中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集
【231】 『幸せを届けるつもりが…』 2016.11. 4

先日、岐阜県の山間部の小学校に、ホルン、ヴァイオリンの演奏者と三人でアウトリーチに行きました。名古屋の4〜5倍はある広い運動場を持つ小学校の周りはすべて山、山、…。そして辺りにはややひんやりした澄んだ空気が漂っていました。その学校の四年生全員、約50名を対象にした音楽の授業でした。校長先生、担当の先生共に音楽を愛していらして、子供たちをのびのび育てている、そんな学校でした。

体育館の一角で子供たちに囲まれて小一時間ほど、演奏や楽器のお話をしました。そして最後には、子供達全員と私達とで合奏をしました。
これは、音楽の先生がJazzの楽譜をリコーダー用に編曲して子供達に配り、この日の為に4月から練習してきたものでした。

まず、皆の前に出てきた四人との合奏でした。私から見えるのは四人の後ろ姿です。ひたむきに、そして無心に演奏している、その後ろ姿をみた瞬間、何故だかわかりませんが、突然うるうるっと、、、。
次には全員のリコーダーとの合奏でした。皆が演奏するなんとも嬉しそうで純真無垢な姿……。吹きながらリズムに合わせて体を揺らしている女の子がいると思えば、男の子たちはあまりの楽しさに笛を吹き吹き体育館の向こうのほうに歩いて行ってしまいました!
私は『何と幸せな……』と思うや否や、とうとう涙腺が崩壊してしまい、楽譜がぜんぜん見えなくなってしまいました。

あの子たちにとっては、こんな体験は、もしかしたら一生で一回かも知れません。こんなにも楽しみに待っていてくれたんだ、と思ったら、胸がいっぱいになりました。
音楽の幸せを届けようと思って行ったのに、幸せをたくさんもらって帰りました。
何度思い出しても、また、(涙)です。
( Y. N. )

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