中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【166】 『リスナーの耳』  2011. 12. 22

地下鉄車内でイヤホンしている人をよく見かける。僕も1ヶ月ほど前に試してみた。ただ音楽を聴くのではなく、別の事で利用した。
実際にやってみて分かった事だが、自宅、或は静かな戸外で聴いている時の音量設定では小さ過ぎて全く聴こえないのだ。車内騒音がそれだけ煩いのである。その状態で聴こえる音量に合わせると、駅に到着する頃は車内は静かになるらしく、今度は自分のイヤホンの音量が煩すぎて絶えられない。車内で聴くためにはこまめに音量を調節しない限り不可能だと分かった。しかしそんなことをしている人は殆ど見かけない。となると周囲に音漏れする位の音量を維持し続けるか、全く聴こえないまま我慢するか二つに一つだ。結局、僕は車内で聴くのを止めた。
試しに車内での音量設定のまま自宅で聴いてみると、耳元で大声で怒鳴られているようで耳が痛かったので慌ててイヤホンを外した。(耳が痛い、とはここから来たのだろう。)ただし、それでも外したイヤホンからの音漏れはなかった。ということは、車内で音漏れする位の音量で聞いている人達の耳の状態は、……推して知るべしである。
以前、「ヘッドフォン難聴」という病名を聞いたことがある。専門的にはきちんとした名前があるらしいが、車内のリスナー達がそうならないことを望む。
(H. N.)

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