中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【104】 『3階の窓』  2008.12.6

 いつも利用する地下鉄の駅まで歩いていく途中に、小学校がある。日によってそこを通る時刻は違うが、ある曜日は僕が通る時刻がちょうど音楽の授業にあたっているらしく、毎週、歌声や縦笛の合奏等が聞こえてくる。どこから聞こえてくるのかな?と思って学校の建物を何気なく見ていたら、道路に面した3階の教室の窓の下に、【音楽室】というプレートが外壁に張ってあるのを見つけた。それ以来、時々「今日は何が聞こえてくるかな?」と、少し気に掛けるようになった。

 歌は、その音程にやや「?」となることもあるが、その歌声はとても賑やかで、かつ元気一杯、こちらの気分まで明るくさせてくれる。
 聞こえてくる曲は、僕の小学校時代とはかなり違い、知らない曲もあり、また結構ポピュラーな曲も混ざっている。そして、春先は春の歌、夏は夏らしい題材の歌、というような選曲になっているようだ。

 先日はシャンソンのようなメロディーのリコーダーの合奏が、その3階の窓から秋の乾いた風に乗って流れてきた。その時、校庭の歩道沿いに植えられている桜の木から、黄色くなって役目を終えた葉が、ハラハラと落ちてきた。とっさに浮かんだコスマの「枯葉」のメロディー……。

 この自然のオーバーラップのお陰で、リコーダーの音色にが、いつになく哀愁を帯びたように感じてしまった。

 さて、来週あたりからは、そろそろクリスマスのメロディーかな?

(H. N. )

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