中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【44】 鹿児島旅行記 第6話 「ピアノのE先生と」
    2006.8.2

 薩摩半島の南西海岸に面した所に、薩摩川内市(サツマセンダイシ)がある。知り合いのピアノの先生がそこに住んでいるので、訪ねてみる事にした。その方とは、10年ほど前にハンガリーのリスト音楽院サマーセミナーに参加した時に知り合いになった。それ以降、時々連絡を取り合っている仲なのだ。

 鹿児島市内から山の中を走る南九州自動車道を通る。ただ、東海地方の山間部の自動車道を走っているときに見る景色と、何かが違う。山間を走っているのには変わりはないのだが……。
 暫くしてやっと気が付いた。一つは、山が間近に迫っている事、もう一つは、山の形が違う事だ。こちらの山は、東海地方の山より険しい形をしている。簡単に言うと稜線がなだらかでなく《ギザギザ》が多いのだ。周りに火山が多いために山の地形がこうなるのだろうか。

 その自動車道を『市来』(イチキ)で降り、川内道路を経由して国道3号線を走る。先生のお宅の近くまで来て、この辺りだろうと思いながら徐行していたら、玄関まで出ていて手を振ってくれていた。本当は、昼ごろ到着予定だったが、少し遅れて着いた。
E  道から見える彼女の家は、外壁にピアノの鍵盤のデザインが、施してある。さすが、ピアノ教室。
 中に入り、早速ピアノ室へ。暫く話をしたり、ジャズや、プーランク等を弾いたりして過ごした後リビングへ移動、僕は始めてお会いする彼女の友人のU先生の到着を待った。E先生が、
「今日、夕食6時半に予約してありますから」 と言う。
「夕食?」
 なぜなら、僕は、《昼食》を3人で食べるつもりで来たのだ。前もって連絡を取り合い、食事を一緒にすることは決まっていた。ただ、僕が、夕食を昼食と勘違いしていたのだ。彼女は驚いて、U先生に電話して僕に何か買ってきてくれるように頼んでくれた。30分位してU先生が到着。手には、スーパーの買い物袋、もちろんその中に、おにぎりやパン等が入っていた。夕食の時間も近づいていたので、軽くお握りを一つだけ頂いた。残りは、持って帰ることにした。

 3人で暫く話をしたあと、U先生達はピアノ室へ移動、最近出した、僕の持ってきたCDを聞いていたらしい。ちなみにE先生は、我々のピアノデュオリサイタルに遥々名古屋まで聴きにいらして下さった事もあるのだ。僕は、その間リビングでゆっくり休むことにした。
 リビングには、猫がいた。『レン』と『リリ』の2匹だ。名前を呼んで手招きするとすぐ寄って来てひょいっとお腹の上で体を丸くする。暫くじっとしているが、すぐ飽きてしまって飛び降りて、自分の寝床に戻る。何度かそうやって遊んでいるうちに、うとうとと眠ってしまった。
 1時間くらい経っただろうか、二人がリビングに戻ってきた。

 早速予約してあるお店に行った。その店は、中華料理とアジア料理を混ぜたような店で、結構繁盛していた。店に入った時、客は我々3人だけだったが、途中で気づくと満席に、そして閉店近くになった時は、また我々だけになっていた。味は美味しかったが、全体に塩味がきつかった。
 最後にアンケート用紙を店員が持ってきたので、僕は正直に「酒と一緒に食べることを考えても塩味が強すぎる。」と記入した。
 楽しい会食後、夜遅くに鹿児島のホテルまで戻った。到着時刻、夜中の12:30頃だった。
【次回は「ある夜の出来事」】      (H. N.)

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