中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【48】 鹿児島旅行記 第9話 「砂蒸し温泉 その2」
    2006.9.14

 さて、やっと《砂蒸し温泉》が体験できる。
 受付を済ませ、専用の浴衣に着替えて、外の砂場へ。
 既に何人もの人が、砂場で首から上だけ出して横たわっていた。早速その隣に並んで仰向けに寝る。係員が、体の上から地熱で熱くなった砂をスコップでどんどんかけていく。この砂が結構重い。首から上だけが砂の上から出ている格好になる。砂の敷布団に寝て、砂の掛け布団をかけた状態なのだ。

 初めは特に温かいとは感じなかったが、次第に体がホカホカしてきた。思ったより熱くない。上を向いているが、あちこちに時計があり、自分で時間が分かるようになっている。長時間入っていても良いのだが、低温火傷に注意するようにと張り紙がしてある。そうかといって、出る時間を係員が知らせてくれるのではない。要するに自己の責任において、いつ出るか決めてください、という趣旨なのだ。

 だんだん、来ている浴衣が、汗だくになってきたのが分かる。体重のかかりやすい体の数箇所だけが熱くなってきたので、重い砂の中で体をゴソゴソ動かしていたら、足の指が砂から出てしまった。周りを見渡すと足の指やら、手の平やらを出している人もいた。しかし、今まで熱い砂の中に埋まっていたので、出たところだけが、潮風に当たってやけにひんやりする。
 そう、ここは海に面したホテルの海岸側に、砂浜の砂を利用して作られているのだ。打ち寄せる波の音もよく聞こえる。

 係りを呼んで、出てしまった足の指にまた砂をかけてもらった。やはりこれが気持ち良い。大体15分前後が良いらしいので、頃合を見計らって出た。そのまま、砂だらけの浴衣を着たまま、すぐ隣の露天風呂へ。ここで、浴衣や、体についた砂を洗い流す仕組みになっている。底には、結構な量の砂が沈んでいた。
 その後は、普通にシャワーを浴びて、ホテル内の温泉にゆっくり浸かり終了。からだの芯まで暖まって良い気持ちだった。
 
 そろそろお腹も空いてきた。時間はもう2時を過ぎていた。しかし、今日は、ある考えがあって、まだ昼食をとっていない。実は、『唐船峡』という所で、『そうめん流し』を食べる予定なのだ。

【第10話「唐船峡へ、薩摩富士」へ続く】      (H. N.)

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