中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【133】 『ノラとカメ その1』  2010. 6. 12

お隣りさんは大きなカメを飼っている。園児が跨がって乗るミニカー程の大きさである(エッセイ No.124 参照)。天気の良い日には我が家との境の狭い通路と庭を往復するのが日課のようだ。その様子を僕は自宅の仕事机の前の窓越しに見る事がある。

先日も仕事中、視界に何か動くものを感じたのでふと目をやると、なんとカメではなく、以前は真っ白だった(?)と思われるノラが、左側の通路からやって来て庭に入ったところだった。(猫?珍しいな?)と思いながら見ていると、その後ろから大きなカメがゆっくり歩いてきた。
ノラはある場所まで来ると、何か危機感を抱いたように急に立ち上がり、体をいっぱいに伸ばしてフェンスにしがみついた! 丁度、立ったまま腹ばいになったような格好だ。殺気立っているのか目玉を大きく開いている。そして、足は止まっているが上半身だけ動かして右往左往している。丁度、【ニャフラック(ある保険のCM)の猫】のような動きだった。一方、カメの方はその場に止まり、そんなノラには目もくれず、首をもたげたり、草を食べたり……。
だが明らかに、ノラはカメに恐れをなしている様子。

しかしどうやったらこんな状況になるのだろうか?

ノラとカメが通って来た通路は狭く、その端にはカメが外に出てられないようにブロックが二段積んである。ノラが今居る場所まで来る為には必ずここを越えなくてはならない。
もし、ノラがカメを恐れているのなら、その付近にカメが居たはずだからブロックを乗り越えてまで入ってくるはずがない。また、カメが庭に向かって歩いていくのを確認し、その後にノラがブロックを乗り越えたとしたら、僕の視界には、先にカメ、その後ろにノラ、となるはず。しかし実際は、ノラが先でカメは後だった。

そうなると考えられるのは、…… (続く)
(H. N.)

ページの先頭へ