中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【50】 鹿児島旅行記 第10話 「唐船峡へ、薩摩富士」
    2006.9.28

 さて、《砂蒸し温泉》でリラックスした後は昼食だ。これから『唐船峡』(トウセンキョウ)へ行って《そうめん流し》を食べる予定。カーナビにそうめん流しの店の電話番号を入力して、再び出発した。
 指宿に来る時見かけた、ピンクの文字の『当、指宿○○ホテル砂蒸し温泉有り』の旗がやはり風に揺られている。が、一瞬目を疑った。何のことは無い、その『○○ホテル』とは、たった今、僕が砂蒸しを体験したホテルだった。「なるほどね……」と変に納得してしまった。

 薩摩半島の南東の端から、海側を回りながら、西へ向かう。
 暫くすると富士山のような形の綺麗な山が見えてきた。絵で描いたようにすっきりとした円錐形である。《開聞岳》(カイモンダケ)だ。あまりに美しいので写真を撮りたくなり、ナビの支持するルートからはずれ、畑に囲まれた道幅の狭い農道のような所に入って行くことにした。道は全く分からないが、最後はナビがきちんと修正してくれるので安心。こんなことが出来るのもカーナビの御蔭。
開聞岳 適当に車を走らせ、山と太陽の向きと周りの雰囲気が良い撮影ポイントを探し回った。角を曲がるたびにナビが新しいルートを指示するが今回だけは、完全に無視。そしてこの旅行で借りたレンタカーと一緒に数枚撮影した。「薩摩富士」と言ってもいい位本当に綺麗な山だった。

 再び正規のルートに戻り唐船峡へと急ぐ。さすがにお腹が空いてきた。

 唐船峡に到着したのは3時過ぎ。昼食時ではないのに結構賑わっている。早速、市営のそうめん流しの店に入った。そうめんの他にも数種類のおかずが有り、単品でも注文できるが、それらがセットになった《お勧めメニュー》も有ったので、それを注文した。
そうめん まず驚いたのは、見たことも無いテーブルだ。円卓なのだが、その上に幅10センチほどのアクリル製の樋がドーナツ状に繋がって作られている。直径は、60〜70センチ位だろうか。その樋の中で水が、グルグル回っているのだ。これを「円卓式回転そうめん流し器」と呼び、元は、竹樋で作ったそうめん流しだったものを、後に回転式に変更、意匠登録済みということらしい。結構速い流れだ。
 注文してすぐ、笊に盛ったそうめんとその他の料理が運ばれてきた。その笊を、丸いドーナツ状の樋の中央の空いたスペースに何の説明も無く置いていった。
 少し箸で取って樋に入れてみた。あっという間にそうめんが一周してくる。これを再び箸で取って汁に浸けて頂くのだ。この水がまた、よく冷えている。近くにある九州最大のカルデラ湖である池田湖の浸透水が、毎日湧き出す湧き水なのだ。年間を通じて13度という水温を保っているらしい。ちなみにここ唐船峡のある開門市は《水の郷百選》にも選ばれている。
 水の流れに暫く任せておき、頃合を見はからって食べてみる。そうめんが丁度よく冷えている。流してすぐならそれほどでもないが、暫く流したままにしておくとだんだん冷たくなってくる。好きな温度で食べられるというわけだ。虹鱒の塩焼きや鯉のあらいも美味しかったが、そうめんを流しては食べる、その動作そのものが楽しく、また可笑しかった。ポピー

 さあ、後は帰るだけ。途中の池田湖畔の休憩所に綺麗なポピーのお花畑があったので写真に収めた。そして夕陽でほんのりオレンジ色に変化した山並みを見ながら指宿スカイラインで鹿児島に戻った。
【次はいよいよ最終回です】   (H. N.)

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