中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【38】 『鹿児島旅行記 第1話 「桜島 その1 溶岩台地」』
    2006.6.18

 先日、鹿児島を一人で旅行した。鹿児島市内のホテルに宿泊し、カーナビ付きのレンタカーを借りて近郊の街を巡る数日間だった。これは、それを全11回の紀行文に纏めたものである。
 他のエッセイも挟みながら、順次、掲載していこうと考えている。文と写真は、すべて秀彦が担当。お楽しみに!
  第1回は 「桜島・1 溶岩台地」 時間を追って振り返ってみる事にする……。

 
 鹿児島市内から桜島へ渡るフェリー乗り場は、ホテルから車で10分程の所だった。何百台も止まれる駐車場の側を通って、フェリーに乗るために並んでいる車の列の最後尾に着けた。巧みな手捌きの係員の誘導によって、順序よくどんどん車が船内に吸い込まれていく……。待つこと1〜2分、いよいよ自分の番だ。ガタンゴトンと音をたてながら、鉄製の狭い誘導路を通って船内に入った。係員が直ぐにタイヤ留めをしに来た。
 
 いったん車を降りて、デッキに出た。南国の空気の香……。昨年、グアムの空港に降り立った時と似ている、海の香のついた生暖かいゆるい空気だ。
 15分程、軽い船の揺れに身を任せていると、突然スピーカーから耳障りな賑やかな音楽が流れて来た。桜島の港に入港するのである。旅をしていて時々思う事がある。船やロ−プウエイ等が終点に近づくと、たいていあの類いの音楽が煩く流れるのは何故なのか?折角いい気分になっている時に、突然現実に戻される嫌な瞬間である。
 どうせ流すのならもっとロマンチックな音楽をセンスのいい方法で聞かせられないものかねぇー。

1 まもなくフェリーは島の西側に着いた。現在、火山の周りを回るような形で海岸線に沿って島を一周する道路がある。その南側半分の道路は国道で、溶岩の観光ができるよう綺麗に整備されていたので(その名も溶岩道路)、まず島の西から南側を回ることにした。
2 途中、数箇所に小さな駐車場があり、そこからは、溶岩台地の散策のための歩行者用散策路も延びており、目の前に溶岩の塊を見ながら歩くこともできるようになっていた。時間もたっぷりあったので歩いてみることにした。

 車を降りた。周りには誰も居ないのでとても静かだ。
3 まず火山性ガスのにおいが鼻につく。そして見た事のない不思議な光景が、目の前に、と言うより、自分が立っている周りいっぱいに広がっている。噴火の際の溶岩が急冷する際に、含有ガスが抜けた穴が無数に開いている黒っぽい軽石や、溶岩が転がりながら、そのまま固まったと見られる、奇妙な形の大きな岩の塊があちこちに見られる。その表面は、溶けた鉄、あるいは、ガラスが固まる時にできるような筋状の模様がついていた。(コーヒーゼリーを手でちぎった時の断面に似ている?)
 
 散策路は途中から無数に枝分かれしており、迷いそうにもなるが、どこを通っても、軽石や奇妙な形の溶岩ばかりで驚きの連続だった。
 と、その時……。
【第2話へ続く】      (H. N.)

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