Concert Review2006年6月21日 「三人のリサイタル」 於:愛知県芸術劇場コンサートホール |
【中部経済界 2006年8月号所載】 |
「三人のリサイタル」で好演した 原田綾子、星川美保子、吉田 文
1992年に始まった、聴衆の立場で有能な若いアーティストを支援する組織「ルンデあしながクラブ」の最終公演。組織発足当初より支援を受けているオルガンの吉田文(ドイツ在住)、近年注目されているピアノの原田綾子とソプラノの星川美保子が出演した。まず、吉田が新たにドイツの作曲家に編作を依頼したバッハによるプレ・コンサートに始まった。すでに何回となく演奏し録音もしてこのオルガンを熟知している吉田により奏出される「シャコンヌ」は、これから行われる演奏会の格調の高さを象徴するかのようであった。 果たして最初のプログラム、ハンガリーに留学していた原田のバルトーク「二つのルーマニア舞曲」では、激しい律動感と困難な技巧を要するパッセージの連続が、溢れんばかりの情熱で弾ききられ、その圧倒的な表現意欲にまず瞠目させられた。続いて原田自身が「大好き」と云うシューマンの歌曲「献呈」のリストによるトランスクリプション。ここでは一転して優雅且つ情緒豊かに謳い上げ、前者と鮮やかな対比を見せた。この二曲の演奏があまりにも印象的であったために、第三曲に選んだショパンの作品がいささか陳腐に思える程だったのは、何とも皮肉な結果ではあった。 星川は、まず吉田のオルガンをバックに宗教曲を三曲、休憩を挟んで原田と共に個性的な日本歌曲を三曲歌い、全く異なったキャラクターをみごとに使い分けた。(中略) 後者では、町田志津子詞、中田喜直曲になる「鴉」で、この作品の持つおどろおどろしいまでのイメージをピアノとともに存分に描ききっていた。ここでも、身についたドラマティックな表現力をうかがわせた。 (中略) プログラミングは個々の思い入れをそのまま具現した個性あるものだったが、聴いていて飽きることなく、総じて非常に内容の濃い高水準の演奏会であった。 (後略)
※同誌評「バルトーク弦楽四重奏団」(6月16〜18日)の欄の追記: |
【同夜の聴衆のアンケートから(関係分のみ)】 |
○原田綾子さんは格段に上達した。昨年の電気文化会館のときとは別人のようだった。
昨年はピアノを弾くことに一生懸命であまりゆとりを感じられなかったが、今日は楽しんで、ピアノを弾いているように感じた。からだ中でピアノを弾き、こちらも楽しむことができた。この半年間の練習ぶりがうかがえる。さらに人生経験を積んで円熟味を加え世界にはばたいていくことを祈る。【春日井市:M. A.】 ○原田さんの演奏、感動しました!!バルトークの難曲も弾きこなし、リスト、ショパンは大変美しく繊細でした。きれいなppと深みの有る力強いffは彼女の大きな魅力です。ぜひ、定期的な演奏会をお願いします。次回のコンサートを心から楽しみにしています。【A. Y. 】 ○原田さん:バルトーク曲の演奏、とても良かったです。さすがと思いました。シューマン曲もきれいでした。スケルツォは、聴いた位置が遠く、ちょっと弱音が聴こえませんでした。【緑区:K. I. 】 ○音楽会は人生の花、果実の一つであり、心がおどり、愛が生まれます。素晴らしい一瞬が押しよせる時でもあります。【緑区:A. K. 】 ○みなさんすばらしい演奏でした。ルンデあしながクラブがなくなるのは非常に残念ですが、みなさま、これからも良い演奏を続けて下さい。応援しています。【緑区:Y. S. 】 ○最終回の発表ということで、各出演者とも心の入った演奏、歌唱が感じられ、感動しました。【一宮市:K. S. 】 ○原田綾子さんピアノ、バルトークは結構面白かった(苦手な私でも楽しめた!)し、シューマンの献呈はロマンスに溢れてついうっとり聴き惚れてしまい、ショパンのスケルツォ(この曲好きなんです)は華々しく締めくくった好演。 ソプラノの星川美保子さんとピアノの原田綾子さんによる三つの日本の歌曲、こちらもなかなか良かったですが、日本語の発音と西洋音楽というのはあまりしっくりいかないものでしょうか?これはこの演奏に限ったことではないのですが……音楽は実に美しいので、ちょっと惜しい。【熱田区:D. H. 】 ○三人三様のすばらしい演奏をたのしませていただきありがとうございました。 ピアノは繊細な音から力強い音までよく響いていました。丁寧なおじぎも心に残りました。 声楽は初めて聴く曲ばかりでしたが、オルガン、ピアノ共に美しいソプラノがすばらしかったです。「夕べの星」「瞳」が個人的には好きです。【M】 ○原田綾子さんのピアノ、なめらかな音。気分良く聞かせていただきました。 この度の三人の演奏会とても良かったです。良い企画でありがとうございました。【春日井市:K. T. 】 |