中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【66】 『パシフィカ・クァルテット』  2007.3.6

 先日、アメリカの弦楽四重奏団「パシフィカ・クァルテット」を聴いてきました(名古屋:スタジオ・ルンデ)。曲目は、メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第1番、ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第2番、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番「大フーガ」、というものでした。

 文句無しに大変感動しました。演奏された3曲はどれも知らない曲ばかりでしたが、やはり演奏がうまいので、曲の中にあるいろんな部分をハッキリと聴かせてくれました。メンデルスゾーンの曲には、ところどころ少し東欧的な響きがあったりして、面白かったです。ヤナーチェクでは、仲良しの子供達が街の片隅に集まって、わらべ歌を歌いながら遊んでいる情景が目に浮かんできました。

 でも最も凄かったのは、BEETHOVEN!!! それも最後のフーガ! 正直言って、フーガの前の長い楽章は、僕は「意識がうつろ状態」でした。それで、フーガの楽章に入る時に、「これじゃいかん!」と思い、体勢を立て直しました。なんだか、ぐいぐい旋律の絡みに引き込まれていきました。知らない曲なのに各声部の動きが、面白く聞こえたのです。聴いている僕の頭の中に、不明瞭な音の動きはなく、すべてが、よく聞こえたのです。終わったときは、なんだか分からない物凄い達成感がありました。(自分で、演奏しているわけではないのに……。)

 驚いたのは、次の日です。朝から通常のレッスンをしていました。生徒の一人にラヴェルの「クープランの墓」を練習している人がいるのですが、その中の「フーガ」の動きが、以前にも増してよく聞こえてきたのです。テーマがストレッタでいくつも重なる時など、僕自身とてもややこしく感じていたのですが、その重なりでしか表現できない面白い響き、危険なまでの緊張感、また旋律が、「ふっ」と停止したときの幸福感、等など……。面白くて仕方ありませんでした。それどころか、あまりにも短すぎるな、とさえ感じたのです。でも、あれが長かったら、演奏するピアニストの負担(?)が、増えてしまいますが…ね。(笑)

(H. N. )

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