中岡秀彦/中岡祐子 エッセイ集 |
【12】 『寝転がって静かに過ごす』 2005.8.17 ついつい夜更かしして見てしまいました、ヘルシンキ世界陸上の生中継。男子400mハードル決勝には為末大選手が残り、見事銅メダル獲得! 素晴らしい試合でした。為末さん本人が決勝当日の心理を時系列で振り返って書いた手記に出会いました。選手村から競技場行きのバス、そして決勝レースまで、時々刻々の自分と他の決勝メンバーの状況を分析して書かれたものでした。 曲がりなりにも演奏という本番に関わる人間として、とても興味深いです。 以下、手記から少し引用してみます。(…は中略) 『…決勝当日はひどい雨と風の悪天候。レース時間についての情報も、30分遅れている、45分遅れだ、1時間は遅れそうだ、200mと三段跳びが今中止になった、400mHも多分中止だろう、…コンマ何秒を争うレース、その直前で心身ともに振り回される状況、想像しただけでもパニックになりそうですよね? レースにたどり着くまでの心理のアップダウンで、疲労してしまった選手もきっといたでしょう。 スポーツと比べて音楽の世界では、天候に左右される場面はないのでずい分助かります。でも本番に向けての精神集中と体のウォーミングアップという点では、かなり共通点があるかも知れません。私にとって為末さんの言葉は神懸り的でさえあります。世界のトップアスリートの強さの裏側をこっそり覗かせてもらいました。身体能力だけでなくその気持ちの強さに、本当に頭が下がります。 “サブトラックで決勝メンバー全員が皆、突然動き出したり突然止めたりとウォーミングアップで騒然とする中、開き直って集中を切り、寝転がって静かに過ごす。” mmm、フツーの精神力の持ち主ではありませんね。 (Y. N.) |