中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【222】 『音程の矛盾』 2015.10.25

今回は Dialogue 「No.251 やはり音階を理解していませんので」へのお答えとします。

非常に難しいご質問、有難うございます(泣!)
曖昧なことは言えませんので明確に分かっている事及び、自信を持って僕が言えることだけを述べることとします。
「ピアノは完全に調律できない」の件。「完全な調律」とは多分この場合、「純正律による完全な調律」を指していると考えられます。本来、人間が持っている感覚は純正律であり、ピアノの調律をこの純正律でしたとするならば完全な調律は不可能です。低音から純正律で調律していくとオクターブ上がった時に、おかしな音程、非常に気味の悪い音程になってしまいます。さらにオクターブ上がって行くと、下の方の音とは全く折り合いがつかなくなってしまいます。
僕は以前、自分のピアノを少しだけ調律したことがありますが、全体をやろうとすると、大変なことになってしまった経験があります。何故なら自分の感覚である「純正律」を知らず知らず使っていたからです。それ以来はあまりに狂ってしまった一部だけを、少しだけ大人しく(笑!)するような事に留めております。
さて、ヴァイオリンなどの弦楽器の場合は、音程は自分で作ります。ですから純正律です。同時に幾つもの音を弾き和声を奏でる時、またオクターブであっても自分で調整するので純正律でも何等問題は無いのです。
ご質問の後半「オクターブ間の各々の音は弦楽器とピアノとで周波数(音の高さ)が違う、ということでしょうか?」
はい、違います。ピアノの「ドとミ」の音程とヴァイオリンのそれとは違うのです。厳密に言えば弦楽器では演奏者によっても違います(◆参照)。また合唱で綺麗なハーモニーを聴き、その音符をピアノで弾いた時、ピアノでは汚いハーモニーになります。合唱は純正律、ピアノは平均律だからです。
大雑把に掻い摘んで述べてみましたが、お分かり頂けたでしょうか?
( H. N. )

◆実はピアノでも演奏者により音程は変化します。それは楽器の構造上からは説明できません。演奏者個人の今演奏している箇所に対する和声感、そして、それを表現するための演奏法、指先の微妙なタッチ及び感覚などにより、ハンマーが弦に当たる速度等が微妙に変わるためそうなるのです。音色の違いもそうして生まれます。

ページの先頭へ