中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【130】 『二羽の雀』  2010. 4. 29

この季節は鳥たちにも新しい生活が始まる頃ですね。さて……

先日の風の強い日、歩道の植え込みに二羽の雀の子がいました。見ていると、どうやら近くにある桜の木の枝に飛び移ろうとしているようでした。数メートル離れたその桜は風上にあり、その上、子供はまだ飛ぶのが下手、となると……。

初めの一羽は旨くたどりつけました。しかし、次の雀の子は、植え込みより高く飛び立ったとたんに、風に流され、その姿勢を保ったまま意図した方向とは反対方向に空中を水平移動してしまいました。そのままだと車道に出てしまい危険なのですが、運よく近くにあった街灯の柱にしがみついて難を逃れました。そして風が弱まった時、何とか植え込みに戻ってきました。

さあ、再挑戦が始まりました。「飛び立つ角度を変え、回転翼の出力を上げ……」と考えたかどうかは知りませんが、何とか先に到着した仲間が待つ、風に揺れている枝にたどりつくことができました。

「ずいぶん遅かったな」
「ゴメン、思ったより風が強かったので……」
二羽で「チュンチュン、チュンチュン」と言い合っている様は、こう聞こえたなぁ。
(H. N.)

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