中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【223】 『ほのぼのとした体験話 1 本がない〜』 2015.12. 2

酷い風邪をひいてしまったので医者へいく事になった。
そして此処はある内科の待合室・・・。カウンターの下には床までぎっしり本が埋まった本棚があり、雑誌や週刊誌等がきちんと収まっている。そして親切な事に、小さな子でも目につきやすいように下の段には子どもの絵本が沢山並べてある。「つるのおんがえし」「ヘンゼルとグレーテル」「アラジンとまほうのランプ」「フランダースの犬」、等が見える。
今、4歳くらいの女の子が母親と共に診察室から出てきた。そして、「つづき、つづきー」と小さな可愛らしい声で言ったと思ったら、本棚の前にしゃがみこんだ。診察前に読んでいた本を探し始めたのだ。あれこれ引っ張り出したり、重なった本の後ろの方も見ているが、どうも見つからない様子。
「○○○の本がない〜」
とその子はやや泣きそうな声で母親に縋り付いた。
「きっと、(今その本を)おともだちが読んでいるんだね」
と母親の答え。
次の瞬間にその子の取った行動、それは・・・

待合室に居る子どもや大人みんなをジロジロ見渡したのだ。しゃがんだまま、首だけ回して……。そう、読んでいる人を捜しているのです! 僕とも目が合いましたが吹き出しそうになるのを堪えるのに必死でした。

おわり
( H. N. )

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