中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【75】 『イタリア語旅行会話』  2007.9.1

 夏休みも終わった。今年はあまりの暑さに、エッセイもサボってしまった。そろそろ復活させます。

 この夏休み、僕は新しい事にチャレンジした。
 仕事が休みに入ると同時に、ある大学のオープンカレッジの、「イタリア語旅行会話」に参加したのである。ここ数年、イタリアで演奏会を持つ機会が増えた。だがイタリア語は、簡単な挨拶と、数字、そしてレストランのメニュー位しか分からなかった。マネージャーとは、英語でやり取りしていたので、それでも何とが事は足りていた。
 常々、「少しは理解できるようになるといいな」と漠然と考えていたのだが、そうかといって、きちっとした会話の教室に通うには時間が無かった。そんな時、目に飛び込んできたのが、3〜4日おきに開催される「全5回 イタリア語旅行会話」という講座だった。これだけ短期間なら間違いなく受講できる、そう思い、きちんと習ったことなどない僕にとっては少々冒険ではあったが、参加することにした。
 授業は、早い話が、「この夏にイタリア旅行する人にとって最低限これだけは知っていたほうがよい」という内容を、毎回配られるプリントをテキストにして学んでいくものだった。
 駅での会話、道の聞き方、買い物、時間の言い方、のほか様々な「場面」を想定して、実際にすぐ使える会話を学んだ。こういった講座にしては珍しいことだが、講師は二人で夫婦なのだが、文法等説明は、日本人のご主人担当、発音はイタリア人の奥さん担当ということで、生のイタリア語に直接触れることが出来た。
 ただ、何しろたったの五回で、旅行に必要な会話の殆どを学ぶわけだから、その進むスピードの速いこと速いこと……。それゆえ学んだ内容を家での復習もなしで覚わるはずが無い。でも説明の間に挟まる講師の何度も繰り返される言葉だけは完全に覚えた。

 その言葉とは……

「ごめんなさい、速くてすみません、いつもはこんなに速くは進みません。限られた時間しかないものだから……、はい、次、行きます。〇〇ページの中段見てください〜い。ここでは……」

 なのだ。(いったい何を覚えたんだ?)

 それでも、頻繁に使ったことがある会話などは、改めてはっきりと確認できた。忙しかったが、楽しい時間だった。

(H. N. )

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