●いまさらどうでもいいことか……
ともかく「あの事件」以来気が滅入ってしょうがない。それに追い打ちを掛けるような日本政府の対応……。
そんな中で、これはもう本当にどうでもいいようなことなのだが、またしてもテレビが発するニホンゴの問題にひっかかる。
あなたはこれをどう発音しますか?――『陰陽師』 オンミョウジ――
テレビのコマーシャル予告編では、堂々と『浅草寺』『法隆寺』と同じイントネーションで宣う。だがこれは『講釈師』あるいは『放蕩児』と同じ発音が適切だと思う。一体どこから前者のような発音が可能になるのか? 毎度のことながら、原稿を貰って読む人は、その発音を耳から聞いた者がどんな「文字=意味」を想像する可能性があるのか思いやったことがあるのか、不思議千万である。
因みに音楽の世界では、学習の段階で音楽力を試す方法として「初見演奏」が用いられる。演者が初めて目にした楽譜を演奏して、聴き手に彼の手にある譜面=音楽を作曲者の意図に沿って正しく想像させ得る(ウルと発音する。いまはもっぱらエルようだが)かどうかを試すのだ。
ニホンゴの崩壊と日本人の精神構造の変貌が同時進行しているように思われてならない。……これも要するに取るに足らぬ愚痴ではある。
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