中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【39】 『鹿児島旅行記 第2話 「桜島 その2 鳥居埋没地」』
    2006.6.25

 (……第1話「溶岩台地」の続き……)その時、突然、「バサバサッ」という音と共に数羽のカラスが「カーァ」と飛び立った。周りには誰も居ない。辺りは風の音と、遠くに時々聞こえる車の音、そして火山のにおい……。そこにカラスの鳴き声が加わったから、まるで映画の中の世界のように、現実離れした、孤立した時空を感じざるを得なかった。

1 海岸へ続くルートがあったので行ってみた。海岸といっても砂浜があるわけではない。真っ黒い溶岩が、そのまま海に流れ込んで固まっている。一見、ヘドロが打ち上げられているのかと思った。溶岩で出来た崖に立ってみた。海岸からは、数メートルの高さで、それほど高い位置ではない。沖の方に海面から高さ5メートル位まで、黒っぽい溶岩が突き出ている光景も目にした。

 再び車に戻り、整備された道路を走り、途中大隈半島に入る分かれ道を左折し、島の東から北に向かう県道に入った。この道路はいわゆる生活道路で、先程までの道路と違い、少し狭くなり、海岸線に沿ってくねくねと曲がるカーブの多い道だった。

 途中、『鳥居埋没地』に立ち寄った。これは、過去の噴火により埋没した鳥居を、原状のまま残した鹿児島県指定天然記念物である。
2 どんな状態で保存されているかというと、車が通れるだけの幅の道路に、鳥居の上部だけが見えているのである。丁度、雪の深い地方で、道路標識の上だけが見えているのと似ている。資料によると、鳥居の高さは約3メートル。その鳥居の上部約50センチ位だけが地面から見えているので、2メートル以上は、溶岩や火山灰に埋もれている計算になる。
 当時の噴火の物凄さを今に伝える貴重な建築物である。町の復興の際に、掘り出す予定だったのが、《後世に噴火の資料として残したほうがいい》という意見により、そのままの形で保存される事になったらしい。(写真:鳥居の手前の3本のコンクリート柱は、自動車等が当たらない様に、ガードとして後に作られたもの)

 『鳥居埋没地』の他には、こちら北側が生活道路ということもあり、南側ほどは観光化されていない。島を出る時間も近づいてきたので、このまま車を走らせ、鹿児島市のホテルに戻るため、フェリー乗り場に向かった。
【次回は、「霧島へ・気になる看板」】      (H. N.)

ページの先頭へ