中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【107】 『チャリティーコンサート』  2009.3.17

 チャリティーコンサートに出かけた。会場は障害者の通う授産施設「ヨナワールド」内にあるランチルーム。そう、ここに通う人たちがいつも昼食を取る部屋。テーブルを廊下や階段にまで運び出し、椅子を演奏者に向かって「孤」を描くように並べて会場が作られていた。開場する時間丁度に到着したのだが、早々ともう席に着いているお客さんも大勢いた。
 はじめに、ヨナワールドの施設長さんから挨拶があり、「施設の生い立ちの他、障害者自立支援法の改正などにより資金援助が減り、施設運営には演奏会に参加して下さったお客様の温かい志が欠かせない」といった内容のお話をされた。
 お話を聞いているうちに、このコンサートに参加している意味をしっかりと実感してきた。

 知人のピアニスト、F先生のピアノ演奏で始まった。オープニングにふさわしい選曲(シューマン作曲リスト編曲『献呈』)で、何かに感謝したくなるような素敵な演奏だった。次はピアノトリオだ。普段あまり聴く機会のない珍しい曲が並ぶ。1曲目はショーソンのピアノトリオ、休憩をはさんでメンデルスゾーンの第2番のピアノトリオという構成。ショーソンは人の運命を表しているかのような大変ドラマティックな音楽展開をする曲。メンデルスゾーンは、彼らしく各パートに細かい動きの多い曲。全楽章とも素晴らしい曲でありそして好演だったが、特に2楽章は、なぜだが聴いているときに感慨無量になった。

 今のこの時間や空間を、同じ志を持った人々と共有する喜びや、人々の心を一つにしていく音楽の力、そして曲が進むにつれ、現実に起こっているすべての喜びだけでなく苦しみにさえも感謝する気持ち、そして、勇気などが僕の体の中に力強く湧いてくるのを感じた。

 アンコールの「歌の翼に」の演奏が終わった時には、会場中が暖かい拍手に包まれていた。それは演奏者に対してだけでなく、自分達をも勇気づけるような……。そしてそれは、このチャリティーコンサートのチラシに謳われている「ある言葉」に通じるものだ。その言葉……

【日々 新たにされて生きる 幸せを感謝して】

(H. N. )

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