中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【9】 『飛び出せば止まる!』    2005.8.1

 今月末に、ローマで演奏会があるので大変楽しみにしている。'02年に演奏に行った時の街の様子を、ちょっと思い出して書いてみようと思う。

romano  ヨーロッパ全土が記録的猛暑だった2002年の8月、ローマも大変暑く、連日35℃〜40℃近く、外に出れば焼けたフライパンの上を歩いているような感覚だった。演奏会は、涼しくなってからの午後8時半の開演、世界遺産フォロロマーノ近くの遺跡に囲まれての場所だった。ライトアップされた今にも朽ちそうな建物が見えていて、なんと表現していいのかわからない、幻想的な景色だった。屋外であることや、観客も気軽に来られる雰囲気などにより、聴衆と一緒にこの雰囲気を楽しもう、という幸せな気分だったのを覚えている。

 食事についてはあまり詳しくお伝え出来ないのだが、(というのは、安上がりにする為いつもカフェやバールのようなところで適当に済ませていたので、)それでも2〜3回行った地元の人が「美味しい」、という店でのピッツァは、物凄く旨かった。具が何も載ってない生地だけのもあって、それもまた旨い。パスタもヘンな店で食べても、一応個性的だが満足できる味だ。いずれにしても、日本とは全く別物! オリーブの実なんて、日本で食べるとたいてい軟らかいが、硬めで、食感が全く違う。

 道路はどんなに広くても車線というものが殆ど無い。みんな適当に遊園地のゴーカートのように走っている。それもすごいスピードで。
 交差点で曲がる場合も速く走らせた方が、勝ち!といった感じ。信号も少ないが、事故は不思議とめったに起こらないらしい。みんな良く見て運転している。
 道を横断するときは、車の流れが途切れるのを待っていては、永久に渡れない。解りやすく言うと、手を上げながら走ってくる車に向かって飛び出すこと!(日本では考えられない) そうすると大抵の運転手は、嫌な顔をすることも無く、急ブレーキで止まってくれる。

 我々のコンサートの後、一緒に歩いていたイタリア人がそうやって道を渡って、走ってきたバイクとぶつかりそうになった。「危ないじゃないか! 何処見てんだ?」らしき事を叫んだのは、ぶつけられそうになった渡っている人だった。随分道幅の広い交差点でも、信号はナイ。

(H. N.)

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