中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【74】 『プラットホームの音楽』  2007.7.23

 最近、名古屋の地下鉄のホームで短い音楽が流れるようになった。(東京のJRでも以前からやっているが…)。市交通局が当地在住の実力派作曲家に作曲を依頼したという音楽である。依頼の内容は「複数の異なった路線、またそれぞれの”のぼり”と”くだり”の街のイメージを膨らませて8秒間に収めてほしい」というものだったそうだ。その方は私も存じ上げている立派な作曲家で、その音楽を云々するつもりは全くない。

 ただ、ちょっと気になることがある。
 プラットホームは結構『うるさい』場所である。
 列車が近づいてくる『ガタン、ガタン、ゴー』と言う音、『間もなく○○番線に○○行きが参ります。白線まで下がってお待ちください』と言うアナウンス、列車が到着すると『キー』と言うブレーキ音、その後ドアが開く『プシュッ、シュー』、そして閉まる前の『ルルル、ルルル・・・』と言う警告音、などなど・・・
 これが自分のいるホームだけでなく反対側のホームでも何秒かずれて時にはほとんど同時に鳴るのである。
 この音の洪水の中に、更に音楽が必要なのか・・・・?という点である。

 音楽を流す以前に、逆にもっとアナウンスを減らしてもらえたら、とさえ思う。
 ヨーロッパの鉄道(地下鉄を含め)ではたいてい駅に着いても駅名さえも言わないか、”駅名”と”出発します”を短く言うのみ。静かで快適だし、情報はこれで充分という気がする。

 名古屋のあるバスの路線では、アイドリング・ストップ運動をやっていて、信号待ちでエンジンを切る。この事自体は大いに賛成だが、エンジンを切ると同時にモーツァルトのピアノ曲が流れ、エンジンをかけると同時に突然音楽をストップ、次の信号待ちで前回切れた部分から先が流れる、ということを繰り返している。
 交通局は「エンジンを切ると静寂になり”変”ですので、皆さんの好きなモーツァルトをおかけしています」と言うが・・・・・。

 仮に、モーツァルトをワインに置き換えてみたら・・・

 エンジンを切ると同時に客席上部からワイングラスが下りてきて、好きでも嫌いでも強制的に口に注ぎ込まれ、エンジンがかかるとグラスは没収、次の信号で続きを飲まされる、・・・・(バスを降りるまで延々と続く)
 万が一こんなことが行われたら、どんなワイン好きの人だって、逃げ出したくなるんじゃないかな・・・?

 交通局さん、それぐらい『変なコト』だと思います!

(Y. N. )

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