フライブルク音楽大学に留学し、ヴォルフガング・マルシュナー氏に師事。師のアシスタントも務める。
 1982年シュポア国際ヴァイオリン・コンクール第1位。85年エリザベート国際コンクール入賞。90年ケルン放送交響楽団第1コンサートミストレスに就任した。
 これまでに同団とバルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番、第2番他を録音その他、フランクフルト放送交響楽団、ソフィア・フィルハーモニー、スロヴァキッシュ・フィルハーモニー、NHK交響楽団、札幌交響楽団、京都心交響楽団などと、ソリストとして共演。またリサイタル、室内楽演奏会でも様々なパートナーに恵まれ、97年ケルン・ムジークトリエンナーレではアンドレ・プレヴィンとピアノトリオを演奏。98年1月には、既にCDにもなったイザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を新たにケルンで行い絶賛を博す。オホーツク音楽祭、霧島国際音楽祭、サイトウキネンフェスティバル他に参加し、内外の優秀な音楽家達と共に講習会や演奏会を行っている。現在「アフィニス夏の音楽祭」では音楽監督を務めている。
 活発な演奏活動のほか、京都市立芸術大学音楽学部助教授、東京蕪術大学非常勤講師として後進の指導にもあたる。

河野文昭(こうの・ふみあき)

 兵庫県立神戸高校在学中にチェロを始める,京都市立芸術大学にて黒沼俊夫氏に師事。
 1982年に文化庁在外派遣研究員として渡米、ロスアンジェルスにてG. ラルーに師事,83年渡欧、ウィーン国立音楽学校にてA. ナヴァラに師事。1984年11月、日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会にてフィンランドの現代作曲家コッコネンのチェロ協奏曲の日本初演を行った他、大阪フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団など多くのオーケストラと共演する。アンサンブル of トウキョウ、紀尾井シンフォニエッタのメンバーとしてニューヨーク・バッハ・モーツァルト・フェスティヴァルの参加を始めとし、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、オーストリア等で公演。
 ソロリサイタルとしては、81年デビューリサイタルを大阪で開催。以降、東京、京都、福岡、広島、神戸、静岡等各地で行う。91年〜95年の5年間にわたり<河野文昭ワークショップ>と題し、毎年二晩ずつ異なったプログラムでの演奏会を京都で開催した。
 2004年5月には、ベリオの「セクエンツァXIV」(Cello solo)を日本初演した。
 室内楽においては、パーヴェル・ギリロフ (pf)、ローラン・ドガレイユ (vn)、ウルリッヒ・コッホ (va)、ゲーリー・カー (cb)、ヴォルフガング・シュルツ (fl)、インゴ・ゴリツキ (ob)、コチアン弦楽四重奏団、パノハ弦楽四重奏団等、海外のアーティストと多数共演。98年より静岡音楽館(AOT)のレジデントカルテットのメンバーとして、現代音楽も積極的に加えたプログラムでの活動も始めた。
 1981年第48回目本音楽コンクール(毎日新聞社・NHK共催)チェロ部門第一位。86年京都市芸術新入賞を始めとし、87年京都府文化賞奨励賞、2004年京都府文化賞功労賞等、受賞多数。
 現在、東京蕪術大学助教授、愛知県立芸術大学講師を務める。
 ルンデの会例会には、1985年(共演:上村昇)、87年(共演:河野美砂子)、90年(共演:河野美砂子、共演:上村昇ほかによる四人のチェロ)で来演している。

河野美砂子(こうの・みさこ)

 京都市生まれ。京都市立堀川高校音楽科、京都市立芸術大学卒業。その後、井上直幸に師事。1982年渡米、ロスアンジェルスにて J. ベリーに師事する傍ら、P. ニューバウアー(元ニューヨークフィル首席ヴィオラ奏者)と共にカリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ各州にてコンサートツアー。83年〜84年ウィーン国立音楽学校のE. ウェルバ教授の歌曲伴奏のクラスに通う一方、フライブルクのE. ピヒト=アクセンフェルトのもとでさらに学ぶ。
 85年帰国後、ソロリサイタルシリーズ(シューベルトとシェーンベルク)を5年間に渡り開催、95年および96年には、そのまとめとして二晩にわたる連続リサイタルを、京都、大阪、東京にて行った。室内楽の分野では、内外のソリストとの共演の他、ベートーヴェン「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」全10曲、同「ピアノとチェロのためのソナタおよび変奏曲」全8曲等をシリーズで演奏した。その他、オーケストラとの共演、通奏低音など、広い分野での演奏活動を行う。フォルテピアノにも興味を持ち、シューベルトの室内楽演奏会を開催した。
 88年淡路島国際室内楽コンクール優秀賞。大阪音楽大学大学院(室内楽)、京都大学医療技術短期大学部(芸術学)各非常勤講師を経て、現在、京都市立芸術大学音楽学部非常勤講師。音楽とは別に短歌にも興味を持ち、92年、搭短歌会に入会、95年第41回角川短歌賞受賞。04年、第一歌集『無言歌』を刊行。同歌集により、第5回現代短歌新入賞受賞。


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