○さらばルンデよ 【T. T. 】
 さらばルンデよ。愉しかりし年月よ。

 25年に深い感謝をこめて。


○心の支え 【M. T. 】
 1989年4月末に、初めてルンデに行った時のことは今でもはっきり覚えています。
 午後3時の開演だったと思いますが、午後1時ごろ到着してしまいまして、外から中の様子を恐る恐る覗いていました。今だと怪しい人と間違われ職務質問されたかも……。それまでの私のイメージは「小ホール+室内楽+ワイン+ヨーロッパ料理=高級贅沢」でしたので、この恐る恐るになったわけです。
 演奏者はバルトークカルテットでした。最前列の真ん中に陣取り、演奏が始まって5分も経たないうちに、この席に座ったことを後悔し始めました。曲はバルトークの1番だったと思いますが、バイオリンの激しく擦れる音が気味悪く、居心地の悪い時間を過ごしたことが今では懐かしく、滑稽に想い出されます。
 その後、1991年からバルトークカルテットが来演する度に懲りもせず足を運んでいました。
 その頃の我が社は、揺れ動いていまして、会社分裂、経営の危機に立たされていました。そんな時に素晴らしい雰囲気の中で心に沁みる演奏を聴き、明日への希望と活力が湧いてきて、心の支えとなったことは一生忘れられません。

 またルンデのおかげで、弦楽器の素晴らしさを体感できました。こんな環境で聴けるならどんなジャンルの音楽でも楽しく聴けるんだと思いました(勿論オーケストラ以外です)。
 ほとんど予約なしに当日ふらっと聴きに来て、凄い演奏に出会ったことは数知れず、得した気分で帰ったものでした。

 幕を閉じてしまうのは大変残念なことですが、こういう場所が名古屋にあったんだということを誇りに思い、感謝の意を込めて「ありがとう」と「ごくろうさま」を言いたいです。


○音楽に集中できるホール 【C. A.】
 とても、音楽に集中できるホールでした(ルンデに慣れると他の会場は広すぎて集中できないことがある)。また、リュート、チェンバロ、ピアノフォルテ、バロックヴァイオリンなど、ルンデに来たからこそ聴けた演奏がいろいろありました。会員になって十数年、楽しかったです。

 ルンデで聴いたコンサートの中でも、もちろん最後のバルトークや小林道夫さんの演奏は素晴らしかったのですが、それ以外で私なりに印象に残った演奏を三つほどあげてみます。

 まずは、ニコライエワさんのゴールドベルク。
 演奏前にニコライエワさん自身が「私は25番目の変奏曲が、最も大事な曲だと思う」とおっしゃっていたことを今でも覚えています。25番目の変奏曲は曲全体の中でも地味で、眠くなりかねない曲だと思うのですが、あのときの25番目の変奏曲は、ゆったりしたテンポでありながら全く抜ける部分がなく、『この曲はこんなに印象的な曲だったのか』とつくづく思ったものでした。あれから何回かゴールドベルクを聴きましたが、25番目の変奏曲だけは、あのときを超える演奏には出会っていません。

 次にコントラバスの河原さん。最初は何となく聴いてみようと思って出かけたのですが、あの大きな楽器の弦を隅から隅まで鮮やかに使っての演奏に圧倒されました。その後、再度聴きに行く前に、知人に「コントラバスのソロを聴きに行く」と言ったら、「地味だね」と言われましたが、あの弾き方を見たら、地味どころか聴き応えも見応えもあるコンサートですね。

 最後に、昨年のタンゴの演奏会。文句なしに楽しい演奏(しかも演奏者が皆なかなか良い男)。私はルンデのコンサートというと、時間が空いて気が向いたときに、思いつきで1人で出かけることが多かったのですが、あのときばかりは『誰か誘えば良かったかも』と思ったものでした。

 以上、思いつくままにあげてみましたが、ルンデは思い立ったときに気楽に聴きに行くことができたのがなによりでした。楽しい十数年でした。