中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【71】 『地下室のメロディー』  2007.5.21

 “地下室のメロディー”といっても、ジャン・ギャバン、アラン・ドロンの話ではなく、こちらは、エッセイ No.69「ヒミツの音楽室」で行われた、「こけらおとしコンサート」の報告です。

 日曜日の夕方行われたそのコンサートには、工事期間中、その騒音や振動などで迷惑をかけた近所の人達、そしてオーナー夫妻の学生時代からの音楽仲間、勤務先の音楽好きの同僚など数10名が集まりました。
 オーナーの簡単な挨拶の後、演奏会が始まりました。前半は、秀彦の担当でモンポウのピアノ曲「プレリュード」「内なる印象」「歌と踊り」からそれぞれ数曲、そして後半は祐子が担当し、ここ数年組んでいるピアノトリオでチャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出」を演奏しました。
 前半、後半ともどちらもめったに聴く(弾く)チャンスのない曲でしたが、皆さん真剣に聴き入っていました。演奏者は、どんな会場で弾いていても聴衆の雰囲気は分かるものですが、今回、後半は僕も聴衆に加わり会場で聴きましたのでそれがよく分かりました。
71 終演後はその会場で、聴衆、演奏者、オーナー夫妻を囲んで立食パーティーが催されました。我々にとって初対面の人もいましたが、和気藹々と会食しているうちに、皆様が普段から疑問に思っていても、なかなか聞く機会のない楽しい質問が飛んできたりしました。

 なんと贅沢な時間と空間でしょう……、と思いましたが、これが本来の音楽の楽しみ方なのでは? 録音された音源がなかった時代には、音楽は、「生」しかなかったはず。
 まさしく「シューベルティアーデ」そのものでした。

(H. N. )

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