未支給年金と所得税

 公的年金の加入・納付記録問題が、連日のように取り沙汰されています。これまで、年金記録が訂正された場合、年金が増額した場合でも時効消滅により直近の5年間分の年金に限って支払われることとされてきましたが、7月6日に施行された年金時効特例法では、過去5年を超えた期間に対応する部分についても全て支払われることとなりました。
 そこで、過去5年を超えて遡及して支払われることとなった年金を受け取った場合に、所得税が課されるかという点が問題となります。
 所得税法上、公的年金は“雑所得”に区分され、公的年金等の収入金額等の収入すべき時期は、支給の基礎となる法令や契約等により定められた支給日とされているとともに、誤謬等により既往にさかのぼって支払われる公的年金等については、「計算の対象とされた期間に係る各々の支給日」による、とされています。
 このことから、過去に遡及して支払われる年金は、実際に年金が支払われた時点の所得となる訳ではなく、あくまでも本来の支給日の属する年分の所得となります。そして、国税通則法では、国税の徴収権は5年で消滅するとしていることから、過去に遡及して支払われたもののうち、本来の支給日が直近5年を超えた期間である場合には、国税徴収権が消滅しているため課税されないこととなります。
 また、公的年金が支給される場合、本来は源泉徴収されることとなりますが、本来の支給日が直近5年を超えている支給分については源泉徴収の対象にもなりません。

(2007.08.27)