中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【216】 『新しい “音” 』  2015. 3.19

車の運転中にラジオをつけていたら、久しぶりに私の好きな番組『音の風景』を聴いた。日本各地の手仕事や風習など、美しい音や懐かしい音を採取して流す「耳で味わう旅」の番組である。

しかし今回はごく新しい “音” だった。2027年に開業予定の、品川と名古屋の間を結ぶリニア中央新幹線、その一般試乗会の車内の模様である。試乗出来たのは125倍の確率で募集に当選した人達だそうだ。
リニア新幹線
発車後、間もなくはタイヤ走行で、音も振動も今の新幹線と似ているらしかった。ボーとも、ゴーとも聞こえるような音。しかしあっという間に浮き上がり加速して、2分後には一気に時速が500キロに近づいて行く。ラジオを通しての音はほとんど無音となり、列車内のデジタル速度表示を見つめている乗客からは、500キロ到達と同時になんとも言えない歓声とともに。大きな拍手が起こった。子どもたちの驚く声も、、、。

今は名古屋ー東京間が1時間40分、それが後10年ほどで40分に短縮される。完成したら私も乗ってみたくなるだろうが、ヒトは一体、どこまで急ぐのだろう?
ひと昔前に特急や新幹線が登場した時「旅の楽しみが短くなるのに、料金が上がる(乗車時間が短くなって特急料金追加)とはけしからん!」と怒った作家がいたそうな。全距離の9割近くが真っ暗なトンネルで景色も楽しめないとなると、乗るのが楽しい乗り物というよりは、少々我慢して乗る移動手段!、という感じになってしまうかも…‥。
( Y. N. )

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