中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【82】 『老舗の偽装表示』  2007.12.12

 今年もあと3週間を切り、そろそろ、スーパーマーケットにもお正月の食材などが並ぶ頃となってきました。皆様お元気でしょうか?

 今年は食品会社の表示偽装や、賞味期限の改ざんが次々と発覚した1年でした。
 有名な洋菓子、和菓子、シュウマイ、老舗料亭などなど、、、最近では驚くよりも、「え〜、また〜、ここも?」と、がっかりの連続でした。ほとんどが、先代、先々代からの商いで、既に知名度も伝統も売り上げも充分ある会社ばかりです。材料を落としたり嘘の表示をしたり、捨てるはずのものまで混ぜて作り直していた会社もありました。長年かかって築いた信用を、捨ててしまいました。
 「おいしいものを喜んでもらおう。安心して食べてもらおう」という創業時の理念は消え、「もっと楽に儲けよう、バレないようにやればよい」という、なりふりかまわぬ姿勢は、本当に哀しいことですね。。。

 少し前ですが、中日ドラゴンズが優勝しました。
優勝がかかった試合の最後の場面で、落合監督はそれまで好投していた投手を代えました。「日本シリーズ初の完全試合」を目前に交代させたことで、批判もありました。
 後に監督は、『ピッチャーは手の豆がつぶれた状態でユニフォームを血で真っ赤にしながら投げ続けていて、その本人が「もう限界です」と言ってきた事、更にこのまま無理して投げさせればフォームを崩すことにもなり、それが原因で彼の体に故障が出たり、或いは将来の選手生命が短くなるかも知れない、という事まで考えてギリギリの決断をした』と、苦しかった胸のうちを明かしました。
 私はこの言葉にとても感動しました。チームの優勝や完全試合の達成も大事ですが、大切な選手の将来までをも考えた、正しい判断だったと思います!万が一、それで負けるようなことがあれば、批判はすべて自分ひとりで受ける覚悟だったでしょう。

 偽装を続けた会社は皆、組織ぐるみで違法な手段をとっていたにも拘らず、「パートの社員が勝手にやった」と罪を部下だけに被せようとしました。
 もし落合監督のような人が上に立っていれば、あのような偽装は無かったでしょう。経営のトップの方は、会社の将来と社員の将来を大切にする正しい判断をしていってほしいと思います。

(H. N. )

ページの先頭へ