中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集
【236】 「【その何か】〜無い物を探す」 2017. 6. 1

これまでのように、扉を作るには再びしっかりした構造の柱を立てなければいけない。しかし、いずれそれも腐って同じ状態になってしまうだろう。
扉を作ったのは、その頃近所にノラ猫が多くいて、彼らが我が家の庭に侵入し、それも時々許可もなくトイレ代わりに使っていたので、その侵入を阻止するためだった。
ノラ猫は以前程は見かけなくなった。(安心しても意味ない?)
この際、作るのに難しい扉はやめるか?(逃げの気持ちが生まれた?)
だが、扉がないと人も通り抜け可能になってしまう。(不安?)
完全に侵入不可能にしなくてもいいが、何か通り抜けるのに心理的抵抗が生ずるような方法は?(こんな都合の良い方法はあるのか?)
こんな事を一週間くらい考え続けていた。

あるとき、いいアイデアが浮かんだ。通路入口に何か物を置き、そこを通り抜けるためには面倒でもそれを跨がなくてはならないようにするのだ。言って見れば心理作戦だ。それでは一体何を置くのか?

それからは仕事帰りや休日にガーデンショップやホームセンターを回り、玄関わきに飾っても〈様〉になるようなオブジェはないかを探す日々が続いた。だが、何を探すのかこれといった当てもないのに、【その何か】を探すのは大変だった。鉢を飾る台、セラミックや陶器製のメルヘンチックな人形、鉄製のフェンス等はあったがどれも好きではなかった。それに一軒の店に【その何か】がそんなに多く置いてあるわけでもなく、探す手間の割には収穫は少なかった。以前、庭に置くオブジェなどを扱っているコーナーがあった店を思い出し数年ぶりに行ってみたが、そこは何とペットコーナに様変わりしていた。
ただ、いろいろ見て回るうちに、【その何か】のイメージがだんだん沸いてきた事だけは確かだった。
ネットでも検索してみた。頭の中の漠然としたイメージに合致するいろな語句を入力し検索した。この方法では、店に行くよりはるかに短時間でいろいろな商品に辿り着く事ができた。

しかし…
人間、欲という物は恐ろしいもので、イメージに近い商品が見つかりだすと、〈もう少し形がこうだったら、、〉〈もっと大きかったら、、〉〈他の色はないのかな?〉等、探せば探すほどだんだん要求が厳しくなってきてしまい、これぞという決定打にはなかなか巡り会わない…。

仕方ない、もう、こうなったら…!
(続く)
( H. N. )

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