中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【27】 『証人喚問』    2005.12.17

 例の耐震強度偽装事件に関する証人喚問が14日に行われた。偶然にも仕事が無い日だったので、殆ど一日テレビを見ることにした。
 証言同士が食い違うのは証人喚問の常であるし、知らぬ存ぜぬは日常茶飯事だから驚くことは無かった。それぞれが自分の立場をわきまえた上で、どう反論(悪事を認めない事など初めから分かりきっている)するかに興味を持って映像を見た。

 案の定、罪の押し付け合いの様子は思ったとおりだった。それもただ押し付けあうのではなく、その発言の背後に潜む全員共通の“思惑”に基づく発言だった。(考えてみればいつもそうだ!)
 今回の場合、責任の所在が明らかになれば、それが一人であれ数名であれ莫大な額の損害賠償を強いられることとなる。だから疑惑を完全に否定して罪を他者に押し付けようとする姿勢、または自分の悪事を認めたとしても、その悪事全体に占める自分の割合を、少しでも減らそうと懸命になっている様子が見られた。

 議員の質問に対して的外れな回答をする証人、議員の発したほんの少しの言葉の間違いを訂正することで質問をかわしているツモリの証人、本来何もかも知っているはずのお偉い方なのに、途中で耳が聞こえないそぶりをしたのか、それともあの大事な場所でボーっとしていたのか、聞かれても席を立ち上がろうとしない証人等…。

 TVに映し出された証人の顔のアップからも、さまざまな表情が見て取れた。質問の間、口をへの字にしっかり閉ざし眉間にしわを寄せ、途中痛いところを衝かれると、こめかみ辺りの血管がピクピクと動いて、焦っていることが見え見えの証人、時計ばかりを気にして早く終らないかという顔をする証人、何を聞かれてもいいように万全の準備を整えて臨んでいるのと、真っ向から反論する、という前提の下で質問を聞いているので、薄ら笑いまで出てくる証人。

 しかしそんな中にあっても、僕には4人のうちやっと1人だけは、多く真実を語ったと思えた。

 ア〜ぁ、最近見たどの番組より、目が離せなかった。さてこれで、彼ら“商人”は“関門”を通過したつもりか‥、“証人喚問”‥。  

(H. N.)

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