Weekly Spot Back Number
Apr. 2001


83  ルンデ、いよいよ満20歳 4月 2日版(第1週掲載)
84  【欠】 (4月 9日版)
85  総裁?総理? 4月16日版(第3週掲載)
86  これが「文化」の差なのか? 4月23日版(第4週掲載)



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 2001年 4月第1週掲載

JPEG 画像,60×63 ピクセル ●ルンデ、いよいよ満20歳
 ルンデが誕生して20年が経過しました。人ならば立派に成人して、ひとり歩きしなければならない年齢です。しかし残念ながら現実のルンデは、経済的にはひとり歩きどころか、まだまだ親のスネを噛らなければならない存在なのです。ルンデにはふかふかの絨緞も、豪華なシャンデリアも無縁です。ハゲちょろけた壁と擦り切れたマットしかありません。例会には綺麗なチラシも豪華なパンフレットも用意されてはいません。しかしながら『合理化は徹底するけれど、音と音楽を大切にする努力は惜しまない』という開設以来のモットーは頑なに守り続けて来ました。

 振り返ってみると、20年前の4月25日、ルンデ・オープンのお披露目の挨拶に、『人口200万の名古屋に、200人位が集まれるルンデのような所が10や20あってもいい筈』と述べました。それぞれが個性のあるポイントとして機能すれば、それだけ音楽好きな人達の選択肢が拡がって楽しいだろう、と。でもその願いは、いまだ叶えられているとは言えません。
 そして、それまでのホールの常識を破った「単一目的のホール」ルンデの誕生自体は、それがホールと呼ぶにはあまりにも「ささやかな器」であったためか、当時マスコミの関心を全く引きませんでした(そして当然その後も、その「中身」もまた不問に付されました)。その後数年たって企業系の小ホールが出来た時は、それが「公のホール」として(ご承知のように、万事個人よりも団体・企業が重視されるお国柄です)今度は大きく注目されました。それでも「小ホールもいいが、ホールがマイナーだと(要するに小さいと)音楽もマイナーになる(スケールが小さくなる)おそれがある」と見当はずれなお説を宣う某著名評論家氏や、「小さなホールなら、安価にコンサートが出来て、いい」という、これまた全然判っていないマネージャー業さんのインタビューが堂々とテレビ放映される始末でした。
 それからバブルに踊らされた「クラシック俄か景気」の時代が訪れ、それまで一般的には見向きもされなかった室内楽を初めとする「特殊なジャンル」にも、やっと陽が当たり始めました……。
 でも、そのバブルが去り、「不景気」風が世を覆おうようになった今、各地の公共ホールの中にはそれでも「公的資金」に支えられて意欲的なプロデューサーが腕を振るっているところも見られますが、全体として、コンサートの客席の方はなんだが20年前に戻ってしまったかのような印象すら覚えます。

 ともあれ、20年、皆さんに支えられてきたルンデに、それらしき「成人式」をパッとやってやりたい気もしないではないのですが、それよりやっぱり……と考えて、4月25日の「開館記念日」には『ルンデの最も良き理解者』のお一人である吉原すみれさんを例会に迎え、ささやかなお祝と感謝の意を込めたルンデ特選ワインを味わって頂くことにします。是非ご参集を!

※この文は、ルンデの会会報2001年4月号「編集後記」を引用、一部改訂しました。


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 2001年 4月第3週掲載

Teddy●総裁?総理?
 2年半ぶりに18日間の休暇を取って、ドイツへ行って骨休めをした。このSPOTの欄は二週間分の手当てだけして、4月9日分は帰国早々に書くつもりだったが、積もり積もった要件の処理に追われて、ついに一回分穴をあけてしまった。
 ところで、三週間経っても日本は、相変わらず政治の世界では政権党の総裁選びに集中しきっていて、国民はほったらかし、社会は惰性で動いているだけの感じなのには、遊び惚けていた身で手前勝手な言い分ながら、やはり失望した。そしてその総裁選にしてからが候補者の「所信表明」には、既得権としてのオラが党の安泰と現状維持のみが正面にあって、総裁即総理の立場に立って国の将来に真剣に想いを馳せる壮大なヴィジョンなど望むべくもない。次の選挙を如何に有利に戦うかだけが最大の命題であって、デカンショ節ではないが「選挙選挙で半年暮らす、あとの半年ァ寝て暮らす」にすら思える。中でも「消費税を下げる」という暴論を吐く仁が現れたのには一驚した。何はともあれ、今後の経済社会では消費税の存在は不可避であり、その税率も10%は覚悟せねばならないことは明白である。むしろその消費税を必要とする積極的な政策を展開して、国民生活を安定させるべく大胆な改革を進める重大な時点にあるにも変わらず、安易に「景気対策」と称する場当たり的な、政策ともいえぬお粗末な試策を並べるしか能がないとは、政権党の面々もずいぶんふざけているものよ、と悪態をつきたくもなるものである。
 それにしても、自分たちの現状と将来を託す一国の宰相を選ぶに、一見民主的手法のように見えて実は一党の派閥主導権争いであるのを黙ってみているだけの立場に置かれることの不合理さを、国民の大半は感じているはずなのだが、新聞や放送と云ったメディアがいやに中立ぶりを発揮した報道しか流さないのはまた大いに不満である。


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 2001年 4月第4週掲載

Teddy●これが「文化」の差なのか?
 18日付の朝刊を開いたら『さくら道バッサリ』という大見出しが目に入った。『国道安全確保で枝打ち』というサブタイトルで『太平洋と日本海を結ぶ「さくら道」の夢を描いた旧国鉄バス車掌、故佐藤良一さんを象徴する岐阜県美並村深戸の国道沿い桜並木が、安全確保を理由に国土交通省によって大幅に枝打ちされた。開花を目前にした桜並木の変わりように、地元住民は「あまりに大胆な切り方でかわいそう」とショックを受けている。』と記事が始まる。『枝打ちは3月中旬、国土交通省岐阜国道工事事務所八幡維持出張所が行った。枝の太さや高さとは無関係に、車道上に張り出した部分がすべて切り落とされた。地上約1メートルで幹から分かれた桜の枝(直径30センチ)が付け根から切られ、地上約6メートルで幹ごと切断された松もあった。』。また『地元住民らは「つぼみの時期に切るなんて…」とやりきれない表情だ。八幡維持出張所は「切り口に防腐剤を塗るなど配慮したが、枝切り時期などの配慮が不十分だった」と話す。』等々とあるのだが、何よりも添えらた写真の生々しい木々の伐り口が痛々しかった。そしてとっさに、二週間前のドイツでの或る情景を想い出していた。彼我の違い、これほど歴然とした対比にお目にかかろうとは……。
 北部バイエルンの小さな街プラインフェルトから北へバイロイトに向かってドライヴしていた時、景色の素晴らしい国道の路傍に立つ楽しい標識が目に入った。大型トラックの荷台にしなだれかかる大樹の枝先が図案化され、通行する車両に道路脇の樹木に対する注意を呼びかけているのだ。なるほどそこから300メートル程の間は、さながら緑のアーチをくぐっているような具合で、大いに心慰められたものである。
 翻って先程の新聞記事。よく読んでみると何となく焦点がボケている。まず今回の出来事は、由緒ある樹木だから問題なのか? 花の咲く直前だからかわいそうなのか? お役所は「時期」に対する配慮が不十分とだけ言っている。これでは単なる感傷論に過ぎない。また「枝打ち」とうのはチョン切りさえすればいいのか?「業者」に伐採を指示したとあるが、それが生きている樹木を扱う専門的な知識を持っているプロなのかどうか? 肝心の新聞は、すべてに対してひどく客観的に話題として取り上げているだけで、記事自体は問題提起にも何にもなっていない。これでは紙面を使う価値もない、単なる井戸端会議のうわさ話の収録に過ぎない。
 『国道安全確保で枝打ち』とブチ上げるからには、そもそも街道筋に植樹することに対しての指針なり規制なりが存在するのか、安全確保の基準とはどんなものか、問題が生じた場合の対応策はどう規定されているのか、等々について然るべく裏付けを取るべきだろう。その上で、住民の感情論を説得するなり、当局の対応に自然を大切にする姿勢のありやなしやを糾すなりして、はじめて社会面を費やすジャーナリズムが見えてこようと言うものである。
 大体植物は成長するものだ。植えるときは黙認しておいて、成長したら邪魔だから切ってしまえ、はないだろう。ルンデの前の道路にも街路樹が植えられている。しかしそれは、落葉の時期になると、ものの見事に幹以外は何も残らない姿――文字通りの丸裸にされる。「剪定」などどいうものではない、ただ単にチョンギッただけなのだ。要は棒杭が突っ立っているに過ぎないその寒々とした光景は、人の心の荒廃を象徴する以外の何物でもないように思われる(しかし、健気にも次の春が巡ってくれば、また豊かな緑に身を装うのだ。その愛おしさよ)。大体植え(ることを計画し)たヤツに、最初から愛情がこれっぽちもないのだから話にならない。ご念の入ったことに、その足元にはツツジの植え込みが作られ、これがまた車道に設置されたパーキングメーターの区画に駐車した車にとってはすこぶる邪魔っけである。メーターの切れ込み以外のドアからは乗り降りも荷物の積み卸しも甚だ困難だ(おまけにその根元は不心得者の格好のゴミ隠し場になっている)。
 もういい加減に、形だけの環境保護や、杓子定規な規則適用はやめて欲しい。今や、人と自然が共存し続けるための根本になる、本当の「文化」とは何であるかを、特に為政者は率先追求して頂きたいものである。

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