中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【33】 『オリンピックの結果とマスコミ』    2006.3.11

 トリノオリンピックで荒川静香が見事金メダルを獲得した。御多分に洩れず、僕も早朝に目覚ましをかけてTVの生中継を見た。本当に素晴らしかった。

 そんなオリンピックが終わったが、僕は、ここで気になる事が二つある。
 一つはメダリストに対するマスコミの取材である。過去においてのメダリスト達はその後、半年から一年位は取材等に時間を取られ、本来の自分のやりたい練習が出来ない、という環境に追いやられている。かわいそうな限りである。

 試合に出るまでのたゆまぬ努力の結果が、メダルにつながったのであり、この先自分達の決めた練習メニューを続けることが出来なければ、力は、すぐに落ちる。彼らの今後の活躍を応援するつもりならば、彼らからあまりトレーニング時間を割いてほしくないと思う。映画やTVドラマのように一度記録されれば、何度見ても全く同じものとは違い、人間がその場で演じるパフォーマンスはたった一度きりであり、それも時間と共にすぐに消えていく運命にある。だからこそ、その一瞬にかける情熱は普通ではない。簡単に言えば、「カット!、取り直し、Take 2!」等、無いのである。

 もう一つは惜しくもメダルに手が届かなかった選手たちに対するマスコミの姿勢である。
 どの選手も精一杯頑張ってきたはず。それなのに帰国して取材されるのは、メダリストだけ。
 出発前は、壮行会等をしてお祭り騒ぎのようになっていたのに、結果がメダルにつながらなかった選手は、殆どマスコミから相手にされない。過去に金と銀のメダルを取ったスケートの清水宏保でさえ、今回のように結果が出なければ、たちまち「引退は考えていますか?」と責めたてられる有様である。
 結果だけを追いかけては、あまりにも彼らが気の毒だ。どの選手も限界まで頑張ってきたのだ。その努力を労ってあげられないものか、と思う。

(H. N.)

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