○良い時間を過ごせた 【E. M. 】
 1985年5月のバッハチクルスから会員になり、1年後豊橋へ引っ越しても続いて21年余り(その前に2度程聞きに行ったようですが)、とにかく最初から最後までド素人で楽しみました。
 チクルス以後の前半10年位はそうは行かなかったようですが、CDを何枚も買うより、生の演奏を1回聴く方が良いと、遠い道を通いました。ついでに名古屋をあちこち訪ねられるし、物も溜まらないしと思いつつ。
 だから、閉じる話を聞く1年前位からは、いつまで通える事だろうか? 死に方と同様、ルンデへ来る事を止めるのも自分の意思次第というのは辛いなあと思ったものでした。

 オルガンから始まったクラシック音楽への関心も、チェロ、チェンバロ、ピアノ、ヴァイオリン……と色々な楽器とその音楽に広がり、他のコンサート会場にも行くようになりましたが、やはり、ルンデが一番良いと思いました。

 タチアナ・ニコライエワが何故か好きで、『鏡の国のアリス』の「白の女王」みたいと勝手に親しんでいました。二夜連続の時には松葉杖をついていたので、近くに宿をとり車で訪れた事が忘れられません。その後亡くなったので、行って良かったと思っています。
 又、ルージチコーヴァのチェンバロは、死につながった母の入院で行けなかったという事で忘れられません。

 良い時間を過ごせた事を感謝しています。


○ルンデにのめり込んだ 【M. M. 】
 私が初めてルンデで聴いたコンサートは、1986年5月のウィーン・アカデミー・アンサンブルだったと記憶しています。受付にしばらくポスターが張ってあったと思います。
 それまでも、その後もしばらくはバイオリンやチェロ、あるいは弦楽合奏を中心に聞いていました。和波孝禧さんの温かな響きと語りの楽しさ、幾つかの弦楽四重奏を楽しんでいましたが、林峰男さんのチェロに圧倒されて、そのまま会員になってしまいました。それからは会報の記事や会員の方々の意見や評価などでいろいろ学ばせていただきました。

 弦以外のコンサートにもたまには出かけてみるようになり、小林道夫さんや舘野泉さんを知りました。それまでピアノやギターの淡々とした音色は聴いてもあまり落ち着かなくて、じっくり聴こうとしていなかったのですが、ルンデの音響とピアノの響きとが上手く調和していたのか新しい感動がありました。そして、タチアナ・ニコライエワさんに出会って温かな音色と人柄?が気に入ってルンデにのめり込んでしまったような気がします。
 バルトークカルテットも何度か楽しませてもらいました。時につまらないと感じるほどの緻密な演奏でしたがやはり弦はいいなぁーと気分良く帰りました。

 20年間のルンデの演奏家で、もう1人忘れられないのが諏訪内晶子さんです。パンフレットの写真が可愛いらしかったのと、ちょうど時間が空いていたのでふらっと出かけたんですが、バイオリンのテクニックと迫力に少し驚いて、若いのにすごいなと感心しながらも少し写真うつりが良すぎるかなと帰りました。その半年後にあんな事になるとはもう驚きでした。

 あとルンデのお蔭で、ハーモニカの崎元譲さんやアコーディオンの御喜美江さんや打楽器の吉原すみれさんの演奏を知ることになりました。あえて自分からは聴こうとは思わなかった世界でした。その後は時々出かけるようになりました。

 何といってもルンデが気に入ったのは、オーナーの演奏(または演奏家)に対する思い入れと、スタッフの方々の細かな気配りに感激してしまいました。実はつい最近まで、家族や親族そして近所の親しい方だとばかり思っていました。二宮さん以外は名前も知りませんでした。そういえば二宮さんには演奏会の度にいつもポケットベルを預けていました。小児科医をしていましたので、いつ連絡が入るか心配しながら聴いていました。とりあえず、始まる前に病棟に電話して2時間ほど連絡しないように断ってはありましたが。こんなですから前もってチケットを買っておくことはほとんど出来ません。当日、あるいは直前に電話して聴きに行けるなんてルンデくらいでしょう。そしてほとんど裏切られないし、CDにサインをしてもらえるし、この先どうすればいいんでしょう。時代が進んで携帯電話になると留守電機能を覚えて、スイッチを切っていても確認できるようになりましたので預けなくてもよくなりました。ありがとうございました。

 最後に、これからも機会があればまた選りすぐりの演奏家の演奏を聴かせてください。せめて記念日には小林道夫さんのあのチェンバロを聴かせてください。最初で最後の感想です。
 25年間(私は20年間でしたが)ありがとうございました。そしてご苦労様でした。感謝。


○快適な音楽空間だった 【J. O.】
 私がルンデに初めて来たのは、1985年の8月末に行われた渡邊順生さんのオールナイトバッハだったと思います。元々バッハが好きだったこともあり、オールナイトなどというちょっと変わったコンサートに魅かれたのがきっかけになったものです(思えば、若くて体力がありました)。
 このような変わった企画もあるし、落ち着いたホールがとても気に入ったのですが、その秋から外国に行ったためルンデの会への入会は帰国後の1987年正月となりました。その正月の小林道夫さんのゴールドベルク、夏のオールナイトなど、一連のゴールドベルクシリーズなど、思い出深い演奏会は枚挙にいとまがありません。
 その頃参加した演奏会はほとんどバッハの曲のものでしたが、いつだったかバッハ以外のプログラムの演奏会に行った時に、鈴木さんから「バッハでなくてもいいんですか?」と言われたことが記憶に強く残っています。(本当は、モーツァルトもブラームスも、その他のいろいろな作曲家の曲も好きなんですが……)
 夜にも仕事の入る日が多い身として行きたくてもいけない演奏会が多かったのは残念ですが、時間が確保できて体調もOKの時に、当日電話して参加できるルンデの演奏会はありがたいものでした。
 また、演奏会に来ている方々も、大部分の方は音楽を深く理解し聴衆として良い音楽を楽しむことに徹していることが感じられ、実に快適な音楽空間が形成されていたと思います。
 会員でありながら全くルンデに来られない年もありましたが、それでも会員であり続けたのは、このような音楽を楽しむ場が続いていくようにとの思いからでした。
 今回ルンデの会が閉じられるにあたり、「惜しい」という気持ちがどんどん強くなってきました。確かに室内楽ホールは出来てきましたが、演奏家にとって最も表現したいものを出してもらうコンサートというのがどれだけあるのでしょうか?