中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【70】 『リサイタル終わりました』  2007.5.14

 5月9日のリサイタル、皆様のたくさんの応援のおかげで何とか無事に終わりました。ありがとうございました!
 また今回取り上げたモンポウについて、多くのうれしい反響を頂き、ありがとうございました。

さて……、

 先日、リサイタルの練習の合間に、気分転換と、体をほぐすためと、頭の中を一度すっきりさせるためにプールに行った。いつものように更衣室で着替えシャワールームを通り抜けプールまで来ると、なにやらいつもと違う音が聞こえてきた。
 「バシャバシャバシャバシャ……」とその音は、連続して途切れることなく続いている。そして同時に変わった光景が目に飛び込んできた。

 僕はプールの長辺側に立っているわけだが、その反対側のプールサイドに、ものすごい水しぶきが立っているのだ。(ん?サケの溯上?まさかこんな所で?)25メートルのプールサイドの約3分の2位がその水しぶきで見えない。しぶきの高さは、1メートル弱位だ。

 しばらくすると、それは止んだ。水面が静まり、丁度霧がはれるように徐々に水しぶきが消えてくると、その向こう側から、ニコニコした可愛い子供たちの顔が見えてきた。幼稚園の年長か小学校の低学年の子供たちだ。
 彼らはプールサイドにこちらを向いて横一列になって腰掛け、膝下をプールに入れて、バタ足の練習をしていたのだった。今日は、ここのプールで子供の水泳教室をやっているのだ。

 コーチの「始め〜!」という声にあわせ、再び《サケの溯上》が始まり、「は〜ぃ、止め〜!」で、水しぶきが止む。
 水泳教室のおかげでいくつかのコースは使用できなかったが、軽く泳いだり、ウォーキングしながら、時々子供達のはしゃぐ声を聞いていると、リサイタル前で、日常の世界とは別世界にいる自分の、異常に緊張した精神が、徐々に解きほぐれていく様な気がした。

(H. N. )

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