中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【124】 『カメさん』     2009.11.17

お隣の庭に亀がいる。「借景」? いや「借ペット」として、私は “カメさん” と呼んで “密かに” 楽しんでいる。3,4年前、手のひらに乗るほどだった小さな亀を、天気の良い休日の昼間だけ、ご主人が家から大事そうに抱えて庭へ出して日向ぼっこをさせているのを見た。その頃は失礼ながら、「あんなの飼ってるなんて、相当モノ好きな人だなぁ」って思っていたのだが、今年の夏から毎日庭を歩いているのを見かけるようになり、その存在感に圧倒され、すっかりファンになってしまった。

草食のリクガメの仲間だそうで(調べてみたら多分ケヅメリクガメ)、現在の大きさは優に50センチを超えている。食べ物は、野菜や草。毎朝、季節の美味しそうな野菜が庭に置かれる。小松菜や水菜、キャベツや白菜、たまにご馳走としてスイカや林檎が添えられることもあり、ゆっくりむしゃむしゃと食べている様子もなかなかユーモラスである。
お隣の敷地との境に丁度 “カメさん” が散歩できる通路があり、そこを時々歩いてくるので、フェンス越しにうちの玄関の横に姿を見せてくれることもある。伴奏合わせやレッスンにいらっしゃる方が遭遇すると、「わー!大き〜い!」の次に「かわい〜いですね〜!!」っと、一瞬にして魅了されてしまう。

essay_124.jpg カメだから動きは遅いし、声を発するでもなく、笑うわけでもなく、いつも飄々としてマイペースである。ある時は庭の石に体を持たせかけて日がな一日甲羅干しをし、おもむろに空を見上げたかと思えば、30秒くらいたってやっと、パチ・・パチ・・とゆっくり瞬きをしたり、またある時は散歩の途中でふと立ち止まって目の前の雑草を無心に食べたり(これがホントの道草を食う?)、見ているとなかなか飽きない不思議な生き物なのだ。
寒さに弱い動物らしく、この11月の冷え込みで残念ながら再び家の中に収容されたようだ。会えなくなって寂しいが、また多分来年暖かくなったら会えるのが楽しみである。

ニヤッと笑ったりしない代わり、辛そうな表情は見たことないし、ちょっとした障害物なら眉間にしわも寄せず越えてゆく、疲れたら少し休み、時々道草を食って気晴らしする・・・

サウイフモノニ
ワタシハナリタイ (^−^)

(Y. N. )

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