中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集 |
【76】 『楽語の話』 2007.9.11
今年の夏は記録的な猛暑でした。。。
今日は楽語(音楽用語)のお話。 こんな時、楽語辞典でなく伊和辞典がお勧めです。appassionato は「情熱的な」 の他に「熱烈な、大好きな、夢中になって」 などの意味もあります。類語 appassionare(アパッシオナーレ)を見ると「熱中する、感動する」と出ています。つまり、ピアニッシモでアダージオであっても、その静けさと緩やかさに夢中になる、ピアニッシモの雰囲気に感動して、と考えると、少し分かる気がします。 今練習しているある曲では、1段目のテンポが、Poco Moderato(ポコ・モデラート)で、3段目で stringendo、4段目で Allegretto とあります。ポコ・モデラートをそのまま「少し中庸に」 と訳すと何だか良く分かりません。moderato は「無茶をしない、節度のある、穏健な」、類語 moderare モデラーレ は「控えめにする、自制する」 とあります。先ほどのポコ・モデラートは、やや節度を持って、動きたい気持ちを少し抑えて程よく・・・と考えて弾くと、とてもぴったり来ます。
またある曲では、一つの楽章の accelerando の数小節後に stringendo(ストゥリンジェンド)が現れます。どちらもだんだん速くなるのですが、類語の名詞 acceleratore(アッチェレラトーレ)は英語では accelerator(アクセルレイター)「アクセル」を指し、つまり、だんだんアクセルを踏み込んで自発的にスピードを上げてゆく感じです。 意味が分かればすぐ弾ける訳ではありませんが、『言葉の意味を考えながらよく練習する・・・』を反芻していく過程は、楽譜を読んでいく時の楽しみの1つでもあります。 (Y. N. )
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