中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【191】 『新幹線が苦手なネコ』  2013. 9. 12

今、僕は新幹線車内。数列前の席にはネコを連れたお客さんがいる。
東京駅を発車する少し前、「ミァ〜、ミァ〜〜ゥ〜」と不安げな甘えた声で啼き出した。小さなケージに入れられているんだろうか?啼いては止み、また啼いては止みを繰り返していたが、やがて静まった。
発車してからは車内に響くゴーという音や揺れが怖いらしく、再び啼きだした。しかし少しして慣れたのかそれもやがて治まった。

僕は今、本を読んでいる。

《「制御」という問題は情報意図、伝達意図と【ミァ〜〜】いる。制御出来ない場合とは、それらの意図を【ミァ〜ア〜】伝わってしまう事を意味している。例えば、怒りが抑えら【ミア〜ゥ〜、ミァ〜】に表れる、トランプで良い手【ミア〜ァ〜】声が震える、等である。筆者の知りあい【ア〜〜ミァ〜】には自分で思い【ミァ〜ミァゥ】自慢したい時には、話し出す前に鼻の【ミァ〜、ミァ〜〜ゥ〜】なでる癖の人がいる。》

この際本は閉じ、啼き声を観察する事にした。

一旦落ち着いたネコが再び啼き出すのはどんな時か、また声のトーンはいつ、どう変化するのか等に注意してみる事にした。
鉄橋を渡る時、すぐそばに山が迫っている場所を通過する時は、その度に啼いていたが、何度か通っているうちにそれらにはすぐに慣れるてくるようだった。
そして遂に‥‥

ネコが苦手としているものが分かった!

その1 トンネルが苦手
トンネルに入ると、それまで静かにしていたのに、幾分トーンの高い声でしかも連続して啼き続けるようになる。分かる気もする。トンネルに入る時に一瞬揺れ、窓の外は真っ暗、車内の騒音も大きくなるし、少しだが耳もツーンとする。トンネルから出る時の揺れに反応して、出てからも暫く啼き続ける事もある。

その2 検札が苦手
検札が来た時、「何しに来たー!」と言わんばかりの大声をあげ、啼きかたも今までの不安そうな「ミァ〜ゥ〜」から、どちらかと言うとやや攻撃的な「ギャ〜ァ〜」と汚ないダミ声となった。知らない人が近づいてきたから怖かったのだろう。
検札が通りすぎたらまた静かになった。

こちらは名古屋で降りたがあの列車は博多行き。どこまで行くのかしらないが、もしも新大阪から先まで行くとしたら……、それこそトンネルが多い。まだまだあのネコには試練が続くのだろうか。大丈夫かな……?。
( H. N. )

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