中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【212】 『 文 楽 』  2014.11.09

以前から観たいと思っていた文楽(人形浄瑠璃)を初めて見てきました。出し物は、前半が時代物の悲劇「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅ てならいかがみ)」後半は明るく楽しい狂言の「釣女(つりおんな)」でした。

釣女

やはり生で観ると迫力が違います。義太夫の語りの節回し、太棹や鼓の音も、とても美しく味わい深い。一体の人形を三人で息を合わせて操りますが、人形の動きは歌舞伎などの人間の踊りや所作と全く同じように情感深く表現されます。時には人形であるが故に人間には出来ないような動きも、する事が出来ます。後半の出し物「釣女」はコメディなので、太郎冠者がとんでもない恰好で釣り竿を振り回したり踊ったりする場面もあり、そこもまた面白いところです。

舞台美術も、人間の芝居の舞台セットをそのまま少しミニチュアにしたような綺麗な作り、人形の顔立ちや着ている着物もそれぞれの登場人物に相応しく丁寧に作り込んであって素晴らしいです。初心者にはところどころ難しい台詞も、舞台袖のデジタルタワーの字幕で助けられました。

文楽は簡単にいえば歌舞伎、狂言、邦楽、操り人形が同時に楽しめるようなとても贅沢な総合芸術、その奥深さはクラシックのオペラに匹敵するのではないでしょうか。ヨーロッパにも人形劇の劇場は沢山ありますが、このような形の伝統芸能は無いそうです。大阪の市長は「文楽劇場のような集客率の悪い文化への予算は削ってしまえ」と主張し、本当に削減されてしまうと聞きました。残念な事です。存続にも育成にもお金や時間のかかる文化だからこそ、国費を投入してでも守って行ってほしいです。

とにかく、堪能しました。是非又観に行きたいと思いました。楽しかったです!

( Y. N. )

ページの先頭へ