中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集

【18】 『ロ−マのホ−ムレス』    2005.9.28

 ローマ市内には広大な面積を持つ2000年以上も前の古代遺跡があるが、それ以外にも歩いているだけで様々な遺跡に遭遇する。その一つに水道橋がある。その何層にもなったア−チ構造の一番下に今は道路が走っており、うっかりくぐっているだけでは見過ごしてしまいがちになる。
橋 その他、新しく出来た普通の建物と建物の間に、ほんの数メ−トルの幅だけ、挟まれるように残っている遺跡もあったりする。街中あちらこちらに遺跡があり、それがそのまま街の顔にもなっている。 
 
 地表から5〜6m低い位置に、テニスコ−ト2面位の面積ほどの比較的小さな遺跡もよく見かける。近代の都市作りの際に発見されたものらしく、そのままの状態で保存するために、道路はその周りを囲むように作られている。
水道  そこには、ホ−ムレスが多く住み着いている。ボスらしいのは、朽ち果てたレンガの壁や石柱の一番高い所を陣取って辺りを見渡している。周囲には美味しいレストランが多くあり、その裏口近くのゴミ箱から栄養満点の残り物を調達できるし、水はあちこちに24時間出っ放しの水場があるので(アルプスの冷たくて美味しい天然水)、水や食べ物に困ることはない。
 
 ただ自分のテリトリに新たに侵入者があると、お互いゆっくり近づいて行き睨み合いが始まる。喧嘩になることも稀にある。睨み合いが続いた後、どちらかが手を出すと、そのまま取っ組み合いの喧嘩になる。
 意外にも決着は早くつき、負けた方はさっさと向きを変え、小走りに少し離れた場所まで逃げ、今戦った相手を遠くから見ている。勝った方は、侵入者が来る前と同じように、何事も無かったような顔をして、ちょこんとお尻をつき、前足を使って顔をペロペロと舐めだす‥そしてまた日は暮れていく‥‥。
 
 平和なロ−マの猫のお話でした。

(H. N.)

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