永野英樹 プロフィール |
永野英樹は、1968年名古屋の生まれ。
5歳からピアノを始め、12歳でPTNAヤング・ピアニストコンペティションC級金賞及び日本テレビ賞を受賞。15歳で、毎日学生コンクール中学生の部全国第1位となる。
84年、東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、87年東京芸術大学音楽学部ピアノ科へ入学。同年、PTNAヤング・ピアニストコンペティション特級首位、文部大臣賞を受賞する。
88年、パリ国立高等音楽学院(コンセルヴァトワール)ピアノ科並びに歌曲伴奏科へ入学。90年には同音楽学院歌曲伴奏科を一等賞で卒業し、次いで翌91年、同音楽学院ピアノ科を日本人男性で初めて満場一致の首席で卒業。92年には、同音楽学院室内楽クラスも一等賞で卒業、以後、パリでの定期的な演奏会をはじめ、フランス国内はもとより、モスクワ、ロンドン等で活動する。
95年10月、ピエール・ブーレーズが主宰するアンサンブル・アンテルコンタンポランのソロ・ピアニストとして迎えられるという、日本人初の快挙を成し遂げた。また、97年のサントリー音楽財団サマーフェスティバルで、演奏不可能と言われているクセナキスの「ピアノと86奏者のためのシナファイ」を見事に演奏したことは、今もなお語り草になっている。
しかし、決して現代作品だけを演奏するのではなく、永野英樹のレパートリーは、古典から現代まで大変幅広く、そのため「日本のポリーニ」という呼び声も聞こえている。
これまでに、播本三恵子、伊達純、フランスでは、ピアノをジャン=クロード・ペヌティェに、伴奏をアンヌ・グラポツトに師事。
受賞歴としては、マリア・カナルス国際コンクールメダル受賞(90年)、モントリオール国際音楽コンクール入賞(92年)、第1回20世紀ピアノ音楽国際コンクール入賞。サンソン・フランソワ特別賞受賞(94年)、村松賞(98年)、出光賞(98年)、99年度ショパン協会賞、等。
CDは、「20世紀フランス音楽作品集」(日本、フォンテック=写真)、「アンタイル作品集」(フランス、アゴン)をリリース。最近ではデンオンから「ロシア&フランス現代ピアノ音楽の系譜」(プロコフィエフ、ミュライユ、メシアンを収録)が発売され、そのピアニズムを絶賛されている(次項参照)。
現在フランスを拠点に活動しているが、日本へは年2回帰国し、精力的にコンサート活動を行っており、朝日新聞や日経新聞などで高く評価された。2000年5月には、読売日本交響楽団の定期公演に、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」のピアノ奏者として、乞われて来日、ルンデの会例会にも登場している。
世界と互角に勝負できる久々の大器。
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モーストリー・クラシック誌 CD評(2000年6月号) |
『毎日学生コンクールの中学生の部で優勝して以来、その将来が期待されたアーティストだが、パリのコンセルヴァトワールヘの入学が、彼の類まれなピアニズムを開花させた。音そのものの機能性や構成美を追及した二十世紀の音楽で、永野の研ぎ澄まされて美しく結晶したピアニズムは最大級の賛辞を得ることになったのだ。ロシア・モダニズムの旗手、プロコフィエフと、今世紀後半のフランス音楽を決定づけたメシアンーミュライエ師弟の作品とで構成されたこのアルバムに、現在の永野のベストを聴くことができる貴重な一枚。だが、内田光子も絶賛したという彼のキャパシティは、なにも現代音楽に留まるものではあるまい。時にみせる陰の濃い音楽の表情に、このピアニストが隠し持つ、もうひとつの「顔」をほのめかしている。』
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現代作品に知的で熱い解釈 読売新聞評(2000年8月3日朝刊) |
パリ在住のピアニスト永野英樹が、故郷の名古屋でリサイタルを開いた。
世界屈指の現代音楽演奏団体アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーであり、パリで演奏すれば「ヒューヒュー」と口笛交じりの喝さいを受ける永野だが、名古屋でもかなりの人気だ。
その魅力の第一は音色にある。最初に弾いたフォーレの『舟歌』で、すでに千変万化の色彩美が広がった。柔軟でしなやかな動きで丁寧に音楽を奏でていく人であると同時に、唐突に響きを断ち切ったり、骨太の和音を雄々しく立ち上がらせたりして、瞬間瞬間を無駄なく積み重ねていく。そして何より、現代の作品に対しての知的で熱い解釈がうれしい。
パリでも幾度か永野の演奏に触れる機会があったが、今回演奏した、トリスタン・ミュライユの『別れの鐘と微笑……』と『ラ・マンドラゴール』では、特に永野の美質が冴えた。響きの中の、ほんの小さな部分要素にまで細心の注意を払い、打鍵の瞬間から残響による長い残像のおしまいまでを完ぺきにコントロールして、やや複雑ではあるが明確な方向性をもって突き進むミュライユの音楽を立体的に立ちあげていったのである。メシアンの『鳥のカタログ』からの一曲、「灰色のダイシャクシギ」においても、動き、色、重力など、視覚的で映像的とさえ言えるような強烈な印象を築き上げていった。
後半の曲目、シューベルトの『ピアノソナタ第20番』では、さすがに音色の構成力のみで押し通すことはできなかったが、解釈次第、演奏次第でいかようにでも変容しうる古典的名曲と真摯に対峙し、現代的で個性的な世界を膨らませることのできる永野のイマジネーションは、現代作品に向かう時と同様に、端々しく官能的な時空間を開いていった。
(作曲家・水野みか子 7月22日、スタジオ・ルンデで)
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2000年7月例会アンケート抜粋 |
○ミュレイユは初めて聴きました。今世紀前半のヨーロッパ芸術の流れを確実に実感させるものでした。音楽美術の世界での自然への回帰を予感させる曲でした。メシアンは久しぶりにコンサートで出会いました。永野君のメシアンをもっと聴きたい。今に生きる者として、同時代の作曲家の仕事を音にする活動をぜひ積極的に行なってください。今日はありがとう。【K. K.】
○すばらしかった。あなたの賜物とご家族の祈りが形となって、見い聴くことができ、とても豊かになりました。神さまと対話しながらひいておられるように見ました。新しい現代の曲とフォーレとシューベルト、本当によかった。祝福をお祈りします。【Y. M.】
○永野英樹さんというピアニストは、私にはとても不思議な人で、同じ1968年生まれの32歳日本人男性ということもあるのか、何回か演奏会を拝見し、CDも聴かせていただいて、いつもピタッとくる何かがあるんです。例えばプロコの戦争ソナタなど、アルゲリッチやホロヴィッツの演奏も聴いているのですが、やはり永野さんの演奏がピタッとくる。まるで自分自身が弾いているような、ピタッとくる感じなんです。やはり永野さんもドラえもんを愛し、「宇宙戦艦ヤマト」、「銀河鉄道999」、「ガンダム」を愛好した少年時代を過ごされたのでしょうか。
今日はシューベルトを聴きに来ました。まさか永野さんがシューベルトをやるとは想像だにしませんでした。それだけに楽しみでもありました。聴いてみてまず連想したのは、セル指揮クリーヴランド管弦楽団の「音」です。音質といい呼吸といい、この楽団特有の「臭い」を感じたんです。そこにはブーレーズもカブっていたかもしれません。肉厚のある、ロマン派のベートーヴェンを感じさせる演奏であったように思えます。第2楽章は「演歌」を感じました。日本人が弾くとみんなこうなる……わけありませんが(笑)。
何やかんや言って、一生聴き続けるピアニストになるでしょうね、永野さんは。今度はショパンかベートーヴェンが聴きたいな。【H. M.】
○CDを聴いて、びっくりして、大阪から来ました。今夜は素敵な音楽会でした。今後のご活躍を!! 応援しています。【Y. I.】
○透明で力強い音に感動しました。音が光の玉となって飛び交うのを見るような思いでした。立派なピアニストにめぐり会えた喜びにひたりました。【N. N.】
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