○すばらしい空間 | 【H. T. 】 |
開演前のルンデに一歩入ると そこは異様に靜寂でした
世間の義理を全て削ぎ落して 唯一途に音樂を求める
洋の東西を問わずルンデで聴く若い演奏家は皆真摯で
皆の出すアンケートを一字一句添削する事無く会報に載せられるのも
六十才を過ぎてからルンデを知りそれから十五年間 感謝感謝です |
○ルンデで学んだ…… | 【M. A. 】 |
日本の室内楽界に大きな穴があいてしまいました。この小さな空間で演奏された音楽は現代日本で聴きうる最高のものであったことは間違いありません。高度な企画内容、演奏者との親密な距離感、熱心で集中力の高い聴衆、どんな高価な再生装置もかなわないリアルな音響、どれをとってもかけがえのないものです。ここがなければ私はこれほどの室内楽ファンにならず、クラシック・ファンとはいえせいぜいオーケストラ・ファンにとどまっていたでしょう。ソロからアンサンブルにいたるさまざまな演奏形態の楽しみや、邦人演奏家の高い実力、録音もないような珍しい作品や作曲家の名品、ここで教えてもらったものは数知れません。 一例をあげれば、10周年のころに岡山潔さんのアンサンブルで聴いたフランクの四重奏の名演。実は大名曲なのにCDは少なく、その後生で聴く機会などは絶えてありません。そういう曲が名演で聴けるのがルンデであったのです。そのほか、モラヴィアQのノヴァーク、ホーソンQのシュールホフ、バルトークQのドホナーニ、クロード・エルフェのブーレーズ、中村攝のルビンシテイン、ニコライエワのチャイコフスキーのソナタなどなど、東京でも聴けないような贅沢を何度味わったことか。
公開レッスンや終演後に演奏者と触れ合えて、音楽の人間的側面に対する理解を深めさせてもらえたことも忘れられません。 また鈴木さんのご紹介で亡き岩城さん指揮のアンサンブル金沢の演奏会にたずさわらせていただき、さらに東京で浜離宮朝日ホールに勤務する上での基礎的素養を養っていただきました。そして、浜離宮朝日ホールで行ったバルトークQによるバルトーク全曲は、ルンデと鈴木さんとに対する感謝とオマージュのつもりで企画しました。いつもの朝日ホールと違い、まるでルンデのように熱心なお客様が集まったのは我が意を得たりという感じでした。ルンデでバルトークに出会えなければこういう演奏会は考えられないものでした。
ルンデの例会のような演奏会はもうどこでも味わえないかもしれませんが、私はルンデで学んだいわば「ルンデ・シューレ」の1人として、本物の室内楽を大切にしていきたいと考えています。 |
○これからどこへ | 【Y. H.】 |
長い間、素晴らしい空間と時間を提供して下さりありがとうございました。 ルンデで過ごさせていただいた時間は幸せな時間であり、聴かせていただいた音楽は私の何よりの宝物です。 ルンデがアットホームな場所であることは、初めて訪れた時(平成元年6月の和波さんのリサイタル)から感じられましたが、演奏会場としてほんとに素晴らしいと認識したのは、数年前のことです。 ヴァイオリンのソロを、市民会館大ホールに聴きに行きました。きれいな音色でした。だけど、何か違う、何か物足らないと感じ続けていました。そして、はたと気づきました。ルンデで身体中、音楽に浸る聴き方をしてきたからだ、大ホールでのソロは一方向からしか音がこない、その違いだ、と。ソロリサイタルはルンデに限る、ルンデ以外は行くまいと決心しました。
リュート、チェンバロ、フルートの無伴奏……etc. はルンデならでの企画だったと思います。 ルンデの閉幕、「これからどこへ音楽を聴きに行けばよいのでしょう」。 |