ルンデの会例会

金澤 攝  「ポスト・レーガーの大家たち」
〜近代ドイツ空白の世代 第一期〜
Osamu N. Kanazawa  Piano Recital

攝

 20世紀初頭、ドイツ音楽史を代表する存在として、リヒャルト・シュトラウス(1864−1949)とマックス・レーガー(1873−1916)がいた。オペラや交響詩を代表作に持つシュトラウスに対し、レーガーは室内楽曲、オルガン曲を中心に「絶対音楽」への威信を示したのだった。
 レーガーの誕生の翌年シェーンベルクが生まれ、センセーショナルな改革の世代を形成する。ラヴェル、ファリャ、レスピーギ、ブロッホ、バルトーク、エネスコ、マリピエロ、ストラヴィンスキー、シマノフスキ、コダーイ、ヴェーベルン、ベルク、ヴィラ=ロボス、マルタン、プロコフィエフ、オネゲル、イベール、ミヨー等々が続く。しかし、この中にドイツ人は含まれていない。ヒンデミットの生誕(1895年)を待つまで20年余りの“空白の世代”があるのである。
 この世代のドイツに優秀な作曲家がいなかった訳ではない。では彼らは何をやっていたのだろうか。何故知られなかったのだろうか。これを探り、その対価を検証するためのシリーズ・コンサートである。
 第一期として、1870年代生まれのドイツの作曲家3人(ワルター・ニーマンヨゼフ・ハースユリウス・ヴァイスマン)を選び、各一夜を宛てて、その代表作を年代を追って公開したい。
2004.3.14  OSAMU N. KANAZAWA 



◎1870年代生まれ、三人のドイツの作曲家◎
【その1】
ワルター・ニーマン【没後50年】 (Walter Niemann 1876-1953)

※プログラム一部変更
古き中国 Op.62
日本 Op.89
陽気なソナタ Op.96
ハンブルグ Op.107
コッヒェラー・レントラー Op.135
2004年6月26日(土)19時
スタジオ・ルンデ(名古屋市中区丸の内 2-16.-7)
【参加会費】一般 \5,000、ペア \9,000、学生 \2,000 一部座席予約可(160席中約50席)
※シリーズ全3回連続予約の場合:一般 \13,000、ぺア 25,000 に割引
【予約、お問合わせ】スタジオ・ルンデ  TEL:052−203−4188
 ワルター・ニーマンは Op. 番号にして189に及ぶ作品を残したが、その殆どはピアノ曲である。
 彼はまず父に学び、次いでフンパーディンク、ライネッケらに師事した(彼の父、ルドルフ・ニーマンも有名なピアニスト・コンポーザーであり、モシュレスの門弟であった)。シューマンやブラームスの流れを受け継いだ、ドイツロマン派の後継者として出発したワルター・ニーマンであったが、20世紀に入り、フランス印象派の台頭に啓発されたかのように、さまざまな国や地域の印象(または幻想)を綴った小品集が多く書かれるようになる。これらは後のカステルヌォーヴォ=テデスコやタンスマンの先例として、絵画的で軽妙な筆致を見せている。特に、はるかな東洋を、空想で描いた「日本」と、故郷「ハンブルク」のシニカルなリアリズムは好対照となっている。「ピアノのマイスター」、「ヨハネス・ブラームス」などの著書も多い。
 ニーマンの作品が戦後全く無視されたのは、彼が親ナチ派であったためとする説もある。

◎1870年代生まれ、三人のドイツの作曲家◎
【その2】
ヨゼフ・ハース【生誕125年】 (Joseph Haas 1879-1960)

※プログラム一部変更
ばらけた小品集 Op.16
こびと〜六つの舞踊物語 Op.27
オイレンシュピーゲライン Op.39
“Alte, unnennbare Tage” 悲歌集 Op.42
ソナタ イ短調 Op.46
2004年7月26日(月)19時
スタジオ・ルンデ(名古屋市中区丸の内 2-16.-7)
【参加会費】一般 \5,000、ペア \9,000、学生 \2,000 一部座席予約可(160席中約50席)
【予約、お問合わせ】スタジオ・ルンデ  TEL:052−203−4188
 レーガーの一番弟子、といった存在のハースは、この世代最大の作曲家の一人であり、3曲のオペラと共に「フォーク・オラトリオ」と称する独自の分野を開拓、長大な作品を数多く残している。師と同様、ピアノ作品の占めるウエイトはやや少な目だが、練達した書法、堅実でスケール感のある構築力はレーガー以上に安定している。
 中でもベートーヴェンのハンマークラヴィーア・ソナタの丁度百年後に書かれたピアノ・ソナタ Op.46 は、同様の規模を持つ傑出した名作で、“20世紀のハンマークラヴィーア”と称するにふさわしい。これに先立って書かれた「オイゲンシュピーゲライエン」もピアノ変奏曲史上の白眉であり、どちらも名手マックス・フォン・パウエルに献呈された。ハースはドナウエッシンゲン音楽祭の創設にも力を尽くし、また教育者として彼の門弟にはカール・アマデウス・ハルトマンや指揮者のオイゲン・ヨックム、ウォルフガンク・サヴァリッシュらが含まれている。

◎1870年代生まれ、三人のドイツの作曲家◎
【その3】
ユリウス・ヴァイスマン【生誕125年】 (Julius Weismann 1879-1950)

※プログラム一部変更
即興曲集 Op.17
パッサカリアとフーガ Op.25
全調散策(自作主題による変奏曲) Op.27
ダンス・ファンタジー Op.35
わが庭園より Op.48
2004年8月25日(水)19時
スタジオ・ルンデ(名古屋市中区丸の内 2-16.-7)
【参加会費】一般 \5,000、ペア \9,000、学生 \2,000 一部座席予約可(160席中約50席)
【予約、お問合わせ】スタジオ・ルンデ  TEL:052−203−4188
 ラインベルガー門下のユリウス・ヴァイスマンもハースに並ぶ巨匠であり、J. S. バッハの命脈を最も強く受け継いだ作曲家というべきであろう。157を数える Op.番号は、6曲のオペラを別として、オーケストラ、声楽、室内楽、ピアノにほぼ四分される。優れたピアニストであったヴァイスマンの力量を反映して、厚みのある、しかし透徹したピアニズムを持つ作品が多い。ブラームスの衣鉢を受け継いだ第1期、いくらかフランス的で半音階的な第2期、簡素で古典的な第3期に分けられよう。「全調をめぐる散歩 Op.27」は創作主題による変奏曲で、24の調性を網羅する第1期の力作。「わが庭にて Op.48」は第2期に属する8曲の小品集。なお、晩年の「フーガの木 Op.150」は、バッハの平均律と同じ調性配列に基づく24の前奏曲とフーガで2時間を要するモニュメンタルな大作である。


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