中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【178】 『震災から “見事完全復活” した東京駅!』  2012. 7. 23

仕事がらしばしば東京に行く。昨年の大震災の後、東京駅構内の照明は節電の為に一部を消して暗くしていた。丁度、都内で輪番停電をしていた頃である。宣伝用の照明は完全に消えコンコースも暗かった。店舗の照明も商品が分かる程度に抑えられていた。いつもの煌々とした照明に慣れていた身にとっては少し暗いと感じたが、何度も通う度に慣れた。都内のあちこちの駅のエスカレーターも複数ある場合は一つだけが動いていた。きっと誰もが節電の必要性をひしひしと感じていたはずだ。
しかし、この半年くらいの間に状況が一変した。上京する毎にその節電モードは薄らぎ、つい先日は完全に震災前の照明に戻っていた。消えている照明は無かった。

新橋駅の地下鉄への乗り換え通路には、一辺が一メートル程の四角い太い柱が二〜三メートル置きに何本か並んでいて、その幅ぴったりの大きさのディスプレーが総ての柱に据え付けてある。柱は7〜8本だったと思うからディスプレイの数もそれだけある。高さは人の背程あるので、見た感じは畳一畳程のディスプレーが並んでいる、といった感じ。映し出されている内容はみな同じなので、さながら大型電気店のようである。震災より随分前に設置されたものだが、震災後その電源は切られ真っ黒なディスプレーをさらけ出していた。しかしそれも完全復活し、意味の無い宣伝をギラギラと輝かせていた。
上京した二日前、関西の大飯原発が再稼働した。僕は煌々と照らされた通路を歩いて、原発のある地域の人々に対して申し訳ない思いで一杯になり、居たたまれない気持ちになった。

野田首相に訊きたい!
『あなたは、おおい町の住民を、そして福島の人々を連れて東京駅を歩けますか?
彼らにどう釈明しますか? 幾ら、今の電化製品の消費電力は「昔の○分の一です」と分かっていても、あれだけ明るい照明を見たら彼らは何と言うでしょう。
照明を暗くしていた事で事故が起こりましたか?
一番大事なのは快適さですか? 
東京駅をあそこまで明るくし、電気料金を値上げするのは東電の社員の給料確保のためですか?
自分の足元で、その前に実行する事はあるのではないですか?』

人は便利さに慣れてしまうと中々元には戻れないものです。しかし、一番大切なものと引き換えに便利さを手に入れているとしたら……。
( H. N. )

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