中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【169】 『調・その西洋と日本』  2012 2. 21

今回は、最近 《Dialogue》 に質問された方もいらした、「調」について考えてみました。
西洋音楽は主に、「長調」と「短調」から出来ていますが、それ以外の調、つまり長調にも短調にも属さない“中間調” に匹敵するものが沢山あります。
それが「全音音階」や「旋法(せんぽう)」というものに当たると思います。
「全音音階」は、全ての音程が全音で出来ているもので、近代、ドビュッシーの頃に確立されました。音階が何処から始まっているという概念が無いので、第1音とか第3音というものも存在せず、何調という分類も在りません。音を聞いてみると、長調でも短調でもなく(そう言った意味では無調のようでもありますが、)大変に美しい響きがします。

一方、「旋法」は西洋音楽、日本音楽、世界中の民族音楽にも数多く存在します。

日本では陰旋法、陽旋法,琉球旋法を、よく耳にしているはずです(名前は知らなくても)。柔らかく言えば,”日本独特の節回し”と言えます.例えば誰でも知っている日本古謡「さくら」とか「かごめかごめ」などは,西洋音楽が日本に入ってくる前から我が国に在ったもので,長調でも短調でもなく,先ほど言った旋法で作られています。
さて、「陰旋法(陰音階)」は? と言うと「5つの音からなる日本音階の中に1回半音を含むもの」=「ミファラシレ」(ミとファの音程が半音)です。これを西洋式に無理に言えば「イ短調」と言えなくないですが,やはりかなり違うものなのです。また、あのいかにも明るい沖縄民謡も「ドミファソシ」という琉球旋法で成り立っている訳です。

西洋に目を向ければ,中世初期から16世紀に掛けて発達した「教会旋法」が在ります。ラテン語で歌われる「グレゴリオ聖歌」などがその例です。ドリア、フリギア、ヒポミクソリディアなどなど,名前を聞くだけでも目が回りそうな沢山の種類が在りますが、それが今日の長調,短調の源となっているのです。
(Hide & Yuko)

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