中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【205】 『スクリャービンの交響曲』  2014. 6. 15

プログラムに惹かれて、日フィル定演【ラザレフが刻むロシアの魂《Season 2 スクリャービン 3》サントリーホール】を聴いた。
リスト:交響詩 《プロメテウス》
スクリャービン:交響曲 第5番 《プロメテウス》
ラヴェル:バレエ音楽 《ダフニスとクロエ》 第1,2組曲
ボロディン:歌劇 《イーゴリ公》より 「ダッタン人の踊り」 アンコール
指揮:アレクサンドル・ラザレフ
ピアノ:若林顕
合唱:晋友会合唱団
特に楽しみにしていたのは、殆ど聴く機会のないスクリャービン交響曲「プロメテウス」 晩年はニーチェの超人思想にも傾倒していたというスクリャービンらしく、大変霊感の強い作品だった。ピアニストに超絶技巧を要するピアノ協奏曲でもあり、オケもコーラスも難解、“神秘和音” が網羅された曲調は、まるで宇宙語で書かれた美しい手紙のよう、、、、だった。
この「プロメテウス」と全く同時期のラヴェルの作品「ダフニスとクロエ 第1、2組曲」が、休憩を挿んで後半。力強いラザレフの棒は、更に情感豊かな甘美な響きを引き出し、圧倒された。素晴らしいラヴェルだった。

充分満ち足りた気分でプログラムが終了したあと、アンコール曲は、何も言わずごく静かなシンコペーションで始まり。。。。
ボロディン:歌劇《イーゴリ公》より「ダッタン人の踊り」。晋友会のコーラスが心に触れて、思わずウルッと来ました。演奏だけでなく、アンコールを含めたプログラミングの見事さにも、感心したコンサートだった。

コンサート後、指揮者ラザレフ氏が再びステージに登場し、ロシア語同時通訳を介してアフタートークをしてくれた。今秋から始まるショスタコーヴィチチクルスについて、彼を尊敬するロシア人指揮者ならではの話もあり、興味深かった。ひとつ面白い話、スクリャービンやショスタコーヴィチが生きていた旧ソビエト連邦の時代、一晩のコンサートで全く同じ曲を前半と後半、二回演奏するのが流行っていて、それが好まれたそうだ。
ラザレフ氏曰く『例えば、本日演奏した曲目《プロメテウス》も、先ず一回演奏して、、観客はそれを聴き、、そして考え、、休憩でロビーに出てコーヒーを飲み、、今聴いた曲について友人と語り合い、、席に戻ってまたもう一度同じ曲を聴く。。。このようなプロセスを楽しんだのです』
指揮者も団員も聴衆も、ロシア人は思慮深く忍耐強かったのですね。。。
( Y. N. )